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#7 女二人のコスタリカ 1 / 旅の準備

2年前の今日12月19日、私はコスタリカの路上、水着姿でバスを待っていた。

冬のバカンス

二日前にA Film About Coffeeという映画を観た話を書いたら、コスタリカのことを思い出した。コスタリカはコーヒーの産地の1つだ。そしてコスタリカは、私が2年前の冬休みに旅した国なのだ。そんなわけで、私の思考はコーヒーからコスタリカに流れ着いた。

2年前はカナダのオタワで働いていた。私は大学院生の時にモントリオールに留学していたことがあり、その縁でモントリオールに友人が多い。それで、モントリオールに住む友人と女二人旅を企画した。行き先はマチュピチュとかウユニ塩湖とかあれこれ夢が膨らんだが、最終的に予算と魅力の総合点でコスタリカに白羽の矢が立った。

私の旅支度

海外で見知らぬ土地に行く時は、現地の歴史や文学から入るのが常である私は、早速コスタリカ関連情報をその方面から集め始めた。めぼしいコスタリカ文学はなく、見つけたのは開高健の『オーパ!オーパ!アラスカ至上篇、コスタリカ篇』という釣りエッセイだけだった。開高健なのは洒落込んでて気分に合っていた。だが釣りは興味がもてなかった。Amazonで逆輸入して読んだものの、全くおもしろくなくて内容は心に残らなかった。

その次に見つけたのは、『コスタリカの奇跡』というドキュメンタリー映画だった。サイトをいくつか眺めると、「1948年に軍隊を廃止。軍事予算を社会福祉に充て、国民の幸福度を最大化する道を選んだコスタリカの奇跡に迫ったドキュメンタリー」などと書いてある。いいじゃん。最高だ。私の好みにぴったりだ(私は社会科学を愛している)。カナダで視聴する方法をあれこれ探したけど見つからなかったので、結局アマゾンジャパンで買える日本語字幕付きのDVDを逆輸入した。

この映画は私の気にいるところとなった。コスタリカについて多くを学んだ。何しろ、コスタリカについて私は何1つ知らなかったのだから当然だ。あまりに気に入ったので、スーツケースに入れてコスタリカまで持って行った。そして旅行中、女二人で夜な夜な一緒に視聴した。コスタリカのB&Bで、コスタリカについての映画を。

そうそう、写真の水着も真冬のオタワで買った。カナダでは、冬のバカンスは中南米、特に中米と相場がきまっている。みんな「今年はキューバかメキシコか」なんて話してる。彼らの旅先は最北端でカリフォルニアといって良い。彼らは半年もの長い間、極寒の地に閉じ込められている。だから太陽の熱が恋しくなるらしい。避暑ならぬ避寒の心だ。つまり何が言いたいのかというと、カナダでは水着は真冬にこそ売れる。それで私は12月に水着を買えたのだ。

こうして私は、氷雪のオタワで常夏のコスタリカに想いを馳せながら、着々と旅支度をしていった。思えば、当時の職場は、日本の行政機関のくせに長期休暇を取りやすかった。在外機関の開放感だろうか。兎にも角にも、8泊9日のコスタリカ女二人旅を敢行した。

そして来る出発の朝。たしか気温は-8℃、体感温度は-15℃くらいだったと思う。旅先で最も不要となる重たいカナダグースを羽織って、友人とモントリオール空港で落ち合った。人間的気温の世界へいざゆかん。

ここに私たち二人の珍旅行が始まった。

(つづく。たぶん)

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