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『特殊清掃員』らしきものをやったときの話。

先日、特殊清掃員の漫画を読んだので思い出した。
私も昔、特殊清掃のようなものをやったことがあるな……と。

『特殊清掃』という言葉は耳慣れないと思う。

簡単に言うと、死んじゃった人とか、失踪した人とかの部屋を、きれいにする仕事だ。遺体自体を片付けることはなくとも、部屋に残されたゴミから始まって、腐敗した体液や血液、下手したら肉片に至るまで。残されたものを片付ける。

そんな普通にしていたら、かかわることのなさそうな仕事だ。

私が、そんな「普通にしていたらかかわらなさそうな仕事」に、関わってしまったのに劇的な理由や流れがあったわけではない。登録制の日雇いバイトをしていて、行った先が、『そういう現場』だったというだけの話なのだ。

幸か不幸か『そういう現場』とはいえ、がっつり人の形の体液が付着している、というものはなかった。

察するに、日雇いのバイトを回すような現場は、さすがに配慮がされていたのだろう。仕事内容も単なる「清掃」と教えられていた。清掃するのが、借り主が『失踪』した後に残された汚部屋だった、というだけの話である。

当時は、若かったし特殊清掃という言葉も知らなかったので、そんなものか、と思っていた。けれど今から考えれば、あれは十分特殊清掃の範疇だと思われる。

例えば、手洗いに抜けた髪の毛が層になっているとか。

残されたものから察するに住人は男性だったはず。
しかし、そこには1メートル以上はあろうかという長い髪の毛が、びっしりと、何重にも積み重なっており、異様な現場に来てしまったことを物語っていた。

部屋中には弁当の空き箱とか、ペットボトルが散乱していた。かろうじて寝るためにあけたであろうスペースと、テレビを見るための空間だけを残して、あとは隙間なく積み重なるゴミ、ゴミ、ゴミ。

天井までうず高くゴミが積み重なっているような状態であれば、逆に気持ちを切り替えることができたかもしれない。実際には、部分的には背丈に迫る勢いの場所もありながら、そこに生活していたことを感じることができる程度に片付いている。いや、片付いているは言い過ぎにしても、部屋の端に寄せられている。

そこにはまだ「人」が生活していた残像があるようで、バランスの崩れた脳内に、間違って一歩踏み込んでしまったような恐怖感がそこにはあった。

失踪からどのくらい期間があったのかわからないけれど、時期が良かったのだろう。虫の類はほとんど発生しておらず、それは救いだった。

若かったし、ものを知らなかった。そのせいか、普通に受け入れてしまえたけれど、知っていたらやりたくなかった仕事だったな、と今さら思い出した。


特殊清掃員が出てくる漫画はこちら。
沖田×華さんの、「不浄を拭うひと」。
ちゃんとエグい、リアルな特殊清掃が読みたい人はどうぞ。

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「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)