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StartupWeekendファシリテーター所信表明

この度、StartupWeekend(SW)のファシリテーターとして活動を行っていくこととなりましたので、それにあたっての所信表明をQ&A形式で行いたいと思います。


Q.そもそもSWて何?

A.週末3日間での起業体験+地域における起業家コミュニティ醸成の活動

SWは、週末3日間すなわち金曜夜から日曜夜までの54時間で起業を体験するイベントの名前であり、そのイベントを通じて地域に起業家コミュニティを醸成する活動の総称です。

SWのミッションは「No Talk, All Action」という言葉に代表されるとおり、実践を通じて起業家精神(アントレプレナーシップ)を教示し、促進し、地域の起業家コミュニティを構築していくことにあります。

SWは2007年、米国コロラド州で始まり、現在では160を超える国、1800を超える都市で開催され、これまで全世界での累計参加人数は50万人、それを支えるオーガナイザーと言われるボランティアは累計19万人以上、ここから生まれた事業は5万件を超えるとも言われており、世界最大級の起業家コミュニティとなっています。

日本においてもこれまで70都市以上、500回の開催を重ね、2万人以上の参加を数えています。SW参加者によるサービスの中には、ドリパスFRILの様にExitしているStartupも存在しています。

日本におけるSWは建付け上、NPO法人Startup Weekendが取りまとめを行っていますが、その役割は各種届出や会計統括に過ぎず、実質的には各地のオーガナイザー(=日本語で言うと「主催者」)が取り仕切っているのが特徴です。
StartupWeekendとしてのレギュレーションやブランドはNPOが認定ファシリテーターを派遣する形で維持しており、今回私が認定されたのはこのファシリテーターという役割です。

Q.なぜファシリテーターになったの?

A.自分事として社会を捉える人たちを増やしたかったから

もともと私は2017年、北九州における第1回目のStartupWeekendの開催にあたり、オーガナイザーではなく地域団体の職員としてサポートする立ち位置で関わり始めました。実際に第1回目に参加し、第2回目からはオーガナイザーとしても関わり、直近で開催された第9回までの全ての回に関与してきました。この他、福岡県田川市や宮崎県宮崎市で開かれたSWの立ち上げにも携わらせていただきましたし、SW関門ではコーチとしてもお呼びいただきました。

コーチとして参加した時のワンショット。眼つき悪。

ごく最近まで、私は「ファシリテーターにはならない」と公言していましたが、改めて内省し、ファシリテーターになることを決意しました。
そのきっかけとなったのは、同じくSW北九州で第5回からオーガナイザーとして加わり、今ではSWファシリテーターとして活躍しているたけぴーこと中村武さんと、第7回からオーガナイザーとして加わり、第8回および第9回でリードオーガナイザーとして全うしたぽんちゃんこと本田さんの存在が大きいです。

たけぴーが最近しばしば発言している「点を円に」。SW北九州が基点となり、SWの輪を九州や西日本で未開催の地域にも広げていくという想いは、私も考える「課題先進都市である北九州で生んだモデルを全国の地方都市へ」という理念とまさに合致するものだと感じたこと。
また、たとえ私が北九州のオーガナイザーとしてリソースを割きにくくなったとしても、ぽんちゃんをはじめ、北九州のオーガナイザーチームなら安心して託すことが出来る、という実感があること。

こうした環境が構築できたのは、これまでSW北九州に携わってくれた多くのオーガナイザー、スポンサー、コーチ、ジャッジ、参加者の皆さんのおかげだし、その恩に報いるには、北九州にも留まらずこの輪を広げていくことで北九州にも還流を創ることとも考えています。

私が考えるSWの一番の魅力は、「他人に頼らず自分たちの力でアイデアを形にする経験を積めること」です。
SWの会期中は、極論すればどのように時間を使っても自由です。食事やコーチングセッションは用意されていますが、活用しないのも自由。会場にいる必要もありませんし、何だったら、顧客検証のためには外で実際に声を聴くことを推奨されています。
チーム登録時は3人以上であることが求められますが、この3人の集め方や途中での増員・離脱も自由です。イベント申込を行っていなくても、知人友人を巻き込んでチーム形成することも可能です(予め申し込んでいない場合、食事等は提供されませんが)し、なんだったら途中で引き抜き、解雇も可能です(1人となった場合はチームとは呼べないのでその時点で何処かのチームに入る必要がありますが)。
コーチにしても、答えを教えてくれる存在ではありません。SWは学ぶ場ではなく、自ら実践し習得する場です。SWにはパートナーはいても先生はいません。ファシリテーターは場を整えますが、絶対者ではありません。
こうした、極限まで自由な環境において何事かを獲得できるとしたら、それは自らの力によってのみです。チームメンバーの力もありますが、そのチームメンバーとの関係性を構築するのすら自らによるものです。ここには他責の入る余地はありません。

翻って普段の生活はどうでしょうか?
職場では様々なしがらみがあり、パワーバランスがあり、与えられた職務がある。その中で何か上手く行かないことがあれば、責める要素はいくらでもあります。
普段の生活とSWとの、このギャップがあるからこそ、SW参加者は口々に「人生が変わった」と言うのだろうと思います。
変わったのは「他責」から「自分事」に、です。そして、それこそがアントレプレナーシップであり、起業家としての第一歩です。
ただし、アントレプレナーシップを身に付けたからといって、いわゆる起業をしなければならない、というわけではないと考えています。
社会あるいは普段の生活や仕事の中で、他責せず自分事として物事を捉え、何か問題があればどのように解決できるかアイデアを考え、それを実践するためのプロセスを理解している人が増えれば、それはいずれ社会に良いインパクトを与えるはずです。塵も積もれば山となる、かもしれませんが。

このような、自分がファシリテーターとして活動するための環境も、実感も、資格もある中で、それでもファシリテーターを担わないのは自分自身の信条である「義を見てせざるは勇無きなり」に反すると思い至ったわけです。

こうして決意を固めたのが3月頭。その後、私をSWの道にハマらせたタクトさんに決意表明を行い、ファシリテータートレーニングマニュアルにて学習したのち、つい先日、先輩ファシリテーター2名による面談を経てファシリテーターとして認定を受けました。

タクトさんと岩城さんによる面談。終了後のガッツポーズ。

この記事を書いている時点では、公式Webサイトに名前は掲載されていないのでフライングというか、これで実は認定は却下されてました、とかだと相当恥ずかしいのですが、先走って思いの丈を綴っています(笑)

Q.今後はどんな活動をしていくの?

A.九州を中心に全国にSWの輪を広げつつ、SW以外の観点も広げていきたい

認定を受けたばかりではありますが、ありがたいことに既に複数の地域からファシリテーターとしてお声がけいただいております。

一時期は他のリアルイベント同様に3年間のあいだ開催が少なくなっていましたが、ようやく全国でSW開催が活発化しており、ファシリテーター全体のリソースが不足気味ということもあるようです。
3年間活動していないと熱が冷めがちだったり、熱は冷めてなくてもその間にライフステージが変わって活動できなくなってたりしますしね。開催が少ないとファシリテーターの資格を得る人も少ないので全国的に開催が増えてもファシリテーターの人員不足がボトルネックにもなりかねないと(それも私が認定を受けようと思った一つのきっかけです)。

ファシリテーターの派遣費用(交通費・宿泊費)は各地のコミュニティ予算から捻出することになっているので、あまり遠方からだとお声はかからないとは思いますが、読んでいただければどこへでも(都合が合えば)行きますので、これをお読みの各地のオーガナイザーからのお声がけお待ちしております。

その中で、私が出来るのは単にSWのファシリテーターとしてだけではなく、北九州における起業家支援を傍らで見続けてきた、見るだけでなく新規事業という軸では携わってきた身としてのディスカッションもぜひ現地で行わせていただきたいと思っています。
ご参考までに、私も企画に入り北九州で実施していた「北九州みらいのビジネス創り対話会」の様子はこちら。
※記事中で「北九州で対話会を実施することになったきっかけ」として紹介されている職員が私です。

これに加え、新規事業のための補助制度担当として制度設計や、実際に採択された方の伴走なども行っており、私自身はいわゆるスタートアップではありませんが「門前の小僧習わぬ経を読む」としてなら諸々語らせていただけるとかと思います。

その他にも、事業承継者による新規事業創出のためのイベント、その名も「アトツギWeekend」という、StartupWeekendをパク…もといオマージュした取り組みも実施しており、こういった活動についても各地で会話させていただきたいと考えております。

一方で、「これはしない」と考えているのは、北九州におけるSWファシリテーターとしての活動です。
こう言うと「育ててやった恩も忘れ寄ってからに、くらすぞきさん」と愛情をぶつけられそうで戦々恐々とするのですが、もう少し説明させてください。

SWの良さは、前述の通り自分事として捉えられるようになることなのですが、それにあたり「誰がその取り組みを行っているのか」はとても大事だと考えています。
巷には、いわゆる公的機関による起業家支援やアントレプレナー教育が多く存在しています。SWがそれらと一線を画すのは、地域で自ら起業家コミュニティを醸成したいと考える人たちが有志、すなわちボランティア、無償で実施していることです。
ファシリテーターも同様で、派遣費用(交通費・宿泊費)は実費で支給されますが、日当や金銭的な報酬はありません。
お金がもらえないからやらない、と言っているわけではなく、ボランティアで活動しているからこそ、公平中立的な立場で、外圧を受けることもなく、全世界共通レベルのプログラムが提供できているわけです。
私自身の本業が北九州市の外郭団体であることから、私がファシリテーターとして名乗ることで、この取り組み自体が行政色を帯びるのを避けたいと考えています。

これは先述の「北九州みらいのビジネス創り対話会」で実際にあったことですが、2年目の開催において会場使用の関係で北九州市の共催として実施したことで、参加者の質も変わり、実際に来られた人の口から「市が我々に何かさせようとしている」という声も聞こえてくるなど、”新しいビジネスの種を創る場”から、”困りごとをいってお上に届ける陳情の場”に変質してしまったのを感じたのです。
別に参加者を責めるつもりは毛頭なく、これは運営である自分自身の落ち度であるからこそ、同じ轍は踏みたくない、という主旨です。

北九州に限らず他地域のSWにも関わる(他地域オーガナイザーとの会話も含め)中で感じるのは、ファシリテーターが当該地域に在住しているからと言って、その人をファシリテーターとして起用するのがベストな選択肢とは限らない、ということです。
上記のような事象もありますし、SWファシリテーターは基本、その地域での本業を持つケースがほとんどでしょうから、どうしたってそこにしがらみだったり、地域への行き過ぎた配慮が生まれがちにもなり、純粋なSWのプログラム体験を参加者に与えることが難しくなりかねない、とも思います。
他地域から呼ぶからこそ、しがらみなどをAKY(あえて空気読まず)にクリエイティブな場を創ることが可能となる側面もありますしね。
地域の事情を優先させたいなら、わざわざSWと名乗って実施する必要はありませんし、逆にいえばSWと名乗る以上はそのレギュレーションは順守するのが筋合いともなるでしょうし。

そんなことを言いながら、次回の第10回SW北九州では再びリードオーガナイザーをやるつもりなのですが、これはちょっと別な事情があります(第10回を終えたら一区切り、とは考えつつ)。

気付けば相当な長文になってしまいましたので、これで筆をおきます。
皆さまと一緒にSWの場を作ることが出来ることを楽しみにしております!その際はぜひご当地グルメもセットで楽しみたいと思いますので、ご愛顧のほどよろしくお願いいたします!

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