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『数学ギョーザ』(ショートショートnote杯)

「こちらが今、話題の餃子店『数学ギョーザ』です!」
 リポーターがキンキンと声を張り上げる横には、白いタオルを頭に巻いた仏頂面の男が腕を組んで立っていた。
「今日は若店主に来ていただいております! ではまず『数学ギョーザ』というのはどんなものなのか教えてください」
「そのですね、オヤジの知り合いに高名な数学者のじいさんが居まして……すべて任せるから数学的に正しい餃子を作ってほしいと依頼したらしいんです。数学的と言うのは、材料の形とか炒める時間とか硬さとか――、これまで職人が感覚でやってきた部分に対しすべて数学的根拠のある理想形を突き詰めたと言っていました」
「そして出来上がったのが――柔らかくてにゅるにゅるした、一見ゼリーのようなこの『数学ギョーザ』である、と」
 若店主は吐き捨てるように言った。
「だってよ――じいさん年だからもう歯が1本もないんだぜ。いくら知識や権威があってもそりゃあそうなるだろよ」


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他のショートショートnote杯用の作品はマガジンにあります!
関係ないショートショートも沢山ありますので、お気に召しましたらのぞいてやってください。


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「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)