#6 イタリア語 事始め(2)「HO事件」

”学び”についてnoteにノートしようと始めたこの備忘録。学生が初めて勉強するときに感じるトマドイ・オドロキ・ルール・ウツクシサを、工学系教員の自分も得んと思い、イタリア語入門の門をたたく運びとなりけり。事件簿#2。

  Ho una valigia pesante.  私は重いスーツケースを持っています。

なるほど、これは主語「私」の”Io”が省略されているんだろうなぁー。と前回の「主語 行方不明事件」で知った知識で”ちょっと分かった気分”を味わう。この感じが学びの”飛行”を継続するために必要な推進力となる。

【戸惑い】「Ho」の最初の一文字hは発音しない。エッ、イタリア語には、発音しない文字がある!(なら最初から書かなくていいじゃーん。と若いころの自分なら思うだろう、きっと。)中年と呼ばれる齢を重ねた立派(?)なオジさん(オッサン)ともなると、きっとなんか理由があるんだろう。まぁ、その気持ちは、ちょっと抑えて、先へ進もう。

 イタリア語の「avere」は、英語の「have」に相当するらしい。しかし大きく違うのは、三人称単数形と過去分詞だけで”弱い変化”をした英語に対して、イタリア語の「avere」は”強い変化”をしている。まるで、一つの細胞が体内で各器官ごとに全く異なる形態に変化するように。単数形だけまとめると、

avere 単数
1人称 ho オ
2人称 hai アイ
3人称 ha ア

【驚き】イタリア語は短い!

 前回の”Piacere”でも感激したけれど、伝える情報量に対して音節(通信情報量)がとても短い。いわゆる”情報圧縮”して会話をしている。例えるなら、一枚の写真を圧縮せずに2MBで通信するより、JPEGなどの人間の目では劣化を検知できないほどの非可逆圧縮で1/10ぐらいに圧縮して転送するのに似ている。イタリア語、さすが古代ローマ帝国からの長い歴史を持つ言語、”イケてる”と感動!短い言葉・単語には、その必要性があると推測する。日常よく使う言葉を長くしていると、コミュニケーションに時間がかかってしまう。
 古典ラテン語で有名な例としては、カエサルの”Veni, vidi, vici”「来た、見た、勝った」。1965年F1メキシコグランプリのHonda初優勝を東京本社にあてた電報でも使用された。最初と最後が同じ文字で”美しい”。

 scrabbleというボードゲームがある。アルファベットが書かれたコマをクロスワードパズルのように並べて点数を競う対戦型のゲームで、英語native speakerの友人と一度対戦したら日本人の私がなんと勝ってしまった。(相手は私に花を持たせてくれたのだろうけれど。)勝てた理由は、とにかく私の知っている英単語は長いものばかりで、日常会話で使う短いものを逆にあまり知らない。専門用語の”equilibrium”(平衡)なんて単語をいきなり使うと、相手は面食らってしまう。こいつ何者?だってこっちは、そんな類の単語しか知らないのだから、頭の中で冷や汗書きながらひたすら受験英語と専門英語論文の知識の”水たまり”から反撃の単語を繰り出し続けた。二人で笑いながら。(笑いながら学ぶ、これも学習には飛び切りのスパイス!!)会話の単語は、おそらくどの言語でも短いと推測。

【ルール】主語を省略しても人称変化があるので、主語が推測できる。

イタリア語は簡単と最初勘違いしたのだけれど、ここでその巧妙さに気付く。動詞や冠詞などが人称によって変化するので、主語は省略できるという仕掛けがちゃんと機能している。もしかすると、最初はみんなで主語を使っていたかもしれないけれど、文章内のルールから、主語を省略しても意味が通じるから次第に省略されだしたのかもしれない。(素人の推測です。)

上のイタリア語文章で、もう一つの重要なルールは、「男性名詞」と「女性名詞」の存在。

”una valigia” 女性名詞のvaligia(スーツケース)の冠詞はuna

ドイツ語のように中性名詞というのは、どうやらイタリア語にはないらしい。(まだ1カ月の初学者の私が知らないだけかも。)


【美しさ】イタリア語の響きは美しい。"a"や”o”など冠詞や名詞の語尾が連動して変化するので、音節の最後の音”(韻)がそろっていてリズムがあり、軽やかな印象を与える。まるでオペラのように。(美しいと思えることは、学びにとってもとても重要。美しいとは、スマート・エレガント・軽妙・鮮やか・見事、言葉で表現するのは難しい。”音と心の共鳴”。さらに難しい表現かな?)

さて、「HO事件」から書き始めた今回のレポート、ここで1960文字とは。OH、あっという間に時(文字)は過ぎる。
イタリア語の冠詞の”美しい”ルールについては、次回へ。 Ciao!

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