『正欲』と「強制的性愛」
内容を正確に思い出せなくとも「読んだ」ことを決して忘れない本がある。続きが気になって貪るように読んだ本、見落としていた気持ちに光を当ててくれた本。そのような本に出会った興奮は日を跨いでも続き、何回も反芻することによって自分の思考の一部となっていく。
朝井リョウの『正欲』は、私が先を急ぐように読み進めた本の一つである。この本は半年以上前に読み、それ以来再読していない。しかし、強く心が動いたことは鮮明に覚えている。普段から漠然と考えていたこと、私が他人から「理解されることはない