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各地の民泊規制状況ーハワイの民泊と地域経済へのインパクト#4

このシリーズでは、ハワイの住宅問題/家賃高騰問題に関して取組む団体、Hawaii Apple Seedによる、バケーションレンタルの家賃及び地域経済に関するレポート(2018年3月22日公開)を紹介している。
▶その1:民泊の増加は家賃上昇、地域経済の衰退を引き起こす?
▶その2:旅する楽園、住む地獄
▶その3:民泊と住宅価格の現状

これまで、ハワイの経済状況、そして住宅事情の実情と、VRU物件(民泊物件)が住宅の価格や経済に与えるネガティブな影響についてみてきた。しかし、バケーションレンタル/民泊市場は広がりつつけており、旅の宿泊のオプションとして欠かせなくなってきている。それでは、他都市においてはいかなるルールづくりを行っているのだろうか。

サンフランシスコ

カリフォルニア州サンフランシスコでは、以下のような規制を設けている。

・ホスト不在の状態での貸出しを年間90日に制限
・物件のレンタルはホスト1人につき1ユニットに制限
・VRUとしての登録を義務化、税金も徴収
・オンラインのリストやサービスに登録するまえに、市への登録を義務化
・登録されていないまま営業していた場合、一日$1,000(約10万円)の罰金を課す
・2018年の施行により、Airbnbに登録されているサンフランシスコの物件は半分に減った。

ニューヨーク

・2014年にオンラインに登録されている物件の72%が違法であると報告
・このうち6%は商業的な規模での営業が確認されており、その割合が小さいにもかかわらず、ニューヨークで登録している物件のうち37%もの収入を占めていた
・2010年には、オーナー不在時にアパートを30日以下の短期のレンタル物件としてAirbnbなどに広告することを違法とした。
・罰金は最高$7,500(約75万円)

バルセロナ(スペイン)

・2016年の調査で、40%の登録物件が違法と報告される
・2013年から33%家賃水準が上昇しており、この一因とされた
・バケーションレンタルを生業とするアパートのオーナーには、免許が必要とされ、違法な物件に対しては最高€60,000(約800万円)の罰金
・VRUの調査員を20人から40人に増員。2018年には、100人以上の調査員を配置する予定

ハワイにおける調査状況

・2017年1月~8月の調査で、全1,035件に対する調査を実行
・このうち49件について、違法であるという通知が行われた
・土地利用ゾーニングの規制に違反しており、罰金が発生するケースは2件であった。

このように、もともとのAirbnbや民泊は、「自宅の空いている部屋を期間限定でゲストに貸し出す」という、超短期ホームステイに近いイメージで始まったものだった。これ以前のプラットフォームとしては、カウチサーフィン(自分の家の余っていて、ベッドとして使用できるソファーを数晩だけ貸し出すというコミュニティ)があった。Airbnbもその延長線から始まったサービスだったと思われるが、今では専用の部屋が用意されるなど、一大ビジネスとなってしまった感がある。

Airbnbのもともとの「地元ホストがゲストを受け入れる」という形を取り戻すという意味では、ホスト常駐を義務付けるという制限は効果的であるように思う。また、日数を制限することで、利益を制限することができ、通常の長期のレンタル物件が減ることを防ぐことができるだろう。これに加えて、ホストとゲスト間のトラブルを防ぐことと、公的機関が実態を把握しコントロールするための登録制・免許制度も、理にかなっている。

ビジネスが萎縮してしまうのではないかという懸念をもつ人もいるかもしれないが、そもそも無秩序に広がっていってしまったシステムを、後追いで整理しているような状態である。多少厳しい規制から初めて、徐々に環境を整え、共生のしかたを考えていくというのは妥当なプロセスであるという印象を受ける。

このシリーズは次で最後になる。最後は、このレポートをまとめたHawaii Appleseedによる提言を紹介する。

>次の記事:民泊規制への提言

上の写真はダイアモンドヘッドからの夜明け。この中のいくつの明かりが今民泊物件になっているのだろうか…。

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