映画 星の子 感想 ネタバレ注意

宗教について考えたいと思いマル激トークで紹介されていた星の子を見た。


宗教2世問題と聞くと
「親がカルトに入信して、子どもがその価値観から抜け出せずにいる」
「学校行事などにも参加できず、子どもが疎外感を抱いて生きている」
といったことを私はまずイメージする。

そんな私の勝手な宗教2世観を持ったまま、映画を見た。


父と母は、私がきっかけでカルトに・・・

芦田愛菜演じる、ちひろは、未熟児として生まれ、
生まれつき肌に疾患を抱え、家族が右往左往しながら
子どもの体を心配するシーンが描かれる。

親が頼ったのが、不思議な水。

その水で体を拭くと、肌の疾患が治まっていく。

そのことがきっかけとなって、カルトを信じるようになっていく。

ちひろの視点で、過去と現在を行ったり来たりする構成になっていて、
ちひろ自身も、親がカルトにのめり込んだのは、自分の病気がきっかけであることを知っている。

ちひろの叔父(母の兄)が、カルトの幻想から目を覚ますように、
訴えるものの、家族が結束して叔父を追い出してしまう。

悲劇的な現実から救ってくれたカルトという存在を疑うことで、
親自身の存在をも否定することにつながってしまうのではないか。
カルトによって強くなった家族の結束力が、弱まってしまうのではないか。
幻想から目を覚ますことが怖く、排他的になってしまうのではないか。
そんなことを感じさせるシーンだった。

でも、これはカルトに限ったことではない。
自分が「これはいい」と思って進めたプロジェクトや教育方法など、
一度成功をおさめたものをを否定するのは怖いものだ。


恋する人に家族を否定されたとき、どんな気持ちになるか

ちひろは、仲が良い友達からもたびたび
「お前の家はわけわかんない宗教信じて貧乏になっているもんな」と
冗談のようで冗談ではないような言葉を聞かされている。

でも、そのシーンでは、ちひろ自身は重く受け止めるそぶりはなかった。

しかし、ちひろが恋する教員に車で送迎してもらった際に、
教員から宗教的な儀礼を自宅近くで行っていた両親を不審者扱いされる。

この時、ちひろは奥歯をかみしめるような表情をしたまま黙っている。

このシーンからちひろも根っからカルトを信じているのではなく、
おかしいと思いながらもカルトを信じてきた現実と向き合うことになる。

この翌日に廊下ですれ違った教員に、
「きのうの不審者は私の親です」
(教員の反応を見る)
(少し驚いた表情をされる)
「嘘です」
と廊下を走り去ってしまう。

なぜ、ちひろはわざわざ教員にこの事実を言ったのだろうか。

私は、救いを求めたのだと解釈した。

何を信じていいかわからず、家族以外の教員の反応を試しにみた。
この時の反応で、自分の行く先を決めようと思ったのではないか。

教員は何も言うことができず、ある意味で素の反応だった。

何を信じていいのかわからず、その場から走り去り、涙を流すしかできない。

人生で悩んだ時に、信じてきたものが間違っているのか正しいのか区別がつかない時に、自分の信頼している人、あるいは権威がある人の意見が欲しい時はある。

自分の背中を押してもらいたい感覚が芽生えるのもおかしくはないだろう。

でも、それが家族であることがやっかいな問題だ。

自分を大切にしてくれている家族。
さらには、自分の病気が治ったことがきっかけで入信してしまった。
その家族の価値観から抜け出すことは容易ではない。
だからこそ、苦しみが余計に膨らんでしまうのだろう。

バス旅行のシーンに惹かれてしまった

宗教の拠点での集会が執り行われるシーンが描かれている。

バスに乗り、知り合いの家族や子どもが、和気藹々と旅行を楽しんでいる。

カルトだと言われなければうらやましくも思ってしまうシーンだ。

家族以外に安心して心を許せる共同体が私自身ない。
共通の体験を共有することで得られる安心感がそこにはあるのだろうか。
非常にうらやましく思ってしまった。


ラストシーンをどう解釈するか。


ラストシーンまでの道のりは、映像的には淡々と描かれているが、
どこか緊張感も漂っている。

ちひろはこの先どうなってしまうのだろう。
脱会するのか、それとも同じ道を歩み続けるのか。

でも、最終的には家族で星空を見ながら終わっていく。

このシーンが伝えたかったことは何なのか。

私の中でもまだ整理がついていない。

やたらと、父親が「時間を気にするな」と言ってみたり、
母親が「まあちゃん(姉)が子ども生まれた」と言ってみたり・・・

家族一緒に過ごしたい時の気持ちを自分でも顧みることにした。

なんで家族と一緒の時間を過ごしたいのか。

「辛いことあっても一緒に乗り越えて行こうぜ」ということか?

宗教問題というよりも家族という共同体が
時間を共に過ごす意味を問われている気がした。



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