福岡正信氏の自然農法による稲作を実験する
昨年、我が家の田んぼでは、何もしないで米が収穫できました。収量は、あまり多くありませんでしたが、稲が日本の気候風土に適した作物であるということがよくわかりました。
それで、稲作の勉強を少しづつですがしてきました。稲を不耕起、無肥料、無農薬で栽培するといえば、福岡正信氏が有名です。福岡正信氏の「わら一本の革命」は、自然農法という独自の農業哲学と技術を提唱する画期的な書籍です。この本は、1975年に初版が出版されて以来、世界中で多くの読者に影響を与え続けています。
その本の中で、稲作については、クローバー草生、米麦連続不耕起直播栽培を紹介しています。しかしながら、その栽培方法については、自然農の川口由一氏によって、実現不可能と否定されています。
「自然農・いのちのことわり」というWebサイトの「「自然農」の基本、そして真に持続可能な農について ――川口 由一」というページで、川口氏は以下のように述べています。
ここまで否定されてしまうと、福岡正信氏の稲作をやろうという人は、殆どいなくなります。だから、福岡正信氏の自然農法の稲作を再現できたという人はいません。
下の写真は、福岡正信氏の栽培方法を参考にして、ダイシモチというモチ麦とクローバーをバラまいて、その上に稲藁を振り播いておいた場所です。種まきから手を入れていませんが、それなりに成長しています。
大麦ではなくて、えん麦を使った場所は、上の写真の場所よりもよく育っています。
福岡氏の「粘土団子」は、多数の野菜や緑肥の種子を混ぜ合わせ、土に直接バラまくという実践です。この手法は、自然の生態系が持つ豊かな多様性を模倣しようとするものであり、一度に多種多様な植物が成長する環境を創出します。
福岡氏は、このような多様性が植物間での自然な相互作用を促進し、生態系全体の健康とバランスを向上させると主張しています。たとえば、異なる植物が異なる栄養素を土から取り込むことにより、土壌の栄養バランスが保たれ、植物が病害虫から自らを守る効果も期待できます。
現代生物学では、生態系の多様性がその持続可能性と回復力において極めて重要であると認識されています。多様な種が共存する生態系は、一種類の植物のみに依存するシステムよりも、環境変化や病害虫の発生に対してより強い抵抗力を持ちます。福岡氏の種子をバラまく手法は、生態系の多様性の重要性が認識されていなかった時代に、自然を観察することで、その重要性を理解し、それを実践に移したことは評価すべきです。この点については、川口氏の自然農と比較して、優れた点だと言えると思います。
最近、慣行農業の稲作でも、不耕起栽培が話題になっています。その中で、マイコスというアーバスキュラー菌根菌の生物資材をつかった米の乾田水稲種直播栽培が注目されています。
こういうことを総合的に考察すると、福岡正信氏の自然農法による稲作は、生態系の多様性、そしてアーバスキュラー菌根菌を活用した農法だと考えられます。そう考えれば、実現可能かどうかは別にして、福岡氏の手法は、生物多様性を学習する絶好のケースになると思います。それで、我が家の農地で、今年は米作りの実験をしてみます。
なお、福岡正信氏の稲作については、「無Ⅲ 自然農法」という1985年に発行された著書に詳しく書かれています。
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