【超短編】恋のお熱

「正直、君より可愛い女の子は世の中にたくさんいるよね。俺だってバカじゃないし、盲目でもないから分かってる。
でもね、それでも俺は君を選んだんだ……」

「……ふふふ。嬉しい、ありがとう」

「いいえ。ずっと一緒に居よう」

名残惜しさを堪えキスをすると、俺たちはそれぞれの家へと別れた。

俺の言葉に頬を赤らめる彼女は、可愛かったな。

彼女は最高だ。他の誰とも比較なんかできないほど。

俺たちは互いを強く想い合い、いつまでも熱いまま居られると確信している。





別れ際、彼にキスをされ私は家までの道を歩く。

私は想いを押さえきれずにいた。
彼が私に言った言葉を、頭のなかで反芻する。


ーー君より可愛い女の子はたくさんいる。

それでも俺は、君を選んだ。ーー




・・・・・・。




ハァ??????


鼓動が、ドクドクと強く打つ。顔面が熱い。

腹の底から苛立ちの玉を吐き出すように、私は夜道で独り叫んでしまった。


「バカでも盲目でもいいから、私が世界で一番可愛いって言えよクズ!!!!!」



バカの方が、クズよりずっとマシだ。

胸も唇も、冷たくなっていく。


私は急に頭が冴え、視界のピントが合っていくのを感じた。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?