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嫌われる勇気

※普段はトルネコ3を中心にYouTubeでゲーム配信しており、その関連の記事を書いていますが、普段読んでいる本の感想やまとめを、自分自身のフィードバックも兼ねて時々書きます。

昨年末に買って、昨年中に読み切る予定が結局終わらず、新年すぐに読み切った本。

嫌われる勇気(自己啓発の源流「アドラー」の教え)
著・岸見一郎 古賀史健
ダイヤモンド社
2013年12月12日

青い

混迷する世界を照らす導きの星!
「人はいま、この瞬間から幸せになることができる」

上記が帯(等)の文章。

色々本は読んでいるが、これまでアドラー心理学系の本は読んでいなかったので、年末年始でせっかくだから読もうと思い購入するに至った。本当は漫画版の簡単なものから始めようと考えていたが、買いに行った本屋さんには無かったのでこの本を選ぶことになった。

正直中々いい本に出合えたと思う。長い導入になったが、早速内容に触れていく。


1.概要

本作品の目次前に書いてあるが、
「どうすれば人は幸せに生きることができるか」という哲学的な問いに、アドラー心理学がシンプルかつ具体的に答えを提示していく内容である。

この本では、迷える青年の人生における問いかけに、アドラー心理学を熟知した哲人が答えていく、対話篇の形式となっている。

青年は、現代の若者として、本を読んでいる一般的な人々の視点。誰もが持ちうる、疑問や悩み、苦しみを哲人にぶつけていく。
哲人は、アドラー、時々ソクラテスなどの哲学者の視点。青年の問いかけやぶつけられる感情にも、ゆったりと回答していく。

第一夜"トラウマを否定せよ"
から始まり、
第五夜"「いま、ここ」を真剣に生きる"
で終わる。

2.特筆すべき内容

いくつか挙げたいと思う。

・トラウマは、存在しない

青年が、「誰にでもトラウマがあり、様々な原因によりそのトラウマが生じている」ことを哲人に話している。
しかし、哲人は「トラウマは存在しない」と断言する。

常識的ではない文章が出てくると、引き込まれがちだが、多分読んでいて一番最初にここら辺が(良い意味で)引っかかったと思う。
これはどういうことか、端的な具体例ならば、

「赤面症だから、好きな人に話せない」のではなく、
「好きな人に話せない理由を作るために、赤面症という理由を持ち出す」

といったことである。
これが真とすれば、赤面症にアプローチするのではなく、自分自身に正しく向かい合うべきだと言っている。

この話だが、仮にカウンセラーが赤面症を正しく治療できたとしても、「好きな人に話しかけない別の理由」を作ってしまうとのこと。

なお、赤面症に限らず、「~ができたら~なのに」といった状況は全てこのパターンである。

おそらく自分も少なからず、このことは当てはまると思う。

では、どのように考えれば、このパターンから抜け出せるのか?(次項をお読みいただきたい)

・目的論

過去の原因から、物事を捉える考え方を「原因論」と言い、
アドラーはこの考え方を否定しており、「目的論」を提唱している。

目的論とは、
「これまでの人生になにがあったとしても、今後の人生をどう生きるかについてなんの影響もない」
という考え方である。

確かに、過去の嫌な出来事から逆算せずに、フレッシュな今を起点に物事を捉えれば、むしろ楽観的に考えられることは多いかもしれない。

あまりこういう脱線はしたくないのだが、個人的にも尊敬しているので、池江璃花子選手の話を。

池江選手は競泳で金メダルを取るほどの実力を持つ選手だ。

白血病を患い、復帰は無理だと一時期話題になっていたが、入院後に無事回復し、再び競技を行っている。

松岡修造さんとの対談の際に、

「病気になってよかったとかは一ミリも思わないんですけど、病気になって学んだことが多いから、1回でもそういう経験をして、自分が今どういう立場でどういう気持ちで生きていくべきかっていうのを考えさせられたので、自分の人生にとって、すごく大きなターニングポイントにもなるんじゃないかなって思います」

と語っていたのを良く覚えている。

こんなに前向きに物事を捉えて昇華させるのは、原因論ではなく目的論の考え方と言えるのではないだろうか。
人生を何周すればこの言葉が自然と出てくるのだろうか。

自分自身は、池江選手本人じゃないし、ましてやトップアスリートでもないので、その気持ちは到底分かりえないと思っている。
「こんなに苦しいことがあったからこそ頑張ってほしい」という声援を送る矮小な自身にはっとする。
「過去がどうであれ彼女らしく楽しく頑張ってほしい」という方がしっくり来るであろう。
(自身は安直な応援を嫌っている節がある、おそらくニーチェの思想に染まっている)

朗らかでありながらも非常に強い人間であり、ますます尊敬するきっかけとなったインタビューだった。

・すべての悩みは「対人関係の悩み」である

アドラー曰く、
「この世界から対人関係がなくなってしまえば、それこそ宇宙のなかにただひとりで、他者がいなくなってしまえば、あらゆる悩みも消え去ってしまう」とのこと。

大きく出た文章という印象を受ける。作中では、青年が哲人の回答に時折、感情を爆発させているが、哲人がこのことを伝えた際にもそのような記述だった。

哲人は身長が低く、そのことを一時期コンプレックスに捉えていた。少しでも背が高ければ、楽しい人生だろうにと思い悩んでいた。
しかし、このことを友人に相談したところ、
「くだらない」と言われてしまう。

続けて、その友人は、
「大きくなってどうする?お前には人をくつろがせる才能がある」と言う。

つまり、友人は、背が低いことに、相手の警戒心を解いてくれる優位性があるということを言ってくれた。

事実はAでも、自身の解釈はBでも良いのである。
意味付けや価値を自分で与えることが重要なのである。

我々が抱える悩みは、全て社会や他者との関係に基づいている、すなわちそこから離れて自身だけで考えれば良いのである。
(この部分について、少々言葉が雑かもしれない、アドラーは決して自己中心的であれば良いとは言っていないので注意。全文を読めば本意が分かる。)

この話は、主観と客観の話にも通じる非常に面白い部分である。


・他者の課題を切り捨てよ

「自分を変えることができるのは、自分しかいない」

当たり前のことだが、誰もがそう考えられないことでもある。周囲の環境のせいにしたり、最近は「親ガチャ」といった言葉も出てきて世も末に思う。

この言葉は自分から自分のみに当てはまるのではなく、他者においてもそのまま当てはまる。

介入を是としないのは、あまりにも無慈悲では?といった疑問が上がりそうだが、介入をしてはいけない。
介入がどういった結果をもたらすのか、よく考えるべきだ、といっている。

内容には、子どもに「勉強しなさい」と諭してはいけないというやりとりがある。
「勉強しない」選択をして、その決断により、授業についていけない、希望の学校に入れないといった結果を引き受けるのは子ども自身である。
「勉強しなさい」と声をかけるのは、「子どものため」ではなく、「親のため」つまり親のエゴに繋がってしまう。

では、この場合どうすればいいのか?
介入ではなく「援助」をする用意があることを伝えておく。

一緒に勉強してあげてもいいし、参考書を買ってあげてもいい、縦ではなく横の目線で声援をかけても良いだろう。

勉強したいが、集中できないならば、一緒にその理由を考える方が、重要で大切だが、とかく忘れられがちな気がする。

しかし、これらも、子ども(他者)が気づいて、その声を発する必要がある。
「勇気」をもって、相手を信頼する必要がある。
他者には介入してはいけない。


・人はいま、この瞬間から幸せになることができる

「嫌われる勇気」とは、他者の評価を気にせず自由になる勇気である。この勇気を持つことができれば人は自分の生き方を貫くことができる。

他者の評価を気にしない、というのは少々難しい内容だが、
相手がどう思うかを気にせずに、主体的に行動できればよい。
ただし、自己中心的であってはならない。そうではなく、誰かの役に立っているという「貢献感」を持つことが重要である。

仕事は、褒められるから、評価されるから、という視点で行ってはならない考え方がある。
自分がしたいから、やりたいから、貢献したいから、それ以上進むと偽善になってしまう恐れがある。
(あくまで視点の一つとしてご理解いただきたい)

頭では分かっていても、どこか期待してしまうかもしれない。中々難しい。
結果にこだわらず過程も楽しむ、といった視点が貢献につながるかもしれない。
過程の一つ一つを味わい、その瞬間を集中して大切にしていく、そうすれば不要な情報が気にならず、ありのままの自分で、幸せにいられるであろう。

本著でも、ダンスをするように生きる、といった内容の項があり、読みながら心が朗らかになった。

「人はいま、この瞬間から幸せになることができる」

仰々しい、と受け取る人もいるだろう。
しかし、アドラーは、きっとそうであることを信じていると思うし、私もそうでありたい。

3.まとめ

「嫌われる勇気」についてフィードバック等書いてみた。

主体的に生きる、ダンスをするように生きる、承認欲求を捨てる、といったことは、他の本でも痛いほど繰り返し頭に入っている内容だが、現代に出版された書籍ならば、部分的にアドラー心理学が応用されていると思われる。

原因論、全ての悩みが対人関係に依るものである、トラウマは存在しない、といった内容は新鮮であった。
悲しいから泣く、ではなく、泣くから悲しいなどの話は知っていたが、ルーツや活用、バックグラウンドまで広く理解できたと思われる。

もし、興味が湧いたなら、ぜひ一読してみることをおすすめする。
特に、"悩みがあると思っている"方は、改めて自分を見つめ直すきっかけにしていただきたい。

自身も、続作の「幸せになる勇気」をまだ読んでいないので、そのうち読んでみようと思う。

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