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仕事の値段

フリーランスになって戸惑ったことのひとつ。
それは、仕事の値段を自分で決めるということ。

会社に務めていたときも、打ち合わせを重ねて契約を結んだり、商品の売上、利益を日々追ったり…。

仕事の値段を考えることは、もちろんありました。

けれど、会社員だった頃は、毎月いただく給料があって、時給計算が可能な人件費がある。
それに、必要経費を加えて、利益を残すように、値段を決めることができる。

そんな計算式で”お見積もり"を出すことができていたけれど、フリーランスになった今、その計算はどうしたものでしょう。

理想の年収を決めて、月収から時給を換算して、予算交渉を行う人もいると思います。
それが、効率的で効果的な方法だとも聞きました。

けれど、わたしはその計算式が仕事をスムーズに行うための便宜上のものとわかっていても、時間と仕事の値段を結びつけたくないと思いました。

企画の仕事だったら、旅からインスピレーションを受けることもあるし、書く仕事だったら、本を読むことが糧になる。
そんな時間を"もったいない"と思いたくないから。

そんな風に思っていたときに、ぴったりの特集の本を見つけました。

Kalas -仕事の値段-

どうやら三重県津市で書店を営む方が発行している地域の小冊子らしい。

取材対象は、津市という特定の地域ながら、扱うテーマは様々。
「写すもの、残るもの」「失うを手に入れる」など、どれも気になるものばかり。

どれだけ貰うか、何を貰うかどれだけ払うか、何を渡すか

仕事には、それに見合った報酬がある。

それがあるから頑張れる。
そこから生まれる責任がある。

「社会から必要とされない”やらせメール”を送る簡単なお仕事で、驚くような高級を得る者がいる一方、社会の為に日夜汗を流しながら報われない人がいる。

この役割と報酬の不均衡は一体何だろう?

筆者のそんな疑問から、この特集が組まれることになったそう。

特集では、値段の検討がつきにくい、ピアノ調律師や、表具師などをなりわいにしている人たちに焦点が当てられ、仕事の値段の考え方を掘り下げています。

良い事も悪いことも全部自分に返ってくる。その充実感がかけがえのない報酬

10年間活動を続ける陶芸作家の方の言葉です。

仕事の値段に加えて、「この仕事の嬉しい報酬」も尋ねているところも面白い。

その答えは、「価値あるピアノを残し、必要とする人に渡せた時」「作品を求めてくれた方からいただく言葉」など人それぞれ。

報酬をいただく分、何を返せるかをずっと考えていました。

でも、もっと肝心な「自分はどんな価値を作っているのか」「相手はどんな価値を感じているのか」に、目を向けられていなかったと気がつきました。

仕事をして、お金をいただくけれど、仕事と価値、価値とお金は、必ずしもイコールではない

そこに、仕事をお願いする人とお願いされる人が媒介して、更にややこしい。

「仕事の価値」に、明確な答えがないからこそ、もっと広義な価値観も含めて、擦り合わせができると面白いのかもしれない。

だから、自分の感覚でのお金の指標は、あまり外に置かないまま仕事をしています。

依頼してくれる人の意見をまず聞いてみたい。
実際に価値の交換が、泊まる場所だったり、素敵な人との出会いでなされることもありました。

そんな風に考えるようになって、「仕事の値段」はわたしにとってずっと自由なものになった気がします。

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