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大きな背中【#伝説の安心感 #毎週ショートショートnote】

彼は弥次郎兵衛やじろべえのような人だった。

一緒にショッピングを楽しんでいても「あ、あの服おしゃれ!  待って、あれも良いな」とか、「ランチはパスタにしようかな。いや、中華も良いな」と、あっちへ行ったりこっちへ行ったり、少し目を離すとどこかに消えてしまい迷子になる。
彼曰く、私がどこかに行ってしまって探すのが大変なんだとか。

つまり、彼は極端にマイペースなのである。

だから一緒に外出するときは、必ず手を繋ぐようにしている。手を繋いでいれば、彼が勝手にどこかに行くことはない。

と過信していた。

彼は強引に私の手を振り切ってふらふらと何処へと消えていく。

こうなったら、最終手段にでるしかない。

私はとある場所に向かい、そこにいた人物に依頼した。

ピンポンパンポーン。

「ご来店中のお客様に、迷子のお知らせを致します。白いワンピースに赤い靴を履いた女の子がサービスカウンターでお連れ様をお待ちです」

そのアナウンスから数分後、彼は私のもとへと戻ってきた。そして私を背中に背負う。そこで寝てしまえば、私の勝ち。私の伝説的な安心感はここにある。


たらはかに(田原にか)様の企画に参加させていただきました。
伝説といえば英雄と連想してしまうイメージが強くて、なら身近な英雄って誰だろうって考えたら、今回の作品ができました。なかなか410字以内に収められないのがもどかしいです。


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