護られなかった者たちへ を読んで
記録のための感想文。ネタバレあり。
映画化もされ、話題になった作品、護られなかった者たちへ。
震災後の宮城県が舞台で連続殺人事件を解決するお話。
殺害方法は餓死という残酷な手口で、犯人は相当な怨みが見えるがなかなか動機や犯人像が見えてこない。
しかも始め被害者は非の打ち所がない人格者であるように描かれている。
この作品の大きなテーマは生活保護だと思う。
私は仕事柄、生保受給者と接することがあったので、勝手に申請すればすぐに通るものだと思い込んでいた。
しかし、この作品によると簡単に通るものではないようで、沢山の難しい書類、つまりお金がないことを示す悪魔の証明のようなことをしなければならないと知った。
生保にも予算があるので、厳しくルールも決められており、必要な人に渡らないこともあると知った。
作中では、生保を受けられなかったことで餓死してしまった遠島けいという人物がいて、その恨みを晴らすための犯行だったが、本当に現実にそんなことがあるのだろうかとびっくりした。
法律で国民は健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有すると明記されているにも関わらず、それが守られていないこと、しかもその制度が声を上げた強い者が怖いからと優先され、本当に必要な人に行き渡らないという許しがたいことが起きている。
護られなかった者を目の前にして助けられなかった悔しさ哀しさは想像を絶するだろうと思った。
被害者は、窓口の利用者からすると全く善人ではなく、悪魔のように見えているのも興味深かった。
確かに、片方からみたら味方の人は他方から見ると敵に見えてしまう。
でも護られない者がいるのはこの人たちのせいでも誰のせいでもない。そこがまた辛い。
また、犯人はずーっと利根だと思い込んでいて、まさか違うとは思ってなかったので直前でびっくり。
けいが亡くなった家の前に見覚えのある車があることをわかってもぴんとこず。
円山という文字を見てえっ!!となった。
丁寧な仕事をした福祉の人の鏡のように描かれていたので全く私の容疑者リストになかった。
たまたまとはいえ、福祉保険事務所に勤めて職務を全うしている姿を改めて読み返すと本当に切ない。
この護られない者たちがいるという現実は、日本の限界なのかもしれない。
声を上げる方法もなく悲しむ人が1人でも減りますように。
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