スクラム?ウォーターフォール?いやティールです
こんにちは。
Airitechでシステム構築部門を担当している中川です。
プロダクト開発のトレンドはアジャイルですよね。
先日とある案件で、アジャイル開発プロセスの一つであるスクラムを用いたプロダクト開発を進める機会があったのですが、
・ウォーターフォールで計画したスケジュールの半分でリリース
・2カ月で出たよい点、改善点、改善施策は合わせると100以上
など想像をしてなかった効果があり、驚きを隠せませんでした。
スクラムを適用がベストとは限らない
スクラムの適用により、チームが成長し、結果リリースが早くなるのは間違いないと感じています。
例えば以下のような、不確定要素が多い案件はスクラムを用いるメリットが大きいと思います。
・初期段階で要件がすべて決められず、必要最小限の機能を提供し
反応を見たいプロジェクト
・顧客や外的要因で開発優先度が変わりやすいプロジェクト
一方、すでに要件が明確で、変更可能性も少なければ、ウォータフォール適用のほうが低コストでリリースできると思います。
特にスクラムはチームビルディングにかかる準備コストが高く、何度もPDCAを回さないと十分なメリットが得られないと感じます。
スクラム?ウォーターフォール?いやティールです
スクラムの採用がしづらいプロジェクトでも、スクラムで感じたよい点はできるだけ取り込みたいところです。
特に開発プロセスによらない、チームビルディングに関する内容であれば、スクラム以外でも再現可能と思います。
そこで着目しているのがティール組織という概念です。
ティール組織は、フレデリック・ラルー氏にて提唱された組織論であり、日本語翻訳版が2018年1月に発売されています。
現代のピラミッド型組織から進化した組織という位置づけであり、
業態や人数によらず適用可能な考え方になります。
主に以下3点のブレイクスルーがあります。
・Self-management(自主経営)
チームが権限を持ち、仲間との関係性の中で動く
ミドルマネジメント層が不要
・Wholeness(全体性)
仕事において合理性だけでなく、精神的な部分も呼び起こし
自分をさらけ出して職場に来て仕事をする
・Evolutionary purpose(存在目的)
組織が将来どうなりたいかを見つけ、そこに向かい活動を行う
スクラムでのチームビルディングに着目すると、以下のような事柄が促進されており、上述のティール組織の特徴と似ています。
・開発チームが自発的に行動する
・心理的安全性を高め、何でも言えるようにする
・インセプションデッキ等を使い、プロダクトの目的を皆で合わせる
このことから、ティール組織を適用することで、スクラム以外でも、
チームビルディングに関して、同様のメリットを受けられるのではないか?といえます。
想像をしてなかった結果をもたらす
自社プロジェクトにおいて、ティール組織の特徴で述べられている中でも、まずは自主経営部分を主として取り組んでいますが、驚くべき結果が得られました。
・リーダの想像を超える価値を創り出す
とある運用上の課題について、SaaSサービスの機能を自発的に調べ、
それらを組み合わせた仕組みを創り、実際に運用に適用
・自ら仕事の幅を広げて仕事を引き受ける
周りで、手が足りないときに、自分が関係するプロジェクトでなくても、
自発的に手を挙げて、仕事を引き受ける
・自発的に解決策を探し提案
今まで提案等経験はなかったメンバが、チーム内で誰も使ったことのない
技術を調べ、新たに導入する提案を実施
取り組み以前でこのような結果は出せなかったことから、
チームビルディングを変えたことにより、各々が持つ本来の能力を生かす
土台ができ、このような結果を出すに至れたと思います。
では具体的には何を変えたのか?を紹介します。
「指示を出す」ことを捨てる
少し話が変わりますが、スクラムではPOから開発チームに対してお願いはできますが、指示はしません。
開発チームが、このスプリントではこの機能しか入れられない!と判断した場合、POは最大限尊重します。もしさらに機能が必要ならば、期間を延ばすか品質の妥協を行います。
ティール組織では、チームがすべての決定権を持ち、他に決定を覆すような権限を持つ人がいないことに特徴があります。チームの裁量にすべて任されています。
このように、チームに完全に裁量をゆだねることがセルフマネジメントの第一歩だと考えています。
もともと自分がかかわる案件では上司/部下というありふれた構造でした。
これをコーチとクリエイター(価値を生み出すということで)という役割に変更し、チームが裁量権を持つ形への移行を進めています。
この活動の最も重要な点は、コーチと書いた通り支援が役割であり、
指示を出すなどの決定を伴う行動を捨てることにあります。
※まだまだ始めたばかりなので、コーチ半分、上司半分ぐらいで活動しています(> <
指示を出すことは、マネージメントにおいて日常的に行っています。それを捨てるとなると途方に暮れてしまいそうですが、スクラムやティールについて調べ、チームや個人が主体的に考え進める方法として実践した内容を紹介します。
各々が自分で考えてOutputを決める
プロジェクトについて事前に情報を共有したうえで、
以下を各々で考えてもらい、進めています。
・どんなOutputが必要か?
・いつ誰に届けるのか
案件の全体の計画を立てる力があれば、全体の計画を立てるところから実施しています。
もし全体の計画を立てた経験がないのであれば、週単位の大雑把な計画はこちらで準備を行い、それを担当者にレビューしてもらい合意します。
そのあとのブレイクダウンから各々に任せる形となります。
検討してもらったOutput内容がプロジェクトで必要とされる内容に合致していると感じられれば、そのままGoです。
しかし、常にそのままGoを出せるわけでもありません。
検討してもらったOutputの内容やタイミングが想定よりも低い、遅い場合もあります。このような場合には、指示は出して変えるのではなく、なぜ低くなってしまったのか?を考え、解決のために行動しています。
足りない情報の共有と、届ける価値のイメージを議論
Outputが想定よりも低い内容になっている場合について、
話を聞いた結果、ほとんどの場合、以下3点に起因していました。
・判断を行うために必要な情報が足りない
・届けたい価値があいまい、もしくは深堀出来ていない
・経験やスキルが足りていない
情報が足りない場合は、本人に何があれば判断できるか聞いて、必要な情報のありかを伝えます。
何があればいいかも思いつかない場合は、コーチ側で必要と考える情報の場所を示したり、簡単なレクチャーなども行います。
届けたい価値があいまい、もしくは深堀出来ていない場合は、
一度立ち止まり、なぜこのプロジェクトをやるのかについて議論を行います。具体的には、以下を議論しています。
・ステークホルダーの洗い出し
・ステークホルダー毎に、届けたい価値は何かを議論
この議論では、匠メソッドの一部である、価値分析モデルの形式を応用させていただいています。
参考:匠Presentation 〜匠Methodを活用して価値あるプレゼンテーションを〜
価値分析モデルでは、ステークホルダー毎にどのようなうれしさがあるか、を形にするフレームワークです。
誰に何を届けるかが明確になり、必要な情報もそろった状態であれば、考えたOutputは、おのずと顧客が求めるレベルに到達した内容になります。
このように自分で決めたOutputであれば、責任も持ちやすく、結果自発的に作業の工夫などもしやすくなり、セルフマネジメントがしっかりと回っていきます。
最後に経験やスキルが足りない場合ですが、このような場合には上司/部下の関係に戻し、仕事を進めています。
可能なら仕事の途中からコーチ/クリエイターの関係に戻します。少なくとも、似た仕事を再度実施する際には、コーチ/クリエイターの関係となり再出発します。
定期的な振り返りを実施する
Outputの議論だけでは、プロセスの改善を行う場が作れません。
そこで、スクラムでの振り返りを実施しています。自分たちのチームでは、以下をトピックとして取り上げています。
・よかった点
・改善したいこと/Tryしたいこと
・具体的な施策
実施は週に一度金曜日の実施をしています。
約1か月程度継続実施していますが、約80件ほどの意見が出ていました。
改善やTryについても、どうやって対応するかは、コーチ側が決めるのではなく、クリエイター側より意見をだしてもらいます。
この時気を付けることは、今までと同様になりますが、改善策について指示につながる発言をしないことです。
改善策の候補を出すことはしますが、最終的な決定はクリエイター側にゆだね、ベストと考える解を選択してもらいます。
判断をゆだねることで、施策に対する責任を感じやすく、また実施していく中で、うまくいかなければ再度改善するというサイクルを回すことにも、つながります。
ティール組織の考え方でチームを活性化
このように、スクラムを適用できなかったとしても、
ティール組織の考え方をもとに、チームビルディングの方法を変えることで、想像していなかった様々な結果が得られることを紹介させていただきました。
スクラム適用ができないプロジェクトであったとしても、やれることはあると思います。皆さんの現場にも応用可能な、何かしらのヒントになれれば幸いです。
セルフマネジメントを歩み始めて見える課題
最後に、セルフマネジメントを進め、各々が自分で考えて価値を提供するようになると、次の課題が出てきます。自分の場合は以下のような事柄です。
・個人間の考え方の違いを尊重しつつ、皆で一体感をもつよい方法は何か
・チームの力を超えた価値を提供するにはどうすればいいか?
ティール組織では、存在目的に耳を傾ける習慣や全体性の実現により、このような課題に対応しています。
例えば、なぜ自分たちのチームが存在しているのか?を問いて、
聞こえる声に向かって進むなどですね。
次回ブログではこのようなセルフマネジメント以外についても、考え実践した内容を、報告したいと思っていますので、その際にはまた見ていただけると嬉しいです。
ではまた!
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