No.56～60

No.56　カフカとカフス

　そのカラスの翼は、世の中のどんな黒にも勝る黒でした。しかし、その胸にはなぜかカフスがありました。漆黒の翼には不相応な、けばけばしいカフスを。カラスは言いました。「私はなりたいのだ。『烏』から『鳥』に」

No.57　カルルとシャルル

「ボクらは」カルルが言った。「どこも似ていない」シャルルは首を傾けながら「その通りだね」肯いた。「気付いたからには」「からには？」「共にはいられない」「妙な理屈だね」彼らは同時に頭をもたげた。

No.58　Not Human

　僕はあなたの理想です。あなたが好む姿になれます。あなたの欲しいことばがわかります。今してほしいこともわかります。あなたは僕に立ち去ってほしいんですね。僕が人間じゃないことは、そんなに問題なんですか？

No.59　know,know,know

　ええ、ええ。あなたのこと、よく知っているわ。知って知って、知りすぎたくらい。だからこそ、あなたに消えてほしいの。いなくなってほしいの。いなかったことにしてほしいの。お願い、お願い。私を突き放して。

No.60　Lust Dance

　ごめんなさい。「これで最後にしましょう」なんて嘘です。あなたを逃がさないための。あなたも、気付いていたんじゃないですか？だから、これは合意の上ですよね。もう離しません。ここで、僕と踊り続けましょう。