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くせ毛をちょっと好きになった話。
わたしはくせ毛だ。
どんなに丁寧に乾かしてアイロンで伸ばしても、雨が降れば台無し。
どうせうねるとわかっていても、辞められないヘアアイロン。
熱で痛めつけた腹いせか、あっちへはねて、こっちへはねて。
周りの目を気にするわたしを横目に、そんなこと気にするなと自由気ままにうねる髪。
雑誌に載っている「くせ毛風パーマ」に反感を覚え、
くせ毛が真っ直ぐになると謳う商品に裏切られ、
なけなしのお小遣いを縮毛矯正に注ぎ込む。
「え〜、クルクルしてて可愛いじゃん」
言ったな?
じゃあ、この髪になりたいか?
いくらでもくれてやる。
ストレート至上主義の中高時代が過ぎて、
大学生になると周りはカラーやパーマをするようになった。
わざわざお金を払ってクルクルにしている人の気が知れなかったが、
クルクルが増えてくれたおかげで、私のくせ毛も少しは誤魔化せるような気がした。
そんなくせ毛な私にも彼氏ができた。
たまに髪を乾かしてくれる。
20数年共にしてきた私でも、この髪の扱いには困る。
ぽっと出の彼に扱える訳がない。
彼は完成形をイメージするかのように、お風呂上がりの私の髪を綺麗に梳かす。そーっと乾かせば真っ直ぐのままでしょと、俺なら上手く乾かせると自信があるようだ。
甘い。想像力が足りない。
なんせ彼は直毛だ、無理もない。
彼がどんなに丁重に扱っても、私の髪はちゃんと爆発する。
「あ〜、広がっちゃった」
「ふふ」
毎回そう嘆く彼に、どうだ私のくせ毛はすごいだろと誇らしく思えてくる。
付き合いはじめの頃は彼がお風呂に入っている間に、隠れてアイロンをするなどという可愛いことをしていた。今はしていない。
髪を綺麗にセットしたときは新木優子みたいと笑ってくれるし、
くせ毛が爆発してる時はハーマイオニーみたいと笑ってくれる。
笑われているわけではないと信じたい。
彼が大事そうに扱ってくれるから、前ほど自分のくせ毛が気にならなくなった。うねるし、爆発することには変わりないけど、まあいっかと思えるようになった。
ちょっとだけ自分のくせ毛を好きになった。
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