🌴ホノルルのまちづくり最前線#1🌴

最近「整備」とか「開発」とかという言葉にネガティブイメージが付きすぎてるから、「まちづくり」って乱発してるんじゃない？と勘ぐっている今日このごろです。

ということで、４年ぶりにホノルルに帰りました。バケーションだけど、バケーションじゃない。きちんとテーマがいっぱいあって、かなりのハードスケジュールだったんだよ。

その中の一つがホノルルの「まちづくり」の現状を知ること。

主にチェックしたかった主なポイントは以下のとおり。
①ワード、カカアコ地区の開発状況チェック
②ホノルルTODの進み具合は？
④レンタルバイクとバイク専用レーン実際どんな感じ？

①ワード、カカアコ地区の開発状況

ホノルルを訪れる人なら必ず行くアラモアナ・ショッピングセンターのお隣、ワード地区と、その隣のカカアコ地区は、ホノルルの中でも最大の再開発が行われている地区です。アラモアナ・ショッピングセンター自体も拡張されてコンドミニアムがガツンとくっついていたり、より高級志向のお店が集まるようになっていたり変化は多いのですが、ホノルルのまちの変化の主役はなんと行ってもワードとカカアコ。

２つの性格の異なる大地主と、それぞれの開発コンセプト

この２つの地区の特徴は、なんといっても両方大地主が広い土地を所有していること。そして、隣接しているにもかかわらず、それぞれが全く異なる性格の（再）開発を行っていることです。

１：ワードビレッジ

ワードビレッジはとにかく「ザ・都会！」ラグジュアリアス！クリーン！スカイスクレイパー！ビルディングファサードカガミバリー！
上の写真はこの地区でも最も単価の高いコンドミニアムと言われている建物です。ビルの手前の部分から、不自然につきだしている四角い部分あるのわかりますか？これプールです。ルーフトップでもインフィニティでもある突き出しブールですよ！こんなものがホノルルにできるなんて。あなた出世したのね。

ワードエリアの地主は、The Howard Hughes Corporationというアメリカのディベロッパーです。エリア内のIBMビルの一階にセールス用のショールームがあり、今回はこちらで少し説明も聞くことができました。（あきらかに客層じゃないキャップとTシャツ、スケボーの3人組にも関わらず丁寧に対応していただきました！ありがとうございます！）

こちらの土地をまるっと所有してから、道路も含め一体的な都市計画・開発を勧めています。これからこの地区だけで上のような高層コンドミニアムが16棟立つ予定（これでも減らしたほう）。購入者のほとんどが別荘か投機目的だそうで、その3割が日本人なんだとか。住んでいる人ももちろん高所得者ばかりだそうです。

道路は毎日早朝にはブロワー（風が出る機械）で清掃され、この地区限定の警備員がパトロールして安全を確保しているそうです。エリア内には公園となる緑地を確保しています。道路などの計画については、ホノルル市との競技の上で計画・管理されているそうです。ひとつのディベロッパーが完璧に管理し、まちを「運営している」と言っていいコミュニティです。

▲いつかの将来、鳥はアラモアナ、ワード地区をこう見る

誰が住むのか、住めるのかー高所得高齢者が集まる理由

この地区の購入者の中には、ハワイカイから引っ越してくる人も多いとか。
ハワイカイは、ホノルルの南東にある高級戸建てが立ち並ぶエリアです。すでに仕事の一線から退いた、リタイア層の多いエリアです。ワードのコンドミニアムがオープンした際には、ハワイカイのある通りは「FOR SALE（売出し中）」の看板がズラッと並んでいた、と言われたそう。つまり、ここに住んでいた高所得で高齢者層が、一気にワード地区のコンドミニアムに引っ越したというわけです。

家族が多いときには大きな家は良いですが、子どもたちが巣立ったあとは持て余してしまいますよね。また、いわゆる郊外型の戸建てが集まる住宅地では、買い物などの際に車に乗ることを強いられます。ハワイカイは、海辺でひろびろした立地が最高ですが、歳を重ねて住み続けるには少し難しい場所となるのです。

対して、ワードエリアでは、歩いて行動できる範囲にスーパーマーケット（しかし主に高級品）やレストランなどが集まっています。また、これから病院を作る計画があるそうです。米国では合理的な理由に基づいて引っ越す文化がありますので、裕福なリタイア層が利便性の高いこの地区に引っ越してくることにも納得です。おそらく、ディベロッパー側もそれを見越して開発をしているのでしょう。

しかし一方で疑問も残ります。
この地域に本当に「住んでいる」人は誰なのだろう。
これらの人々がいずれ寿命に達したとき、この地域はどうなるのだろう。
もともと倉庫街だったこの地区は、確かに元からの住人と呼べる人々が少ないエリアかもしれません。しかし、これらの高級コンドミニアムが立つことで、周辺の地価や家賃は上昇します。また、高級志向の店舗が集中することで、この周辺におけるライフスタイルは富裕層向けのものに固まってきます。

▲ワード地区の中でも前からあるエリア。低層で雰囲気が違う。ローカルのお店が入っていた一部はすでに取り壊されて公園用地になっていたりした。

てっとり早く開発を進め、投機などによって利潤を生み出すにはとても良い方法だと言っていいでしょう。また、これらの生活をまかなうことのできる収入や資産のある人々にとっては、非常に幸せな環境であることは間違いないかもしれません。

でも私は住めないなあ…。

では、お隣のカカアコ地区はどうなっているでしょうか。

２：カカアコ

カラフルな壁画（mural）がインスタ映えするカカアコ地区。こちらは、もともとあった倉庫街の建物をリノベーションし、そのまま活かしています。また、壁画のようにアートやクリエイティブ関係の、主に若い世代を呼び込むようなまちづくりを進めています。こちらにも「Our Kakaako」というこの地区の開発状況やプロセスなどを説明する施設があるのですが、今回は残念ながら営業時間外だったようで、見学できませんでした。残念。

こちらの町並みはもう少し素朴で、アートやDIYにあふれる雰囲気です。
中には、核となり若者が集まるレストランやバーなどが集まるコンプレックス「SALT」があります。こちらのガレージでは、タイニーベンダーの集まるマーケットが行われているだろうと想像されます。

▲レストランやバーが集まる、SALT at our Kaka'ako

▲ヒップな印象のお店が集まる

▲出番を待つタイニーベンダー

▲道路沿いにはパークレットも（ぼろぼろでしたが）

▲倉庫を改装したクラフトビール屋さん（店主は沖縄系の方！）

▲倉庫の壁に描かれた絵。ギャラリーの入り口だったりする。

▲このように大きな壁画は、年に一度のPow Wowというイベントで一気に塗り替えられる。エリア中様々なアーティストによる壁画でいっぱい。

写真を見ても、ワードエリアとは異なる年齢層、趣味嗜好の人々が集まるエリアになっていることが感じられると思います。

こちらの地主はカメハメハスクールという、王家に由来のある大事主です。ワイキキのインターナショナルマーケットプレイスなどの土地も所有し、そこで生み出した利益が、ネイティブハワイアンの文化なども大切にし、その血統ある子どもたちを受け入れる名門校、カメハメハスクールの運営などにも役立てられています。

近年の住宅不足及び家賃高騰により、コンドミニアムなどを建設する際には、その戸数の30％（場合によって変動あり）ほどを「Affordable Housing」という、家賃が収入の30％以下になるような金額設定の賃貸ユニットとすることが求められています。（それでもワンルームで月10万円くらいします。）カカアコ地区には、そのようなAffordable Housing専門の棟や、低所得層・シングル世帯や若いカップルなども住みやすいようなマイクロユニットアパートメント（比較的小さな規模のアパート）なども建設されています。

ワード地区と違い、華やかな開発ではありませんが、元あるものを活かし、オーガニックにまちが広がっている印象を受けます。ただし、一方でホノルルのアートやナイトライフを担ってきた自負のあるチャイナタウン周辺の人々にとっては、ライバル視されそうな雰囲気もありました。

どちらに住みたいかはあなた次第かもしれないが

ワードもカカアコも、大規模な開発が少ないホノルルでは、比較的急速に、まちを単位として変化が現れている面白い地区です。しかも同時並行で隣り合わせなのに、こんなに性格がちがうというのは、開発が周辺に与えるインパクトや、どのような層を狙ったまちづくりを行うかなど、まちづくりや都市計画に興味がある人にとって、とても良いサンプルです。こんなにも違うのに、ぴったりとなり合わせ、というのも、エリア間の相互関係や広域的な都市計画としてのロジックについて考えさせられます。

個人的には、きらびやかではないけれど、地元の商売やアート、そしてコミュニティの多様性や社会的意義に重きを置くカカアコ地区をどうしても支持したくなってしまいます。それは私が富裕層ではないため、仕方がないのかもしれません。ワード地区のような開発は、限られた層の人々にしか恩恵が行き渡らないのではとどうしても納得いきませんが、経済的には正しいやり方なのでしょう。しかし、結局その経済的なメリットも、誰に流れているのかをよく考えなければいけません。