毎日すれ違うジョンレノンの話
私はいつも朝の8時5分に家を出る。
徒歩10分足らずで、最寄り駅に着く。
地下へと向かう階段を下っているとき、
必ずすれ違う。
バサバサの髪を伸ばして、眼鏡をかけたジョンレノンみたいな男に。
気付いたのは先月のことだった。
「あれ、この顔前も見たことあるな」
あまりに個性的な見た目だったために、たまたま印象に残っていたのである。
それから私は、毎朝ジョンレノンを、階段ですれ違う度意識するようになった。
私が1、2分遅刻すると、すれ違う場所は地上になった。
ジョンレノンはまるで時計の針のごとく正確なのだった。
8時半出社の会社なのかな、と想像を膨らませたりした。
答えは一生分からないのだった。
彼は私の存在に気付いているのだろうか、とたまに思う。
たぶん気付いていないと思う。だって、一度も目が合ったことないし。
ジョンレノンの場合はたまたま個性的だったから意識できたけど、
私たちの日常には、無意識のうちに毎日出会っている人がたくさんいるんだと思う。
電車の中とか、エレベーター待ちの列とか、スーパーで買い物している時とか。
そんな中で、誰かが自分のことに気づいて意識していてくれたら面白いな、と考えてみたりする。
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