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遅効性の本

今年一年の間に読んだ本を振り返っていました。

私は読書の記録に、ブクログというアプリを使っています。ブクログは、まるで自分の本棚のように、読んだ本の表紙を並べて一覧で見ることができるのが特徴です。私は本の装丁が大好きなので、このアプリを重宝しています。読みたい本や積読書も分けて登録することができ、本屋さんに行った時はブクログを開いて欲しかった本を探したり、積読の数を見て冷静になったりできるのもいいところのひとつです。また、読んだ本を5段階で評価したり、一言感想を書いてシェアすることもできます。今日はその、自分の評価や感想の記録を見返していました。

最近は星4の評価ばかりが続いています。星4の評価というのは絶妙です。星3では低すぎるけど、星5はあげられない、そんなときにつけます。限りなく5に近いけど、他の星5の作品と一緒にこれを並べられるかと聞かれたらそうではないからやっぱり4、みたいなこともあります。

そう思うと、Filmarksの小数点刻みの評価というのはいい制度だと思います。あれ最初見た時なんなんこれ、いるか?とおもったけど、いります。4.1と、4.9では全然違うでしょう。それでもブクログでは同じ星4として評価されます。星4の含むグラデーションは、私の中だけにあるということになります。

そう、それで、星4の評価が続いているのです。本当に素晴らしい!ブラボー!な読書体験をしていない。あー読書したい。圧倒的な読書体験したい。金閣寺みたいな、、と思ったところで、私が過去につけた、ブクログの金閣寺の評価が星4であることに気が付きました。え?!なんで?!と思って、星5に直そうかと思ったんですが、いや、あの時読んだ後の私はあれを星4として評価したんだ、ならばそうなんだと思って、そのままにすることにしました。

そうして他の自分の評価を見ていましたが、え、なんでこれ星4にしてる?と思うものが多数ありました。

そこで考えたのは、思い出補正という言葉、それと、後から効いてくる毒、遅効性の、ボディーブローのようと言われる類のもの。

思い出補正は、ただシンプルにそうでもなかったのに、周りの評価とか、そういうのに影響されてなんか凄かった気がしてきたやつ。

遅効性の毒は、その時はなんともないと思ってたのに、ふとした瞬間にその本の一節を思い出して、あれってこういうことだったのか?と思って、事あるごとに思い出しては、その周りの点と点が線で繋がって、いつの間にか私の人生に入り込んでくるやつ。

そう考えると多分、生涯自分の中に残り続ける本って、遅効性のものが多い気がします。

下げる気持ちは一切なく、話題性の高い本は初速が凄くて、おもしろー!!と思っても、1ヶ月後には、あれどんな話だったっけ?と忘れてしまうことが多い。その時は本当にのめり込んで読むんだけど、そういう本はなんとなく後に残りづらい気がしています。

いやそれも良さの一つでもあるのかもしれません。でもなんとなく、そういう本を読んでいる時は、今私すごい本を消費してるなとか、本って娯楽だなとか思って、なんとなく申し訳ないような気持ちになってしまうことがあります。どんな本だって消費だし娯楽なのに。

もちろん初速がすごくてそれが永遠に燃え続ける本もあります。むしろ私は初速がすごい本が大好きです。

でもなんかすごい退屈だと思ったはずなのに忘れられない、なんか考えてしまう、そういう本の威力というのはやっぱり凄いと思います。噛めば噛むほど、というやつなのかもしれません。ただ単にそれを読んだ時がまだ来るタイミングではなかったのかもしれません。今このタイミングで、この本に、出会ったか・・・!みたいな本もあるので、結局本の評価というのは、その時の自分の体調や環境に大きく左右されるのでしょう。なるべく、その来るべきタイミングに、相応しい本を読んでいたいけど、結局あとから効いてくるのなら、出会うべくして出会ったんだなみたいなことも思います。

今部屋に積んであるまだ読まれていない本たち。ブクログに登録されている読みたいの本たち。またもうすでに読んでいて、星4の評価をつけた本たち。

それが今後、私が色んなものを見て、聞いて、感じることで、どんな瞬間に出会い直して、思い起こされて、点になって、線になるのか。

私の中にもう既にあるたくさんの言葉たちが、今後どんな風に私に効いてくるのか、楽しみだな、と思います。

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