自分のことを「俺」と呼べなかった中学生時代
小学校の時、父の仕事の都合で徳島県にいた。
中学生になって埼玉に帰ってきたのだが、そのとき物凄く気にしたのが言葉の壁だった。
徳島県民は語尾に「けん」をつける。
「そんなことくらいしっとおけんな」みたいな。
私は方言が出てしまうのが恥ずかしくて、なんとなく人としゃべるのを避けていた。
しかしそれでも友達ができるようになって、方言を上手に隠せるようになって。
そんな私が唯一克服できなかったのが、自分を指す言葉だった。
私は自分のことを「うち」と呼んでいた。
徳島県民は「うちなあ」と言って話し始める人が多い。
関東で自分のことを「うち」と言ったら、なんかオカマっぽい感じがするだろう。
だから私はすぐにでも変えたかった、のだが、
それまで「うち」だったものを、「俺」に変えるのは物凄く勇気がいった。
「あれお前、自分のこと『俺』って言うようになったんだ?」そう指摘されたらどうしようかと思った。
私は生まれてはじめて「俺」を使ったその日のことをいまだに覚えている。
座席の前に座っていたやつに向けて、「俺、今回のテスト勉強ぜんぜんしてないや」とありがちなことを言ったのだった。
そして緊張していた私に対し、相手はまったく意に介さず、「俺もだ~~」と返事をしたのだった。
私は今、当時と同じように、言葉のチョイスに悩んでいる。
社内で「承知いたしました」がなんとなく恥ずかしくて言えないのだ。
普段は「了解しました」を使っている。
でも、「承知いたしました」の方が丁寧だし、へりくだっている感じがある。
相手からの印象もそちらの方がいいだろう。
当時を思い返して、一回勇気を出して使ってみれば慣れてしまうものなのだろう。
今度、普段あまり会話をしない営業さんに対して、使ってみようかしらん。
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