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読む#1 (地図を読む)

「読む」の意味

 「〇〇を読む」という時、「読む」という言葉の意味を、改めて見てみようと、ウェブ上で読んでみると、

文字書かれたものを一字一字声に出して言う。「子供に本を—・んでやる」「経を—・む」
文字文章、図などを見てその意味内容理解する。「小説を—・む」「グラフから業績を—・む」
外面見て、その隠された意味将来などを推察する。「手の内を—・む」「来春流行を—・む」
(「訓む」とも書く)字音を訓で表す。漢字訓読する。「春をはると—・む」
数をかぞえる。「票を—・む」「さばを—・む」
(ふつう「詠むと書く)詩歌作る。「歌を—・む」「秋の風物を—・む」
囲碁・将棋で、先の手を考える。「一〇手先まで—・む」
講釈師演じる。「一席—・む」

https://www.weblio.jp/content/読む

と書かれています。日常生活で「読む」というと、”黙読”して声に出さずに目で文字を”眺める”だけと思いがちですが、上のリストでは4番目の意味が当てはまります。改めて眺めてみると、「読む」という言葉には、何かを「わかる」「つくる」という意味が多いのが意外です。母国語の日本語を日常生活で使っているので、「読む」という言葉の意味をあまり意識していませんでした。
 そうすると「地図を読む」というのは、2番目の意味である「意味・内容を理解する」だということになります。同様に、「教科書を読む」「図を読む」というのも理解するということになります。「教科書を読みましたか?」「はい」という会話がなされたときに、「理解できましたか?」「はい」と同じ意味かどうかは時として怪しい気がします。繰り返し自分で読まないと、”分かる”に到達できません。自分で書ける(描ける)ぐらいになって、やっと”読めた”ということになると思います。

地図の約束

 書き手(伝える側)と読み手(受け手側)との間で、あらかじめ共通の取り決め(約束)がないと”暗号”となってしまいます。例えば、地図の約束を上げると、

  • 北方向を地図の上側で、視点は鳥のように地上を”鳥目線”で上から眺めた俯瞰図。(右側が東、左側が西、下側が南。もし、”モグラ目線”だと左右の東西が逆になってしまう。)

  • 縦軸と横軸の倍率(縮尺)は同じ。(これが違うと距離を計算するときに、方位によって値が異なってしまう。)

  • 普通に使う地図は、方眼目盛り。(但し、地球規模で方位を正確に表すメルカトル図法は、緯度が高いと長さが等しくなくなる。)

  • 等高線や工場・発電所などの記号は、予め共通で決められたものを使う。

などがあります。
 しかし、伝えたい内容・目的が優先されて、「正確ではないけれど伝えたい内容を理解しやすい地図」というものが身近にたくさんあります。例えば、

駅を降り得てから目的地までの乗り換え地図: 

  • 不要と思われるものは描かない(伝えたいものだけが目立つ)

  • 縮尺が部分的に拡大あるいは省略

  • 迷いやすいところを特に誇張して明記

「読むこと」は「頭の中で描くこと」

 意味を理解するということは、結局は「言葉以外」で表せることだと思います。文字を読んで、文字を書くだけでは、理解したことにはなりません。単に記号を書き写しただけです。
 例えば文章を読んで、箇条書きに抜粋する、あるいは四角の枠内に単語を書込み矢印でそれらのつながりをグラフ化するなど、”加工”することができて初めて理解できた事になります。
 もし書き写すのであれば、一旦よく見て、目線を外して何も見ずに書けたらそれは、「書き写し」ではなく「読み取り書いた」事になります。一般的に人間は、頭の中に意味の塊として理解して、それを文字や図として書く・描く事ができるそうです。
 例えば、TOEICテストでスピーキングスピードが測れないと思いがちですが、人間は読み取った速さでしか話すことができないので、長文を大量に短時間で読んで回答する能力で、ほぼ話す速度に近い能力が測れるようです。
 地図を「読む速度」と「書く速度」も、結局は頭の中で「理解する速度」という事になります。

過去の経験は「図書館」

 何事にも言える事ですが、経験したことは次の機会により反応速度が速くなります。地図を読み慣れていると、初見でも読み取る速さがスピードアップします。頭の中の経験値の「図書館」に蔵書された知識によって、全てを読まなくても”飛ばし読み”することができます。この飛ばし読みは、時には勘違い(早とちり)を引き起こしますが、実際にはこの能力によってとても助けられ短い時間でたくさんの情報を読み取っています。

”流れ”を読む

 ある特定の目的を伝えるための地図について考えます。過去の経験から次に書いてあることを推測して飛ばし読みをする能力というのは、書かれてある内容のつながり、作成者の意図を読み取り、ゴールへつながるまでの道筋を読み取る事になります。
 作者の意図を読み取れるようになると、流れから逸れた内容には敏感に気づくことができます。例えば自動車の走行であれば、一見遠回りをする道順があれば、そこには”一方通行”や”集中工事”などの例外があるかもしれません。朝夕のラッシュアワーが図に描かれていないことがあると、地図を読むことは、「未知な状況を推測」する能力が必要になります。

「教科書」は「未知な知識」への道を記した地図帳

 以上、「地図」についていろいろ頭に思い浮かぶことを書き連ねました。この「地図」を「教科書」に置き換えてみてください。冒頭の「読む」の意味の2番目をもう一度読む

”文字や文章、図などを見て、その意味・内容を理解する。”

https://www.weblio.jp/content/読む

とあります。教科書には、文章と図・表などがあります。まさに「地図を読む」ことは、教科書を読む事に近いと言えます。大きな違いは、それまで知らなかったことがたくさん書かれていることが多いのが教科書だということです。知っていることばかりが書かれていては、学ぶことがなく振り返り(復習)の読み物という事になってしまいます。

これから

 未来の自分を作る知識・教養の一部となる道標(道しるべ)を集めた地図帳である「教科書」を読むための、具体的なヒントを一つずつ、順不同で今後書いていこうと思います。