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主のいないマンション

デスクから見える、地方都市にしては高いマンション。
地元のうわさで、有名人が上の方の階を購入したと聞いた。けれどその人は亡くなってしまった。あのマンションに来たのは数回だろうか。

主を失った部屋の静けさ。
その部屋に出入りする残された人々は故人を想って悲しむのだろう。

その部屋には主がいたかもしれないが、そもそも、この世界は誰の者でもないはずである。家具も建物も、主でさえも、地球や宇宙の時間軸で見ればすべて一瞬の出来事。すべては一過性にすぎない。私たちはその中で、他者と関りを持ち、目の前のことと向き合って生きる。必死で何かをしていても、ぼーっとしていても、画面の中の世界と向き合っても、そこで生きる、という他は何もない。生きるということを続けるだけだ。


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