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T9日本語入力の盲点

スマートフォンが普及する以前、携帯電話と言えば折り畳み式端末が主流でした。私は長くNEC製の携帯電話を使っていましたが、NECシリーズがヒットして以降、他社も次々と折り畳み式に切り替わり、小さな情報端末が少しずつ固定電話の受話器のフォルムに近付いていった不思議な時代でもありました。

NEC製の携帯電話における日本語入力は「T9入力」という方式が搭載されていました。wikipediaに掲載されていた概要をそのまま紹介致します。↓↓↓

T9は各キーに割り当てられている文字の頭文字を1回ずつ入力するだけで、あとに続く文字を含む単語に変換することができる。例えば「こんにちは」は「かわなたは」(一般的な日本の携帯電話では「20546」)と入力すると候補として表示される。いくつもの単語が予測できる場合、例えば「かあかあ」では「こうかい」、「けいかい」、「かいかい」、「こうこう」、「くうこう」などの候補が表示される。 
 
(wikipedia「T9」より)

さあなわださ。まらだアガがはざらたやあなカワザださやな。

↓↓↓

そうなんです。まるでアゴがはずれたようなカンジですよね。

ひとまず顎の関節の話は置いといて、実は先ほど紹介したwikipediaのT9入力の例題が、私がこれから紹介するエピソードを語る上で非常に都合が良く、とても感謝しています。

 

「かわなたは」→変換→「こんにちは」

ここまでは、先ほどの概要の通りです。

記事の冒頭で携帯電話の形状について話しましたが、折り畳み式端末の上半分はディスプレイ、下半分が入力デバイスとなっていて、文字入力は12個のボタンに全ての仮名とアルファベットが割り当てられるため、主に右下の「♯ボタン」が、濁点・半濁点と句読点の入力を兼用することになります。

メッセージで「こんにちは」と打つ時、基本的には「は」の後ろには「。」を付けます。従って、入力の操作イメージとしては「かわなたは。」となります。

ところが半濁点と句読点が同じボタンのため、先に「こんにちは」と変換を終えてから「。」を付ければ「こんにちは。」と正しく表示されるのですが、「かわなたは」を変換する前に「。」を押すと「は」+「。」で「ぱ」となってしまい、「かわなたぱ」と入力したことになるのです。

そして出てきた変換候補に、私は腰を抜かすことになります。

「訓子府」

「訓子府」は「くんねっぷ」と読み、北海道常呂郡訓子府町という町の地名です。

「かわなたぱ」に対応する変換候補が世界中どこを探してもこの一つしか無いため、携帯電話の入力画面には自動的に「訓子府」と表示されます。これはおそらく未だ誰も指摘したことのないT9入力の盲点です。

私は北海道生まれのため、率直に「くんねっぷだ!」と驚きましたが、他の地方にお住まいで訓子府の文字を初見で見た方は、そもそも何と言って驚けば良いのか、到底想像もつきません。

当時はNEC製の携帯電話のシェアが国内で最も高く、さらに「こんにちは」という言葉は英語でいう「Hello」のように、最も一般的に使われる挨拶にもかかわらず、私と同じような指摘を未だかつて一度も見聞きしたことがないのは何故でしょうか?

 

それはきっと…特に何の意味もないからです。

 

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