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はじめの一歩を踏み出すとき


何か新しいことを始める時、ちょっとだけ「よっこらしょ」が必要だ。

その「よっこらしょ」を声に出さずとも始められたことは、今でも好きで続けていることが多い。音楽もそうだ。

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2020年2月、ベルリン。自分の人生の中でも一番幸せを感じたコンサートがあった。ずっと追いかけ続けている大好きな音楽家たちと舞台に立ち、音楽を続けていて本当によかった、その気持ちを噛み締めながら演奏した。

もっともっと前へ進みたい。舞台に立つたびにそう思うけれど、この頃の私は、モチベーションがちょっと爆発気味だった。

もっともっと前に!


そのコンサートの約2週間後、私の住む国に外出規制が出た。

大学は立ち入り禁止になり、コンサートは無期限延期、劇場は閉まり、商店や飲食店も営業禁止となった。

COVID-19が生活にもたらした脅威は想像以上だった。

音楽家として舞台に立つ予定もしばらくない。先がどうなるのかも見えない。コンサートの予定がないと、やっぱり目標が霞む。練習はするけどなんだか物足りない毎日だ。外出規制だから、よっぽどでないと家から出ないし、毎日同じ人としか会わないし話さない。もちろん大きなお楽しみイベントも特にないので、何のワクワクもなく似たような毎日を過ごし、日々のつまらないがバケツいっぱいになって溢れそうだ。

何か新しいことを始めたいな。


そう思って、とりあえず文字を綴ることにしてみた。

誰に言われたわけでもなく、そうしたい気分になったから。

誰に言われたわけでもなく、太鼓を叩くことに憧れ演奏し始めた、中学生の頃のあの時と少し似ている。

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日本を離れたのは2013年の春。

すぐ帰るつもりでやって来たけれど、なんだかんだ7年、色々な出会いがあって、辛いことも嬉しいことも同じくらい沢山経験して、私はまだここにいる。

私が住んでいるオーストリアという国は、カンガルーがいる国と間違えられがちだけど、ヨーロッパにある小さな国で、首都は音楽の都ウィーン。ドイツ・イタリア・スイス・チェコ・ハンガリー・スロベニア・スロバキアと隣接している。そのオーストリアで、太鼓を叩いたりマリンバという大きな木琴を演奏したりして生活している。

日本を離れて暮らすなんて、ハタチになるまで想像したことがなかった。なにしろ日本を出るということは、外国語を話さなければいけない。中高生の頃、英語の授業がわからなさすぎて居眠りし椅子から転げ落ちたくらいには語学は苦手だ。だけど苦手を克服してでも来たい理由があった。

この国に、ずっと憧れている音楽家がいる。

こんなに長く居るつもりじゃなかったけれど、その背中を追いかけ続け、日本を飛び出し、オーストリアへやってきたのだ。

そして2020年2月、その音楽家と同じ舞台にたち、一緒に音楽を作ることができた。日本を離れて7年、夢がひとつ叶ったのだ。


何でこんな遠くの国にいるの?


太鼓を叩き始めた中学生の私が今の私を見たらびっくりして尋ねるだろう。

あなたが始めなければ、私は今ここにいませんよ。

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新しいことを始めるのはドキドキするけど、踏み出してみてほしい。

よっこらしょと、重い腰を上げて。


はじめの一歩は未来のワクワクに繋がる一歩だ。

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