エル

くすぐりが好きな大学生。

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最近の記事

『正欲』と「強制的性愛」

内容を正確に思い出せなくとも「読んだ」ことを決して忘れない本がある。続きが気になって貪るように読んだ本、見落としていた気持ちに光を当ててくれた本。そのような本に出会った興奮は日を跨いでも続き、何回も反芻することによって自分の思考の一部となっていく。 朝井リョウの『正欲』は、私が先を急ぐように読み進めた本の一つである。この本は半年以上前に読み、それ以来再読していない。しかし、強く心が動いたことは鮮明に覚えている。普段から漠然と考えていたこと、私が他人から「理解されることはない

    • 妄想によるカタルシス/ごめんなさいの効用

      つらいときや寂しいときには妄想(空想)の世界に逃げ込みたくなる。空想はマゾヒズムの一つの側面でもあり、つらい気持ちに蓋をしてカタルシスへと誘い、現実から目を逸らすのを助けてくれる。 ある夜のことである。私はいじめられる妄想に耽っており「ごめんなさい」すると気持ちよくなれることに気付いてしまった。この記事では、なぜ「ごめんなさい」すると気持ちよくなれるのか、簡単に考えてみたいと思う。 私の日常的な妄想いじめられる妄想 妄想にもいろいろあるが、私はいじめられる妄想をすること

      • 読書感想文/遠藤周作『月光のドミナ』

        人間の欲望には際限がない。たとえ満たされることが無くとも欲望は生まれ、理想に近づきたいと感じてしまう。千曲は、一人の女性の幻影を追い求め続ける。彼女から頬を殴られたときの悦び、足元に倒されたときの悦びが忘れられない。もう一度、苦痛と凌辱を味わいたい。そのような暗い欲望を抱えながら千曲は孤独な生活を送り、堕落していく。 彼は人間嫌いの変人として軽蔑され、人との関わりは希薄であった。しかし、好き好んで孤立していたわけではない。女性に対して性的な感情を抱けないことを引け目に感じ、

        • くすぐりプレイとマゾヒズム/ドゥルーズ『ザッヘル=マゾッホ紹介』から学ぶ【2】

          マゾヒズムを受動的なものと捉える人は多いが、実は能動的な側面もある。マゾヒストは快の実現のため、ユーモアのある方法で他者に働きかけているからである。これは、くすぐりプレイにおいても同様と思われる。 前回の記事(以下のリンク)では、サディズムとマゾヒズムの違いについて検討した。その結果、サディズムとマゾヒズムが裏返しの関係とは言えないことが分かった。今回は、より詳細にマゾヒズムの特徴を抽出し、くすぐりプレイ、さらには「ぐら」さんへの理解を深めたい。 今回も、ドゥルーズ『ザッ

        『正欲』と「強制的性愛」

        • 妄想によるカタルシス/ごめんなさいの効用

        • 読書感想文/遠藤周作『月光のドミナ』

        • くすぐりプレイとマゾヒズム/ドゥルーズ『ザッヘル=マゾッホ紹介』から学ぶ【2】

          サディズム・マゾヒズムとは何か?/ドゥルーズ『ザッヘル=マゾッホ紹介』から学ぶ【1】

          最近では、SやMという言葉が日常的に使われる。虐められて喜ぶ人はM、虐めて楽しむ人はS、というように漠然とSMは区別される。その一方で、Mを「変態」として扱う社会通念もあるように感じる。では、SとMの本質的な違いは何だろうか? 今回は、ドゥルーズによる『ザッヘル=マゾッホ紹介』をテキストとして、サディズム・マゾヒズムの特徴を簡単にまとめる。SMについて学ぶことで、くすぐりにおける「ぐり」や「ぐら」を深く理解するための一助としたい。 テキストの紹介河出文庫『ザッヘル=マゾッ

          サディズム・マゾヒズムとは何か?/ドゥルーズ『ザッヘル=マゾッホ紹介』から学ぶ【1】