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巡り会う町

 縁日でなければ、平日の人混みはこんなものだろう。とげ抜き地蔵以外の目的で巣鴨の駅を降りたことがなかった由子には、今度も同じ道のりが待っていた。しかし、ひとつだけ今までと違うのは、とげを抜いてもらいたいのが自分ではなく、母であること。頼まれたわけではないが、母の代わりに下車したつもりだった。


 手術は確定しているが、小腸にある腫瘍がどこまで及んでいるのか、結果はあさって判るという。由子にとって、親はいつまでも生きてるものだと思っていたので、この不意打ちは衝撃だった。吉岡家をにわかに襲った「死の影」は、それが虚妄であると思いこむほど、由子の動悸は高まる。そのたびに、悪いシナリオに対する無防備ぶりを思い知らされて、腹が立ってくるのだ。
 でも、今は絶対明るい気持ちでいようと決めた。

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