ヨーロッパ旅の記録〜ベルギーの旅5
"2017年7月24日〜9月18日まで ヨーロッパ8カ国を旅した記録"
8月19日
Danielは昨夜アフリカ街で見たジャケットがやはり気になったようで、もう一度あの店に行くから付き合ってくれないかと言う。そう言うと思っていた。
ジャケットはまだ売れずにあった。(当たり前だ。誰も買わないだろう。)
少しの直しが必要なようだったが、本人は相当気に入ったらしく、購入した。私がとても似合うと言ったら嬉しそうだった。本当によく似合っていた。
Morellos Flea Marketというブリュッセルで有名なフリーマーケットに連れて行ってもらう。彼はジャケットを直すため、服の修理屋さんへ行っている間、私は一人でフリーマーケットを見ることにした。Danielが、「何か欲しいものがあったら買わずに自分が戻ってくるのを待つように。観光客はぼったくられるから。」と言っていた。
食器や本や絵画や雑貨やガラクタまで、いろいろあって見るのは楽しかったが、欲しいものは特になかった。
マーケットのすぐ近くのカフェでランチをとる。ベルギーでポピュラーな、トーストしたバゲッドの上にパテやチーズが乗っていて、ナイフとフォークで食べる、名前を何と言ったか。食事も人も、堅苦しくなく、かと言って素っ気なくもない、フランクな感じがブリュッセルのいいところだ。
ランチをしているとき、スコールのような急な雨があった。マーケットの人たちは大慌てで商品をしまっていた。私たちは濡れずに運が良かった。
8月20日
Daniel、Sabrinaと出かける。朝、礼拝中のアフリカ系の人たちが集まる教会を覗いてみた。パイプオルガンが響き渡っていた。Danielと、「real musicだね」と話す。ヨーロッパの教会でオルガンの音を聴くとき、私には非日常的な異文化を味わうのに十分なシチュエーションである。
1958年の万博のときのモニュメントAtomiumを見に行く。DanielとSabrinaがピクニックの用意をしてくれて、シートを敷いて簡単なサンドイッチをみんなで食べる。こういう過ごし方を東京でしたことがなかった。ヨーロッパにいると、こういう小さなことに感激する。ブリュッセルの夏は短い。夏でも曇っていることが多いが、精一杯の夏をこうして外で過ごし楽しむ。仲間が一緒なことはさらに嬉しい。
ADAMデザインエキシビジョンを観る。サブリナはインテリアデザイナーなので、展示中の工業デザインについていろいろと教えてくれた。Sabrinaはイタリア人らしく本当によく喋る。 Danielがときどき「少し黙って」と冗談ぽく言うのが可笑しかった。年齢も生まれた場所も全く違う二人が、家をシェアする家族として一緒にいることは不思議なようだ。
夕食はDanielと二人でフリット(ブリュッセルの名物のフレンチフライ)を食べに行く。ここで事件勃発。自転車で行こうということになってDanielに自転車を借りたのだが、サドルをまたごうとしたら足が届かず、そのまま横転し、左手首を地面に打ってしまった。月末に行うフィンランドのコンサートのことが頭をよぎった。もしもピアノが弾けなかったら。
幸い軽い捻挫で済んだが、自分の運動神経の無さを改めて実感した。
自転車はやめて歩いて行くことにした。Danielオススメの店のフリットは、揚げたてのポテトに好きなソースをトッピングしてくれる。マヨネーズやマスタードやタルタルソースなど種類が豊富だ。とても量が多いが、油がしつこくなく、美味しかった。ベルギービールとも合う。
今夜はブリュッセルで過ごす最後の夜だ。Danielとビールを飲みながらいろんな話をした。私は英語が全然できないが、こういうときは不思議と心が通じ合って正直な話ができる。ヨーロッパで過ごした美しい瞬間のひとつだった。
Danielはこの一週間毎日私に付き合ってくれた。放っておかず、面白いものをたくさん見せてくれた。面白いことを言ってたくさん笑わせてくれた。嬉しくて、何度も涙が出た。本当に楽しい一週間だった。
また、別れのときが来る。
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