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助六のプール (3)

 ん、あれは何だ? 銀色に光る小型飛行船……。遠くできらりと旋回するや、ものすごい勢いで迫ってきた。「危ない!」目を閉じた。……痛くない。片目をあけると、飛行船はプールを一周まわってまた突進してくる。「わあ!」助六のおどろいた顔に気づき、スピードを落として近づいてきた。魚だ。


 この形、図鑑見たことある。「お刺身だ……」「ん? マグロだよ」魚は∞の字に泳ぎを変えた。「ごめん、そうそうマグロ」助六は水から顔を出した。緊張のあまり、つい失礼なことを口走ってしまった。マグロは向こうへ行かず助六の周りを泳いでいる。
「でも助六くんと同い歳だから、子マグロなの」とぱくぱく言った。「クロールの練習してるんでしょ。大分うまくなってるよ」子マグロはゆっくりとはいえ、それでも泳ぎが速い。「こんなスピードでごめんね。ぼくは止まると死んでしまうんだ」


 子マグロを目で追いかけてたら目が回りそうになってきたので、助六は∞の真ん中あたりに向かって話すことにした。せっかく会えたんだ。子マグロにぜひ聞きたいこと、
「ねえ、息つぎってどうやったらうまくなるの?」うーん、子マグロはしばらく考えると、あっと目を輝かせた。
「助六くん、エラは持ってる?」助六は首を振る。
「そうかあ……」子マグロはとても残念そうに、「エラがあると楽なんだけどな」とその部分をぱたぱたした。質問が悪かったことに気づき、話題を変える。「じゃあ、バタ足はどうかな?」

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