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マッサージから初トリップ (5)

ホテルでの走川さんのマッサージを経験してから、私は人に触れてもらう事で、精神的に癒され、健康が改善され、波動が整っていくことを感じていた。

人に紹介されて、ある場所に行って、また、そこにいる人に紹介を受けたり、メッセージを受け取って、次の場所に行くという旅を続けていると、再度、紹介を受けて、走川さんのマッサージを紹介される偶然があった。

今度は彼女の自宅に出向いてマッサージを受ける事になり、小さな古民家を訪れた。

玄関先には大ぶりのガラス瓶がたくさん積み上がっており、瓶の中には宮古島の海岸で見かけるような美しい貝、異国から流れ着いた植物の種が圧倒的な量で置いてあり、彼女が自然と共に生きており、どんなものを大切にしているのかが手に取るように分かる美しい暮らしぶりが伺えた。

施術室になっている大きなベットがある和室に通されると、床の間が見える位置に小さなテーブルとゆったりと過ごせる椅子に腰掛けるようにそくされ、小さな器に入ったよく冷えた異国の香りのするお茶を飲むように言われた。和室の床の間にはインドの神々と思われる像や、チャクラが描かれた不思議な絵が飾られていた。しばらく縁側から見える景色を眺めて待っていると心が落ち着いてこの小さな彼女の世界に溶け込んで行くようだった。
それらの調度品と雰囲気に私は魅せられ、すっかりこの家を気に入ってしまった。

彼女の丁寧な芸術的なマッサージは何故か私を神聖な気持ちにさせていき、導入こそは彼女とたわいない話をしていたが、そのうち、目を閉じて黙り込み、体の上を動く様々な彼女の手技を観察していた。マッサージに慣れていくと、美しい家の無音の時間は色々なことを思い出させていた。外の世界に彼女を感じ、外にも意識を置きながら、私は自分の意識の奥深くの世界を観察していくようになった。

気がつくと、瞼の裏に色とりどりの光が見えている。私は外の世界を意識できているし、眠っている訳ではなかった。
目に見える範囲の外側から、有機的な何かが意識を持っているように様々に動いて、桜色になったり、青くなったり、モスグリーンになったり、様々な色が移り変わり、光り輝いて目の前で次々と形を変えて見えていた。

不意に、はっきりとある情景が見えた。
これはイメージを持って起きている時に情景を考えているのとは違う、
ありありとした動きとハッキリとした視界で見える。

海底から海面を見上げる自分の目線、
自然の光の中で驚くほど目に見える海底の有り様が美しく、
自然と同化したような自分の意識、
海の中の海藻が見えるが、その海藻自体が自分自身のような体験。

息が止まってしまったかのような恐ろしさに気がついて、
慌てて目を開き、マッサージを受けていた彼女の家の和室に意識が戻って来た。

意識して大げさに息をして、自分を確認するとやっと落ち着いて、
瞬間、息が止まっていた。。なんとも不思議な感覚。

彼女のマッサージが終わって、ホテルに戻る途中、
彼女のマッサージの素晴らしさもさることながら、
あの経験はなんだったのかと思いを巡らせながら車を走らせていた。

驚くほど疲れが取れていて、意識に均整が取れている。
無限のエネルギーが体から湧き出ているような、
これまでに体験したことの無いような出来事だった。

マッサージをした後にすぐ祝田さんに電話してくれたが都合が悪く会えないことがわかった。時間ができた私はホテルの近くにあるお気に入りの美しい浜辺を散歩していた。すっかり暗くなった空には細い細い上弦の月が出ており、私の後をいつまでもついて来ていた。行き止まりになっている道は、浜辺から突き出した小さな岬の突端に出て、座り良い形の岩があり、月を眺められる場所に座って穏やかな夜の海を眺めていた。旅の終わりを意識しながら、これまで島で出会った人々や自然を思い返していた。出産や子育て、夫との不仲で精神的な不調以上にめまいや帯状疱疹に悩まされていた東京での私は、この島に来て、自分らしく生きる人に触れて、来る前とは私の大きく意識は変わっていた。自然の中に意志、慈しみを感じ、霊的なことが私をもう一度生き返らせてくれたと感じた。水面に映る美しい月の光を眺めながら、「私を生き返らせてくれた霊的な導きや自然界への感謝に恩返しさせてください。私の身体をどうかあなたの為に使ってください。」涙を流しながら強い思いが込み上げて来ていた。

突然、携帯電話が鳴って知らない番号からの電話に恐る恐る出ると、それは祝田さんであった。

今日は会えないと決まって、海にきていたが、急に予定が空いて会えるようになったから、今から来れるか?という電話だった。もちろんと言うことで、私は電話口で聞いた道順を、記憶を辿りながら、夜道を運転して祝田さんの家に向かっていた。

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