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短編小説等まとめ

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自作短編小説及びその他創作文章のまとめです。
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2020年11月の記事一覧

終身なる安寧な生活【旅する日本語】

部屋はコンクリートの打ちっぱなしで窓はない。狭くはないが殺風景だ。ベットにテレビ、それに…

たけのこ
3年前
43

脳の洗濯しませんか?【ショートショート】【#112】

「この商品には重大な副作用があるんですよ」  鬼の首をとったように報告をしてきたのは、開…

たけのこ
3年前
35

空っぽの部屋【旅する日本語】

1日ひとつ、物を捨てていくんだ。 あなたはそう言っていましたね。世間では断捨離が流行って…

たけのこ
3年前
54

袖摺れ(そですれ)の距離感【旅する日本語】

 眠い目をこすりながらコーヒーを作り、朝食のパンを片手にニュースを眺める。そんないつも通…

たけのこ
3年前
37

海辺にて我ら弥立つ【旅する日本語】

――ああ、まるで昨日のことのように思い出せる。  島津の軍勢は1万。かたや我らは3千がせ…

たけのこ
3年前
47

盛りあがる議論【旅する日本語】

「まあちょっとこれは変化球だけどねぇ」 「いやでも実際結構似てますよ」 「……だって逆にす…

たけのこ
3年前
53

仲むつましい二人【旅する日本語】

 か……神奈川の人ってのはさ、なんでみんな横浜出身っていうのかね。まぁ確かにね、こうして来てみればさ、シャレてるから騙っちゃうのかね。ま、でもどんだけ人間ちいさいの? とか思うよね。  ちなみにさ、『睦ぶ』って知ってる? 仲がいいとか仲良くするって意味の古語でね。いや、さ……その、まるで君と僕みたいだなって思って……。ほら、さっきの映画だってそうでしょ? 全体としては、ちょっとありきたりだとか、あの役者の演技はいまいちとか、ほら、君もそう思ったって言ってくれたよね? いや僕は

彩られた遠路の果て【#旅する日本語】

抜けるような青い空。横に長く広がる茶色の駅舎。 それらはどこか懐かしさを感じさせる。距離…

たけのこ
3年前
65

死人に口あり、しょうじに目あり【ショートショート】【#111】

「カズヒロさん、あなたの気持ちはわかってるのよ」  そう言った妻の顔は、可愛らしかった妻…

たけのこ
3年前
28

虫歯に悩まされない薬【ショートショート】【#110】

「あんたは言ったよな! 『虫歯にならない』って!」  私のオフィスに飛び込んできたその男…

たけのこ
3年前
34

ご円がなかったということで【ショートショート】【#109】

 大学の冬休みも終わったころ。私の春からの就職先はもう決まっていた。あまり大きくないけれ…

たけのこ
3年前
36

あなたは今日もキスをくれる【#言葉を宿したモノたち】

 両手で私を包み込んで、あなたは今日もおはようのキスをくれる。  いつも朝はギリギリに起…

たけのこ
3年前
51

伝説の一族【#言葉を宿したモノたち】【ショートショート】【リライト】

「結局はワシが有能すぎるということよ」  座敷の最奥に座る老人は言った。かなり年を取って…

たけのこ
3年前
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お父さんは何になりたいの?【ショートショート】【#108】

「お父さんは何になりたいの?」  俺の「酒がないからもってこい」という催促にこたえ、研究室に酒を持ってきたのは上の子だった。今年で8歳になる彼は、学校では学級委員長をやっており、勉強も運動も良くできる自慢の息子だ。俺はすでにだいぶ酔っぱらっており、質問の唐突さに気がつくこともなかった。 「お、なんだ? 学校でそういう課題でも出たのか?」 「……うん。そんな感じ」彼はそう答えて、部屋に置かれたソファーに腰かける。俺は受け取った酒に口をつけてから答えた。 「そうだな……。