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クリスマスは海へ行こう

年末が迫って街はクリスマスムード。今年の冬はなかなか寒くならないな、なんて思っていたけれどいつの間にかすっかり冬らしくなって思い出したように恋人へのクリスマスプレゼントや、年末年始の過ごし方などに思いを巡らせている。

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私は中高一貫の女子校、キリスト教の所謂ミッションスクールを卒業した。

クリスマスが近づくと、クリスマス礼拝の準備をしたり、教室を飾りつけたり、ハレルヤコーラスの練習をしたり。中学1年生から私にとってクリスマスとはこういうものだった。蝋燭に火を灯して讃美歌を歌って、イエスキリストの誕生をお祝いした。その光景は何度見ても美しくて、私はこんなクリスマスを毎年楽しんでいた。


そんなある年のクリスマス直前の週末、私は親友と横浜みなとみらいに出かけた。街にはカップルが溢れ、クリスマスソングが流れていた。私達はベンチに腰掛けてお喋りしつつ、街に流れるクリスマスソング(私達にとっては讃美歌)を礼拝の練習だと言って歌ったりしていた。今から考えてみると、あの時デートしていたカップル達にとっては邪魔でしかなかっただろうな。こんなところで謝るのもどうかと思うけれど、その節は本当にすみませんでした…。

そんなことをして過ごしているのも少し飽きてきた頃、どちらからともなく「海の方行こう!」という話になり。私達はクリスマスの海へと向かった。

クリスマスの海は、当たり前だけどとても寒くて、カップルもいなかった。雲に覆われた真っ白な空と、灰色にうねる広い広い海の前に私と親友がぽつんとふたりで、この寂しいクリスマスを過ごす若い女子2人の状況をケラケラと笑っていた。

「私、冬の海が好きだな」

どっちが先に言ったんだろう。私が言ったんだっけ?それとも私が「私も」って言ったんだっけ?とにかくどっちかがそう言って、もう1人が同意したのだ。

親友がどうしてそう思ったのかは知らない。でも私は「冬の海が好き」という言葉を使ったけれど本当は「今日一緒にここに来られてよかった」と思っていたんだ。照れ臭くて言えなかったけど、私はその瞬間がとても幸せだと思った。

「またクリスマスに来よう」

そう言ってから、私達はまだクリスマスの海に行っていない。別の年のクリスマスにプロポーズされ、結婚して隣の市に引っ越した親友は、もうこのことを覚えてないかもしれない。寒がりな親友なので、冬の海なんかより、家で新しい家族と温かいクリスマスを送る幸せを今は謳歌しているんだろうな。

私は今恋人と冬の海を歩く時も、あの日のことを思い出すよ。あの日私と海に行ってくれて、ありがとね。



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