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カーチャンのチャーハンをつくるよ


 これは怠惰に負けて、料理はレシピ通りに作ったらフンガガなどと言っているひとの遊びの記録。味の保証はなんもできかねます。

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 むかしむかし、あるところで。

 そぼろごはんをあまらせてしまったおうちがありました。おかあさんは、あまったそぼろごはんかおいしくないので、そうだ、チャーハンにしよう、とおもったのでした。

 こどもたちはできあがったそぼろチャーハンをだまってたべました。でも、ぼくはそれがいっぺんですきになりました。それから、そぼろごはんのひは、あしたはチャーハンにしてね、とおねがいするようになりました。ごはんがあまっていないと、つい、ふてくされてしまうほどに。

 つくりかたはとてもかんたんです。

 しょうゆベースのごはん、ひきにく、いりたまご(あまいことはよいことです)。つけあわせはなんでも。ごぼう、ヨシ。にんじん・ヨシ。きぬさや、ヨシ。スナップえんどう・ヨシ。それらをぜーんぶフライパンにあずけてヨシヨシしてあげましょう。そぼろチャーハンのできあがりです。

 ただ、できればバターか、マーガリンをいれましょう。

 するとあらふしぎ、こうばしくなります。おこげがあると、とくにいいです。たとえるなら、フレンチトーストのような、あまくてこうばしい、いいにおいがします。

 きょうだいがおとなになり、みんながそぼろチャーハンのことはわすれてしまっても、みんながおいしくないごはんのときだけもんくをいうようになっても、おかあさんはぼくにときどきいいます。ぼくはそぼろチャーハンがすきだったよね、と。

 そうだよ。おかあさんのごはんが、せかいでいちばんすきなんだよ。

 だから、ぼくはそれをおもいだすだけで、なんでもつくれるんだよ。

 そう、思わず料理ってなんだっけと記憶が飛んでセカイの真理を悟りかねないメシマズな一品が生まれちゃったりするバグを許容するならね!

われわれが深淵を覗くとき、深淵もまたわれわれを覗いているのだ……