#48 東京上野の世界遺産 ル・コルビュジエ
ル・コルビュジエが設計した東京上野の国立西洋美術館は,2016年に7カ国計17作品と併せて「ル・コルビュジエの建築と都市計画」として世界遺産に登録されました.フランスのサヴォワ邸まで行かなくても,彼の傑作のひとつが見れるとは幸せです.以前note記事「たゆたえども沈まず」に書いた松方コレクションを展示し,日本人に本物の西洋絵画・彫刻などの芸術を伝えるための”イレモノ”である建物自身が,世界的な建築物であるとは凄いことです.
コルビュジエが日本を訪れたとき,京都の桂離宮を訪れました.たくさんのスケッチを取り,比率を検討したりと研究をたくさんしたようなのですが後の回想録では,あまり高く評価しなかったと書いているとかいないとか,,,.私も桂離宮を訪れたときに,日本の美意識の粋が結集していると思いました.東山銀閣は普通の家と思えるのですが,桂離宮は障子の取っ手のデザインとその比率,敷石の色と配置などなど,その細部までのこだわり,直線と曲線,素材の使い方,きっと職人さんたちが技を出し切ったんだろうなと惚れ惚れと見とれました.きっと至る所に”黄金比”と”白銀比”があったんだと思います.コルビュジエも,ゴッホやモネたちのように,日本の美意識・デザインに衝撃を受けたと思います.ただし,「日本の美意識に感動した」などとインタビューで答えてしまうと,日本文化を取り入れた(パクった)と思われかねません.上野で西洋美術館の基本設計を考えてからは,日本人の三人の弟子(前川國男、坂倉準三、吉阪隆正)に後を託して国に帰ったとき,彼のカバンの中には桂離宮の”デザインの宝物スケッチ”が詰まっていたに違いないと思います.彼の”モデュロール”(人体の寸法と黄金比率から考え出した基準寸法)は,まさに日本建築の体の寸法に適応した”畳”(じょう:ヒト一人が寝るのに必要な広さ),”間”(けん:両手を広げた長さくらい,間口一間 ”まぐちいっけん” )と似ていると思います.
コルビュジエが人間の体の比率にこだわったのは,建築家になる前に画家として キュビズムに似た”ピュリスム(純粋主義)”を提唱して,正面図と側面図を一枚の絵に同時に書き込んだりして建築的な絵画をしていたことから自然の成り行きだったと思います.建築家から小説家になったハーディのような人もいれば,絵描きから建築家になる人もいるのは面白いですね.