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14.分からないことだらけの1日〜夜


僕とRちゃんがKさんに連れられて向かったのは、僕が住む地方の一番大きな、ネオンがあちこちで光を放つ繁華街でした。そのキラキラした繁華街の中でも一番大きな通りからほど近いテナントビル。

Kさん「ここは分かりやすいから次から1人でも来れるでしょ?」

そう言って先頭を歩くKさんについていくと、キラキラしたエントランスの先にあるエレベーターに乗り、最上階へ行きました。

『いらっしゃいませー!あ、Kさんこの度はありがとうございます!』

何のことか分かりませんが、Kさんは「大したことはしてないよ」なんて言いながら、店の人に軽く挨拶をしました。お店の入り口には花がたくさん並んでて、まだオープンして間もないようでした。どうやら僕たちが来たのは絵に書いたようなオシャレなバーで、マスターはHさんという方でした。

Kさん「Hくん、この2人は今日夜の街デビューだから、ちょっと君の話を聞かせてあげてもらえないかな?」

Hさん「僕の話なんか何の役に立ちませんよ!(笑)まぁ、知らない人から見たらちょっと変わってますけどね」

Hさんは笑顔爽やかな男から見ても分かるイケメンで、声がとても聞きとりやすい人でした。よく分からないけど、僕は『ホストと呼ばれる人ってこんな感じなのかなぁ…』と思いました。僕たちはHさんに言われるがまま、カウンターではなくてソファーに案内されました。

話を聞くと、Hさんはずっと夜の街で色んな仕事をしていて、つい最近まではニューハーフのお店で働いていたらしいのです。しかも、そこで『男としてステージで踊っていた』と言っていました。僕もRちゃんも何のことか全く想像ができなくて、2人で顔を見合わせて不思議そうな顔をしました。しばらく前の働いていたお店のことや、最近今のお店を出したばっかりだということをなんとなく聞いていました。僕たちは知らない世界のことをたくさん聞いて、あまり知らないお酒をすすめられるままたくさん飲みました。

Kさん「ニューハーフの店なんて見たことないと分からないだろうね!今日は時間も遅いしもう店が開いてないから、また時間があるときに連絡くれたら連れて行ってあげるよ」

Kさんから僕とRちゃんは連絡先が書かれた名刺をもらうと、なくさないように2人揃って財布に入れました。

Kさん「次ここに来るときは俺の名前でツケてもらったらいいからね。Hくんも名刺渡しておいてよ。」

Hさんは「分かりました」と言うと、お店の名刺に携帯電話の番号を書いて渡してくれました。僕たちはまた、なくさないように財布に名刺をしまいました。

Kさん「じゃあ今日は帰ろうか。まだ電車も動いてないし、それまでうちに来るといいよ」

こうして僕たちはHさんにお礼を言うと、またタクシーに乗ってKさんのお家にお邪魔することになりました。


ほんの5分ほどで着いたKさんの家は独身で一人暮らしなのに、繁華街からほど近いなんだか高そうな2LDKのマンションでした。そしてなぜか、家中に裸の女性の写真が飾られていました。

Kさん「Rちゃんは女の子だから、とりあえず先にお風呂にでも入っておいで。俺たちはもうちょっとだけビールでも飲んでようか」

僕は初めて会った人の家でどう過ごせばいいのか分からず、とりあえずグラスに注がれたビールをもらって飲んでいました。Kさんに飾られた写真のことを聞くと、「これは俺の趣味なんだけど、欲しかったら一枚あげるよ(笑)」と言われて、なんだか恥ずかしくて断りました。

Rちゃんがお風呂から戻ると、Kさんに勧められて次は僕がお風呂に向かいました。シャワーの下に置いてあったよく分からないラベルのボディソープやシャンプーはとてもいい匂いがして、僕はまだキラキラした大人の世界にいる気がしました。そして僕がお風呂から上がると、Kさんは僕にこう言いました。

Kさん「Rちゃんはベットで寝てるからそっちに行ってもいいし、1人がよかったらリビングのソファーで寝てもいいし、俺もシャワーだけ浴びて来るから好きなところで先に寝たらいいよ」

僕は何を言われているかさっぱり分からないまま、初めて会った人の家の誰もいないソファーで、ちょっとタバコの匂いがする毛布にくるまりました。この日は分からないことがたくさんあって頭がいっぱいだったのと、かなりのお酒を飲んだこともあって疲れていたのか、僕は知らないうちに眠りについてしまいました…。


僕はお気持ちだけでも十分嬉しいのです。読んでくださってありがとうございます🥰