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#103 バーチャル登山  #include 北岳

NHK BSの番組で「百名山」が取り上げられていて、しばらく映像を眺めながら”バーチャル登山”をして楽しみました。10年以上前に南アルプスの縦走登山に出かけた時に登った思い出深い山でした。

 北アルプスとは違い、南アルプスは樹林帯が多く、高山植物もいたるところに自生していて生命力を感じる山々が多いなという印象です。北岳への登りは、さすが日本で二番目に高い山という感じで高く急な登りだったと記憶しています。映像で見るとこう配は実感できませんでしたが、高所感は十分でした。甲斐駒、千丈、富士と雄大な山々がスクリーンに映ると、昔汗をかきかき上ったあのシンドサと達成感が蘇ってきました。(鳳凰三山の映像が編集でカットされていたのは残念でした。)山頂のパノラマを思い出し、地上のこの暑さが一瞬、消えました。

静岡側の富士登山

 そう言えば、日本で一番高いはずの富士山は、この北岳より低く感じました。富士山へは新五合目まで車で登ってから自分の足で登り始め、樹木の生えない赤茶けた溶岩がゴロゴロした登山道を、太平洋の景色と下から列をなして登ってくる登山者を眺めるという単調な登山に感じました。頂上での火口巡り(お鉢巡り)と旧気象庁富士測候所は感動しましたが。(新田次郎さんの小説を読んでから登ると、感じ入るものがありました。)

登ったことがない白馬岳

 テレビ番組では、南アルプスの北岳に続いて、北アルプスの白馬岳の映像が流れてきました。山頂の大きな池や、残雪の映像がスクリーンに映し出されるのですが、今一つ感動がありません。なぜかと思えば、(白馬にはまだ上ったことがない!)ということに気付きました。同じような山岳映像を見ても、実際に登ったことがない映像では、記憶から呼び覚ます過去の”自分の体で体験したライブラリ”がないために、感動が「つくりもの」のままでした。一方、実際に登ったことがある北岳の映像では、昔自分で”お花畑”を横目に見ながら急坂を思いザックを背負って登った記憶がよみがえり、「はっきりとした」疑似体験をすることができました。

必要な「ライブラリ」

 コンピュータのプログラム作成では、一人でまったく最初から作るということはありません。#include <stdio.h>のように、「他の人が作ってくれた人間とコンピュータのデータのやり取りをする標準関数の図書館を、これから作るプログラムに挿入させてもらいます。」という意味の”命令”を書くことで、大幅な時間と労力の節約をしています。

 人間社会のコミュニケーションでも、互いにある程度共通な「図書館、ライブラリ」を持っていることを前提として、わざわざ一から説明することなく意思疎通を図っています。

「仮想」を支える「基本体験」

 「仮想現実」の世界でも、おそらく「全く未知の経験」は追体験ができないので難しいだろうなと想像します。例えば、火星の上を歩くのを疑似体験すると言われても、地球の引力より小さな引力を体験したことがないので、”地面”から体がいつもより飛びあがる感覚は、きっと違和感があると思うだけで終わりそうな気がします。

 これからきっと、「仮想○○」「Virtual○○」という類(たぐい)のモノが今まで以上に多くなると思いますが、その時必要なのは、「基本体験」だろうと予想します。この「基本」いつ学ぶのでしょうか?それは、”基本的”には大人になるまでの期間だと思います。大人になる直前の「学生」と呼ばれる時期、最後の仕上げのために、是非いろいろな「基本」を体験してほしいなと思った、”北岳の仮想登山”体験でした。