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脳の働きを説明するたった一つの原理

脳は外から入ってくる様々な感覚情報を処理して周囲の状況を知覚したり、状況に適した運動信号を発して行動を起こしたりします。知覚と行動は全く別の機能のように思えますが、どちらも一つの原理から説明できるとするのが「予測誤差最小化理論」です。

この理論では、脳の機能は「予測誤差を最小化する」という基本的な動作に帰着します。そして、脳で行われる推論・行動・感情などが全て、この基本的な動作によって説明されるという魅力的な理論です。

ここでは、推論・行動・感情が「予測誤差を最小化する」という動作からどのように生まれるかを見ていきましょう。

推論

脳は外からの感覚刺激を入力して、外界の状況を推論して知覚します。私たちがリンゴを見ている時は、「リンゴという情報」がいきなり脳に入るわけではなく、「赤い」という視覚情報などが入っています。

脳は入ってくる信号を予測していて、予測した信号と視覚信号を比較してその誤差を計算します。例えば「梨がある」と思っていれば、「黄緑色」が視覚から入力されるはずと予測します。実際に入ってきた「赤い」という信号とは誤差があるので、この誤差を最小化するには「梨がある」という信念を変更して「リンゴがある」と知覚する必要があります。つまり予想誤差を最小化した結果「リンゴがある」という推論ができました。

このように、信念に付随する予測と、入力されえる刺激をすり合わせて、予測誤差を最小化するという動作によって、推論が実行されると言えます。

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行動

脳は筋肉に信号を発して体を動かします。この時の信号はどのように決められるのでしょうか。つまり、行動はどのように決められるのでしょうか。

いま、リンゴの前にビンが並んでいてリンゴが隠れている状況を考えます。ビンの隙間から見える情報からなんとなくリンゴのように思いましたが、確信が持てません。

この時、脳では「リンゴがある」という信念のもとで「赤い」という視覚刺激が入ってくることを期待しますが、ビンが邪魔で綺麗な赤が入ってこず、予測誤差が生じます。

推論では信念を変化させましたが、入ってくる刺激を変更することでも予測誤差を減らすことができます。今の場合、ビンを手で退ければ直接リンゴを見ることができ、予測で期待された通りの綺麗な「赤い」という視覚刺激を得ることができます。

このように、入力される刺激を予測誤差を最小化するように変更する方法として、行動が実行されると言えます。

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感情

感情はその人の中で起こるという要素が強く、外界との関わりが強い「推論」「行動」とは違って捉え所がない様に思えます。ところが、その人の体で起こっていることを「推論」した結果が「感情」だと思えば、今までの話がそのまま使えます。

脳には外界からの情報だけではなく、体の内部からの情報も入力されており臓器の状況をモニタリングしています。この時、体内からどの様な信号が入ってくるかを脳は予測しています。

例えば、怒りの感情を持っている場合、「心拍が早い」という予測をします。この時、予測誤差を減らすために、心拍を早くするという「行動」が起こります。この様に、感情が体の動きをコントロールします。

逆に、怒っている時に、深呼吸をしたとしましょう。この時、怒っている時に「呼吸が乱れる」という予測と、深呼吸しているという事実によって予測誤差が生じます。予測誤差を減らすためには、脳による感情の「推定」を変更して、落ち着いている状態にする必要があります。この様に、体の動きが感情を誘発することも予測誤差最小化で説明できてしまいます。

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まとめ

脳が行う様々な機能を、予測誤差の最小化という共通した機能により説明する「予想誤差最小化理論」について紹介しました。興味を持たれた方は「予想する心」をご一読することをオススメします。また、さらに発展した話としては「脳の大統一理論」もオススメです。


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