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229.カレーに「もうレシピは要らない」のか? 問題 “ゴールデンルール”編

11年かけて制作した本がまもなく発売される。
『システムカレー学』(NHK出版)だ。
帯にはこう書いてある。
「全てのカレーはイメージ通りにデザインできる」
レシピを元に作ったらこんなカレーになりました、というのが従来のカレーの手法。
あんなカレーにしたいならこうデザインすればいい、という手法は長年、提案してきたことだ。ゴールイメージから逆算して作り方を組み立てられるようになれたら。そのためのゴールデンルールを整理したのは、11年前に出版した『カレーの教科書』(NHK出版)である。
その中で後半に何ページか「システムカレー学」の考え方を提唱している部分がある。今回はそれを1冊丸ごと使って解説する内容となった。

帯びにはこうも書いてある。
「もうレシピは要らない」
本当だろうか? 実際、僕にはレシピのレパートリーが存在しない。では、どうやって新しいカレーを次々と生み出しているのかを『システムカレー学』で整理したつもりだ。
本書の章立てはこのようになっている。

第1章     ゴールデンルール
第2章     アレンジ
第3章     カルチャー&サイエンス
第4章     クリエイション

それぞれの構成はこんなイメージだ。

今回から全5回にわたって、おおまかな考え方を紐解いてみたいと思う。

まず初回は、ゴールデンルール。世の中すべてのカレーを体系的に整理し、構造を理解しやすくしたメソッドのようなものだ。わかりやすく7ステップでまとめていて、これが把握できればカレーのおいしさが理解でき、自分でも作れるようになる。

それは、インドにおけるカレー的な料理の作り方をベースに検証を重ねて整理したものだ。これを元にすると、ネパール料理におけるカレーやスリランカ料理におけるカレーがどういう調理構造になっているかも把握できる。
そんなことを自分なりに見つけてホクホクとし、機会があると披露していたが、書籍の形で改めてわかりやすく整理したのが『システムカレー学』である。

NHKのEテレで放送していた坂本龍一さんの番組『音楽の学校』が好きでよく見ていた。「ドラムとベース」をテーマにした回に細野晴臣さん、高橋幸宏さんがゲストで出てYMO時代の話をしていた。
(動画はYouTubeで探せば見つかると思います)
あの番組の中で、YMOが音楽の世界に果たした功績をかいつまんで説明した部分を見て、ひっくり返りそうになった。音楽を数値化することで、沖縄民謡やニューオリンズのマーチングバンドのリズムを解釈し、意図的に生み出せることに成功した、というもの。
いわば、システムリズム学(番組ではそんなこと言ってませんが)だったのである! あれを見て、「僕がやっていることはカレー界のYMOなのかもしれない」と本気で思ったのだから、ノーテンキなもんだと我ながら思う。

ともかく、細かい例外があることは踏まえつつ、いったん横に置いて、ルール化、メソッド化することによって、本質をつかみやすくなるというのは音楽の世界にもカレーの世界にもありうるのだ、と思う。
『システムカレー学』では、ネパールやスリランカだけでなく、タイや欧風、中華風、和風のカレーについてもゴールデンルールの何をどうするとそのニュアンスが生みだせるのかをまとめている。そこが本書1章のハイライトだと個人的には思う。


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