見出し画像

レアル・マドリードのキャンプに参加しました (2)

(1)からの続きです。

キャンプ地のグラウンドは、東京の自宅からは1時間以上かかってしまうので、3日間の日程のうち、初日だけは妻とハルキと私の三人で、車で自宅とグラウンドを往復し、2日目・3日目は横浜のホテルにハルキと私だけが宿泊して「小学時代の集大成」ともいえるトレーニングに集中することにしました。

▲クラブハウスは100年以上前に建てられただけあって、ちょっとした重要文化財のようでした。微妙にヒストリカルに恰好つけてますが、のちに、このマフラーにはクリーニングのタグがつけっぱなしであることが判明します。

運が良いことに、トレーニングキャンプは3日とも晴天だったのですが、日本列島に大寒波が来ていたため、すごく寒い。山手の丘の上にあるので、遮るものがなく強い風。日没後、グラウンドに繰り広げられていたのは、体感的には気温マイナスの、どこか遠くの国で行われているサッカーみたい。

▲またまた超ボヤボヤ写真・・・ひときわ小さいですが、プレーは大人っぽくなってきました。ここ最近、私はしょっちゅうハルキにドリブルで抜かれています。

こんな寒い中、寒がりの妻のマリネコさんがキャンプをずっと見ているはずもなく――私と一緒に、カフェ『えの木てい』へ移動(初日)。

そして美味しいケーキとサンドウィッチ。

今回のキャンプの目標の1つに「人の評価を気にしない」というものがありました。優秀者1名がスペインに連れて行ってもらえるということで、キャンプ自体がセレクションの意味合いを(ほんの少しだけれど)含んでしまっているのですが、優秀選手に相応しいプレーをする(持っているスキルを発揮する)ことは目指しても、人の評価は気にしない。そこを気にして力まない。

いや、正確に言えば、人から自分がどう見えるかは、むしろしっかり意識する

意識した上で、評価されること自体を目指すのではなく、小さなプロ選手として、見ている人に喜んでもらう表現をしようと話していました。

この『見ている人』の定義の範囲は広くて、たとえばサッカー自体にはそこまで興味がないママさんのマリネコさんも含みます。マリネコさんは、横浜に来られてウキウキです。当然、サッカーの方がおまけです。だから

「そこで見ていて。ずっと応援していて!」

とか

「ボクは遊びで来ているんじゃないんだよ!」

というスタンスではなく、

「そっちはそっちで楽しんでいていいよ! カフェに行ってきて! こっちも元気よくやっているから!」

という感じで、楽しいベイエリアへと家族を送り出せるような余裕を目指すということです。これはほぼ、いつも、日常的にやっていることですけど。つまりこの場合、笑顔が表現ということです。あるいは笑顔を作れる自信とセルフコントロールスキルを発揮することが表現ということです(もはや私より、ハルキの方がこのスキルはだんぜん高いです)。

疲れていてもサインする。一期一会ということを踏まえて笑顔でファンに手を振るプロ意識の高いスポーツ選手――それに近いのかはわかりませんが、「たかがサッカー」「スポーツは人生のほんの一部分」みたいな大前提をきちんと持ち、その上で「たかがサッカーだけど、誰よりも力を尽くしてみたりする」「人生とスポーツがイコールに結ばれているようにさえ見える」という方向性――

自分が自分の人生の主役なんだけれど、ある側面では、誰かの楽しい1日に助演として出ているみたいなものだし、まったく知らない、違う意図を持った人の舞台にも登場している出演者でもあるわけだから、自分の考えベースではなく、もっと柔らかく広く、多様で多面的なアプローチで参加しよう。あらゆる場面で、とにかく勇気を出そう。磨いてきたスキルもフルに発揮しよう。失敗を恐れない。多面的に考えたら、もはや失敗なんてないから。ということを事前にハルキと打ち合わせしていました。

こういう打ち合わせをして臨める時点で、4年前のキャンプとは大違いです。

超ガチモードで参加しているんだけれど、ピリピリした感じを別の参加者やスタッフに求めたりしない。前回みたいに、馬乗りになってケンカしたりしない。

スペインからこの日のために来日してくれたコーチの心意気やら、スタッフの人がしっかり準備してくれたトレーニングメニューの意図やらをしっかり踏まえ(しかもそれが自分の立場からみた、あくまで推測であるということも踏まえ)、その上で自分が表現できそうなことを選ぶ。

注意深く、時には瞬時にユーモラスに。相手の出方・しつらえ・行動を読んで自分の準備していたスキル、あるいはアドリブのアイデアを選び取る。意外性や思わぬ展開については、そう来たか! という感じで楽しむ。これはサッカーの最中に、連続的に行われている表現そのものです。

こうした方向性というかスタイルについて、小学生のハルキはすごく深く、しっかり理解していて――というよりハルキとすごした膨大な時間を通して、この考え方が形成されてきたわけです。

プロサッカー選手になることだけを目標・夢にするのは視野がせまい――ハルキが小学2年生の2014年、サッカー的にはよちよち歩きの時代から言っていました。「自分の表現手段の一つ」としてサッカーがある

サッカーのスキルアップにはものすごく長い時間と労力がかかることが予想されるけど、それを楽しんで、ゆっくり、確実に進む。成長力と吸収力を長所として、少しでもいいから、それまでの経験を糧にして成長し続ける。

そしてたぶん忘れてはならないのは――サッカー以外の何をしていても表現力は磨かれること。むしろサッカー以外のことをいっぱいした方がいいはず。

漢字もとことん(今度は漢検準1級の勉強をしています)。受験勉強という小さな、他人の用意した枠に閉じ込められることなく、日常の頭を使いまくった生活の延長で、自力&地頭で中学受験をしてみるというトライ。数学も語学も、好きな方向に、存分にやってみるとどうなるんだろう。


▲とりあえずキャンプ中の空き時間を使って、コーチから配られたスペイン語の単語を全部覚えました。二人で覚えると楽しい。プリントを用意してくれた人の期待を上回るパフォーマンスをしてみる。暗記スキルを駆使してみる。相手が用意したものに全力で反応するというスタイル。その上で展開を眺める。スペイン人コーチに使ってみる。仲間を励ます言葉として使ってみる。この単語をきっかけに、さらにスペイン語を深めてみる。マリネコさんを笑顔で送り出すのと同じく、相手が用意した語学習得も表現の一つ。


ハルキがこれまで夢中になって取り組んだ数々の対象――相撲もメジャーリーグも競馬も将棋も麻雀も・・・どれも深い世界だったけれど、自己流で情報を集め、素人でいけるレベルまで親子で一緒に進んでみた。

小学生の間に本もすでに何百冊。映画館にも美術館にもゲームセンターにもだいぶ行った。家事もいっぱいやった。朝ごはんもハルキは自分で作る。できないこともたくさんあるけど、できることもけっこうある。マリネコさんとカフェやら骨董市にもいっぱい行った。御朱印帳を持ち歩き、天守閣から新鮮な風景を見下ろした。ハルキはサッカーを引退したら、中田英寿さんみたいに旅人になるらしいです。

目的をひとつに絞らず、ただ自分たちの人生の舞台に現れたものに反応してきました。目の前に現れたもの、流れてきたものにできるだけ反応して、とことん楽しんで。

ここから先は

734字 / 2画像

¥ 100

読後📗あなたにプチミラクルが起きますように🙏 定額マガジンの読者も募集中です🚩