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浅草x認知症のお話

こんにちは。株式会社Aikomiの加藤潤一です。

前回は私が起業するまでの経緯についてお話しました。


今回からは、前回の「パーソナルソング」のように、認知症の方に適したコンテンツを提供することで認知症の方に変化を生み出した、そんな事例を紹介していきます。

我々の拠点は横浜ですが、神戸の介護施設様ともつながりがあります。今回紹介するのはそこで実際に体験したお話です。

神戸の介護施設でお会いしたのは、80歳代の女性の方でした。

「普段は落ち着きがなくて、介護職員や他の利用者に怒ったり悪口を言うなど周りと協調性が取れず、なかなか関係性を持つことに苦労しています。」私にその女性を紹介してくれた介護職員の方は、最初に普段の様子を説明してくれました。

確かに私と会うなり、その女性は施設や周りの職員の方々への不満を訴え始めました。認知症も進んでいるようで話の内容はつじつまが合いません。取り敢えずその方には座って頂き、”ご本人の人生史”に基づく写真や動画からなるプログラムを見てもらいました。見せる内容やその方法には弊社のノウハウがあるのですが、それはまたの機会に。

最初は怪訝そうだったその女性も、プログラムが始まると急に集中し始めました。その変化は介護職員の方も驚くものでした。

プログラムが進むにつれ、その中の写真や動画について、ぽつりぽつりと自ら話し始めます。そして浅草の雷門の画像を見始めるとこんな風に話し始めました。

「あぁ、雷門ね。」

「今の浅草も変わってないのでしょうね。」

「私は浅草の近くに住んでいたからね。仲見世のすぐ傍だわ。」

「懐かしいなぁ。早く帰りたい。」

この間私からは「これは何ですか?」「これ雷門ですね、浅草行ったことありますか?」等の発言を誘導する言葉を一切かけていません。まさに、この方の思い出が自然に呼び起こされた瞬間でした。

「パーソナルソング」では好きな音楽が思い出をよみがえらす一方で、今回はたった数枚の何気ない、だけどこの女性にとってはとても大切な浅草の写真によって、この女性の想い出がよみがえった事例でした。

この後15分程度でプログラムは終了し、時間を作ってくださったお礼を言って、私は介護施設を後にしました。

次の日、その女性を紹介してくれた介護職員の方から連絡を受けた内容は驚くべきものでした。

プログラム後、共同ルームに戻った女性と接した他の施設利用者や介護士が一様に、”なぜ今日は怒っていないのか”と不思議がっていたと。そして、その日一日機嫌よく過ごされたとのこと。

今回のプログラムはいわゆる回想法と呼ばれる手法に近いものですが、その方にピッタリの内容だったからこそ、こういった変化を引き起こすことが出来たのかもしれません。

ただ残念なことに翌日には元に戻られたという事でした。認知症という特性上、短期記憶の保持が難しいためだと考えています。

数分間のプログラムを体験してもらう。そんなちょっとのことで認知症の方に変化を引き起こすことができる可能性を体験しました。映画の中だけの話ではなかったのです。

次回は、また別の方の事例をご紹介します。








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