見出し画像

『ストレイテナー』全アルバムレビュー

ずっと変わらないものは素敵です。
永遠の愛とか。熱い情熱とか。変わらないことに価値があるものはいくらでもあります。

でも「変わり続けること」もまた素敵なのです。
そんな変わり続けてきたことが、このバンドの最大の魅力だと思っています。そのバンドの名前は『ストレイテナー』。私が大好きな、20年以上にわたり、一度も歩みを止めることなく、ずっと変わり続けてきた奇跡のバンドです。

今日はストレイテナーの全アルバムレビューをしていきたいと思います。別に理由もきかっけもないけど、なんか書きたくなってしまったので書きます。ベストには触れませんが、ミニアルバムとセルフカバーは含めます。レビューというよりも、単なるアルバムとか曲の印象だったりします。

メジャーデビュー以前の曲は『Early Years』でしか聞いたことがない割愛いたします。ご容赦ください。

では行きましょう。


①LOST WORLD'S ANTHOLOGY(2004年1月21日)

記念すべきメジャーファーストアルバム。

このときのメンバーはホリエアツシとナカヤマシンペイの2人だけです。ただし、正式メンバーではないものの音源にはすでにベースでひなっちが参加している、という微妙な塩梅。

ひなっちはサポートという立場で、でしゃばるわけにもいかなかったせいか、基本的にはホリエアツシの作ったフレーズに低音を加えているにとどまっています。でもそれはそれでいいんですよね。
ベースはなっているけれど、あくまでも「2人から出た音」を楽しむことができるアルバムです。

曲としても真っ正直でシンプルな曲が多く、二人という構造上、できることには限りがあって、その枠組みを最大限追求した結果、このシンプルさにつながっています。
とはいえ、今でもキラーチューンのひとつである「MAGIC WORDS」なんかの曲も入っており、このころからすでにひとつの極致に到達していたと言っても過言ではないでしょう。


②ROCK END ROLL

ひなっちが正式加入してからリリースされたミニアルバム。不朽の名曲「REMINDER」がここで生まれます。

前作と違って、「3人」の力を、これでもかと感じさせてくれるアルバムです。

シンプルなフレーズで低音を支えているのは前作と変わらないものの、その音が全く違います。ホリエアツシとナカヤマシンペイが作り上げていた土台に殴り込みをかけるかのようなあのベースの音。鋭利な切れ味を持ったハンマーのような音がそこにはあるのです。

ギター、ベース、ドラムという本来バンドの最小成立単位を満たすことによってより立体的に。そしてひなっちという大いなる刺客を迎えいれたことによって、メンバー全員に緊張感が生まれ、ひりつくような一枚岩の骨太サウンドにつながっています。「これから撃って出るぞ! 周りは敵ばかりだ!」という心意気もそこに現れているのかもしれません。

名実ともに3人のストレイテナーの音が生まれたと言っていいでしょう。


③TITLE(2005年1月26日)

当時も今も変わらないキラーチューン「KILLER TUNE」が収録されたメジャーセカンドアルバム。
この後、定期的に4つ打ちの曲を出し、ストレイテナーというバンドの強みになっていきます。それもこの「KILLER TUNE」という曲が切り開いた道です。

「PLAY THE STAR GUITAR」のリフなどからわかるように、「3人が一枚岩となってぶち当たってくる」というこれまでのイメージから、「3者3様」という形に変容している様を感じることができます。

バラバラなのではなく、3人がそれぞれ強みを持ちより、アイディアを戦わせ、ひと回り大きくなったバンドの包容力がそれをまとめていきます。


④Dear Deadman(2006年3月8日)

シングルとして出ていた「Melodic Storm-DEAR EDIT-」や「Discography」が収録されたアルバム。

「Discography」は「KILLER TUNE」から続く4つ打ち曲ですし、「Melodic Storm」はこれまでなかったオーディエンスとシンガロングできる曲。順調にストレイテナーというバンドが力をつけ、お客さんをも巻き込んでいこうとしている意欲を感じます。

4つ打ちの曲はライブでこそ真価を発揮しますし、『TITLE』リリース後に大型フェスなどへの参加もあり、順調に動員が増えてきたことでオーディエンスとの距離感が変わってきたのではないでしょうか。

その時のバンドの状況を繊細に読みとり、自分を貫きながらも、的確に求められているものを提供する。これがストレイテナーというバンドの強さです。


⑤LINEAR(2007年3月7日)

ミュージックステーションでも披露されたロックナンバー「TRAIN」や、「すべてのバーサーカーに捧ぐ!」でおなじみ「BERSERKER TUNE」などが収録され、3人で培ってきたものを余すところなく出しつくした力強いアルバムです。

にぎやかな曲だけではなく「SIX DAY WONDER」というバラード名曲もそろえて、向かうところ敵なし状態。
セールスもオリコントップ10に初ランクイン。ライブも全都道府県を制覇。幕張メッセでワンマンを行うなどライブん動員も順調に増えています。アブラがのってきたという表現がぴったりの時期ではないでしょうか。

どのアルバムにも良さがあるので選べないのですが、3人時代を象徴するアルバムと言われたらこのアルバムになるのではないでしょうか。

グチですけど、ミュージックステーションで披露した「TRAIN」の音はスカスカで、ちょっとガッカリしたことを今でも覚えています。


⑥Immortal(2007年11月21日)

ミニアルバムとしては「ROCK END ROLL」に続いて2枚目。3人でできる可能性と、その限界を探っていた時期です。

私の記憶が正しければ、ホリエアツシが表立ってメインだったギブソンSGというギター以外を、ひなっちもメインとしていたフェンダージャパンのプレベ以外の楽器を使い始めたのがこの時期になります。
単に楽曲に対するアプロ―チだけでなく、音という観点からも、これまでになかった可能性を模索している様子が伝わってきます。ヴォーカルのない曲も含まれているのも、これまでにないアプローチのひとつでしょう。

楽曲としては難しくもないものの、その音楽的アプローチはかなり独創的。もはやいい意味で「シンプルで一枚岩のロック」の面影はありません。3人が3人ともに持つ技術を余すところなく発揮し、その切れ味を競っている鋭利な3枚刃のカミソリのようなアルバムです。

形にこだわらず3人で出来るすべてを出し切ろう。
そんな心意気が感じられます。


⑦Nexus(2009年2月11日)

3人での活動に限界を感じていたかどうかはわかりませんが、結果から言うと2008年に新たなメンバーであるギター大山純が加わり、ストレイテナーは4人態勢になりました。

そして4人で出した最初のアルバムがこの『Nexus』です。

大山純がギターを弾いて、ホリエアツシがピアノを弾く(もしくはその逆)ということができるようになり、無理のない盤石の体制ができたといっていいでしょう。

これまでに培ってきたものを、4人の形でアウトプットしていく。3人には3人の音がありましたが、4人には4人でしか出せない音がある。そうやって形を変えていけることがストレイテナーの強みです。

余談ですが、ひなっちも大山純ももともとアートスクールというバンドにいましただから、さあ次はだれがアートスクールから加入するんだ? という話題をこの時期に良くしました。


⑧CREATURES(2010年3月3日)

4人になったことにより、ホリエアツシが難しいギターを弾かなくてもよくなります。その結果、歌により多くを注力できるようになり、これまでよりも、複雑で自由なメロディーが生み出されてゆきます。

またそのせいもあって、曲としてもよりオルタナティブ色が強くなります。

一枚岩だったころの印象は、アルバムの最後の曲「瞬きをしない猫」で聞くことはできますが、よりホリエアツシの出す人間味を強くあらわす方向に舵が切られたことは間違いないでしょう。


⑨STOUT(2011年1月12日)

新曲「VANISH」を含む、セルフカバーアルバムです。

3人時代の曲も、現在ライブではもちろん4人で演奏しているのだから、きちんと形にしておきたいと思うのは当然の流れでしょう。

「VANISH」のPVに出ているバンドは「the telephones」という仲のよいバンド同士の遊びごころも。

メジャー1枚目のアルバム『LOST WORLD'S ANTHOLOGY』からはじまり、『LINEAR』まで幅広くカバーしています。特に「PLAY THE STAR GUITAR」などの比較的古い楽曲は、4人になった差を感じることができ、バンドの成長を感じることができてオススメです。

今はベストが2枚もあるので、初めて聞くならもちろんベストの方がいいのですが、この流れで選ばれた曲たちをまとめて聞くのもまた乙です。


⑩STRAIGHTENER(2011年8月3日)

ここにきてアルバムタイトルがバンド名。メンバーたち自身が、この時の状態こそがストレイテナーだ、と胸を張って言える状態だったからこそ、このタイトルになったのでしょう。

メジャーデビューから自ら名乗るまでに8年の歳月がかかり、その間にメンバーが2人増えている。そんなバンドが他にあるでしょうか。

ホリエアツシの持ってくるメロディーに、各々が持つ最大限を提供し、ストレイテナーの曲に仕上げる。
これまでもそのプロセスは変わらなかったはずですが、この段階でひとつの到達点を見出すことができたのでしょう。

この辺りから楽曲的には、メロウな歌モノの曲が増える印象なのですが、一見派手なギミックがない楽曲だからこそ、そこに対するひなっちのベースのアプローチは逆に聞きごたえがあります。


⑪ SOFT(2012年6月13日)

満を持してのアコースティックアルバム。
これも4人という盤石な体制を築くことができた恩恵と言っていいでしょう。

派手な音色などなくても、各人がそれぞれ出している音を鳴らせば、作品になる。今のストレイテナーにはそれだけの力がある。そんな確信があったのでしょう。

そして思いついてしまったら形にしてみたくなる。そんな行動力の速さはストレイテナーの魅力です。

今更気がついたのですが、収録曲って結構古めの曲が多いですね。これも「STOUT」でやったセルフカバーの一環で、古い曲を新しい4人のアレンジで産みなおすという意図もあるのでしょうか。

単にアコースティックカバーというだけにとどまらず、「SIX DAY WONDER」なんかは、この後は、こちらに収録されたアレンジで演奏されることが多いですね。


⑫Resplendent(2013年9月11日)

この年、5月にベストアルバム『21st CENTURY ROCK BAND』が出て、そこからわずかに4カ月後の9月に出たのが、このミニアルバム『Resplendent』です。

この辺から、リリックビデオと呼ばれる、歌詞を表示したMVみたいなものが流行りますよね。「BLACK DYED」をはじめ、ストレイテナーでもいくつか出しているはずです。

「シンデレラソング」「BLACK DYED」「SCARLET STARLET」と、全5曲のミニアルバムの3曲がタイアップつき。ベストアルバムに収録された「From Noon Till Dawn」がテレビ東京系ドラマ「勇者ヨシヒコと悪霊の鍵」オープニングテーマになるなど、かなり強めにお茶の間に打って出た様子が見てとれます。

結果的にはお茶の間に浸透したとは言えないものの、それだけの信頼と実力を兼ねそろえたバンドであるという認識が広まったのはこの時期と見て良いでしょう。


⑬Behind The Scene(2014年10月22日)

メジャー8枚目のアルバム。

個人的な趣味の話になって申し訳ないですけれど、このアルバムのリードシングル「Super Magical Illusion」という曲が、「ダサい歌詞のはずなのに、カッコいいって、いや確かに昔からそういうところあったよねストレイテナーって……」という得も言われぬ高揚感のある曲で大好きです。

このアルバムに先駆けて、韓国、シンガポール、台湾の3か国を回るツアーをしており、バンドがまた次のステージに入っていることを感じさせます。

日本語の意味などどうであったところでカッコよければ関係ないだろう、という強気の開き直りがそこにある……とか言ったら考えすぎな気がします。なにせ昔から、ちょっとこれは危うくダサくない? ということは多々あったバンドですから。


⑭COLD DISC(2016年5月18日)

前作からわずかに9カ月と相変わらずのハイペースです。
ここ最近のライブでは定番となっている曲「シーグラス」がここで生まれます。

最初この曲を聞いたとき、正直地味な曲だな、と思ったのを覚えています。
アルバムにありがちな、曲は別に悪くないけれど、それほど盛り上がるわけでもなければ、シンガロングする箇所もない。
ツアーが終わったらやらなくなるだろう。そんな思いはもろくも崩れ、いまだにライブのど定番曲です。

何度も聞いていくうちに、今のストレイテナーというバンドを語るうえでのベンチマークがこの「シーグラス」という曲なんだろうな、と納得させられ、次第に好きになっていきました。今では大好きな曲です。


⑮Future Soundtrack(2018年5月23日)

前作から2年開いて出た記念すべきメジャー10枚目のアルバム。

収録されたシングル「灯り」はシンガーソングライター秦基博とのバンドとして初めてのコラボレーション作品です。

ストレイテナー側から声をかけ実現したもので、ホリエアツシがソングライターとしての自分の実力に自信が生まれてきたからこそ、バンド側から声をかけるという行動につながったのでしょう。

他の曲もメロのある曲が大勢をしめており、それが無理のない今のストレイテナーの形なのでしょう。しかしそれは単なるソングライターの曲ではなく、バンドとしてのアレンジが入ればどんな曲であってもそれはストレイテナーの曲になるのです。


⑯Blank Map(2019年10月9日)

ライブの出囃子として作られた曲「STNR Rock and Roll」からはじまるミニアルバム。

リードトラック「吉祥寺」では”ストレイテナーが解散した世界”が描かれており、出た当時、そんなことウソでも言わないで、とファンの方が嘆いていたのはまだ最近のことです。

出囃子があり、解散がある。ここで終るわけではないものの、バンドとして折り返しを感じたのではないかと感じさせるラインナップは、ここまでのバンドの変遷の長さを思い出させます。

くわえて、配信シングルとしてリリースされていた楽曲「スパイラル」では、「立ち止まらなかったのは心を決めたから」「きみがいると思えばそこにいたい」と未来に向かって歌い上げます。

ストレイテナーの過去、今、未来を内包した非常にエモーショナルな一枚と言っていいでしょう。


⑰Applause(2020年12月2日)

コロナ禍の12月に出た11枚目のフルアルバム。

「Applause」とは”拍手”の意味で、「コロナ禍の関係で観客が歓声を上げられなかった代わりに拍手で以って賞賛を表したことへの感動が大きく印象に残っており、そのままタイトルへ採用した」とのことです。

アルバムの初回限定版には2020年9月5日に行われたオンラインライブ「TITLE COMEBACK SHOW」の映像及び音源が収録されており、アルバム『TITLE』を今の4人で、通して演奏するというライブでした。
ライブもまともにできず、すごもりばかりの毎日。配信ライブをやるうえでなにか普段できないことを……という考えがあったのでしょう。

未だにライブでは見れていないので、早くどこかで今のストレイテナーを見てみたいです。


⑱まとめ

こうして振り返ってみると、その時々の「心意気」や「思い」などをきちんと内包して、そのときできる最高のものをオーディエンスに伝えようと『まっすぐ』に進んできたことが、如実に表れていて書いていてとても楽しかったです。

もちろん私の想像で補っている部分ばかりなのですが、あくまでも私がそう思っている、ということでご容赦ください。

ストレイテナーというバンドの足が言うことを聞いてくれるうちは、ずっと進み続けてくれることを、先を急いでくれることを祈って。



#音楽 #エッセイ #コラム #バンド #ストレイテナー #ライブ #邦楽ロック #ひなっち #ホリエアツシ






「欲しいものリスト」に眠っている本を買いたいです!(*´ω`*)