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【道場規約】ハラスメント行為の禁止

(1)ハラスメント行為の禁止


① この規約を定めた理由

当会では、「道場規約」のひとつとして、「道場でのあらゆるハラスメント⾏為を禁ずる」ことを掲げています(概要規約 - No.5)。

私がこの規約を定めた理由は、端的に言えば、職場でのハラスメント騒動に私自身が「当事者」として巻き込まれ、非常に嫌な思いをしたことに由来します。

この体験から私が学んだのは、次のようなことでした。

  • ハラスメントは「小さな組織」で起こりやすい

  • ひとたび「ハラスメント」が起きれば、「小さな組織」にとっては命取りになる

合気道の「道場」は「職場」ではなく、「趣味の場」(合気道に興味のある人が集う場所)です。ですが、「職場」も「趣味の場」も、「一定の目的のために人が集まる組織」であることに違いはありません。

せっかく合気道に興味を持って当会に通ってくださる方が、ハラスメント行為によって嫌な思いを味わい、稽古に通えなくなる事態は絶対に避けたい。。

この規約には、私のこうした願いが込められています。

②「ハラスメントの防止」は、「掲げる」ことが大切

他者に対して「嫌な思い・苦痛」を感じさせる言動が「ハラスメント」と定義されます。

【ハラスメント】
[harassment=悩ませること] 何らかの方法で当人に苦痛を与えるようなことをすること。また、その苦痛。

新明解国語辞典(第八版)

「嫌な思い・苦痛」を感じる言動の「基準(種類・程度)」は、個人によって異なります。ある種の言動(例えば「下ネタ」)が、ある人には「嫌悪」に感じられても、別のある人にとっては「平気」であるような場合はたくさんあります。というか、この「基準」がピタリと一致することはあり得ません。

「基準」が存在しないからこそ、人が集まる場所では「嫌な思い」を味わう人が必ず生まれます。当事者間の「嫌な思い・苦痛」に対する「基準」が大きく異なるときに「ハラスメント」が発生する、と言えそうです(小さな「基準」のズレは常に起きていますが、それは「違和感」として認識されても、すぐに立ち消えます)。

明確な「基準」が存在しないからといって、「ハラスメント」の発生防止を、個人の価値観やモラルという「曖昧なものに」頼ることはできません(上述の通り、価値観やモラルは、個人によって異なるからです)。

だからこそ、組織として(特にリーダーが)、「ハラスメントの防止」を方針として掲げる必要があるのです。

「道場内では、お互いに和を尊び、明るくのびのびと稽古に励むこと」

合気道至心会(内規3-道場心得・其の4)

ひとりでも多くの会員が「明るくのびのびと」稽古ができる場にするためにも、当会で稽古をする皆さんには、「ハラスメントの防止」を意識していただきたいと思っています。

少なくとも、「明るくのびのびと」合気道を稽古する「道場」には、「セクハラ」も「モラハラ」も(その他のあらゆる「〇〇ハラ」も)、全く必要ないことは断言できます

③ 当会「道場規約」のポイント

当会の「道場規約」のうち、ポイントとなるのは次の3項目です(概要規約は全部で7項目)。なお、3つ目(No.5)の「ハラスメント行為の禁止」については先述の通りです。

●No.3:道場では思想信条の⾃由が保障される。また、稽古は宗教的でなく哲学的に⾏うことを原則とする

●No.4:ただし、特定の宗教・思想・商品等の布教・普及・勧誘等を⽬的とした⼊会や、入会後のこれらに該当する行為は禁ずる

●No.5:道場でのあらゆるハラスメント⾏為を禁ずる

合気道至心会(内規1-道場規約)

「(No.3)稽古は宗教的でなく哲学的に行う」というのは、私の師匠である多田先生(合気会本部師範, 合気道九段)の稽古方針です。先生は1964年に単身イタリアへ渡り、同国、そしてヨーロッパにおける合気道の普及に尽力されました。

「稽古は宗教的でなく哲学的に行う」というのは、キリスト教(カトリック)が国民の約80%(*1)を占める彼の地において、文化的背景を異にする合気道を普及させるためには、意識せざるを得ない原則だったはずです。

合気道は、基本的に、日本の道場と同じ作法・稽古内容の下で、国境・人種・宗教を超えた道友たちが稽古に励んでいます(※興味のある方は、Facebook・Instagram等のSNSで、海外の道場の写真を検索してください)。

この事実は、合気道の作法・稽古内容が、人種や宗教などを超えて、普遍的に受け入れられるものであることを表しています。道場では、「思想信条の自由が保障される」と同時に、その稽古を「哲学的に」行うのです

一方で、身近な仲間(道友)に対して、それぞれが「良い / 正しい」と信じる「宗教・思想・商品等」を「勧めたい」という気持ちも理解できます。ですが、そうした勧め(布教・普及・勧誘等の行為)を受けた方が、それを「断りたい」と考えた場合、相手への遠慮や申し訳なさ(ときに嫌悪感)が生まれます。その結果として、勧めを受けた方が「道場へ来ることを敬遠する」という状況が起こり得ます

こうした状況は、「合気道を明るくのびのびと稽古する場」を主宰する立場として、私の望むものではありません。

だからこそ、「あらゆる道場⽣が安⼼して稽古に参加できる環境の維持を⽬的」として、「特定の宗教・思想・商品等の布教・普及・勧誘等を⽬的とした⼊会や、入会後のこれらに該当する行為は禁ずる」ことを道場規約に掲げています。

合気道に興味を抱いて当会に通ってくださる方が、「合気道に直接関係のない要因」によって稽古を敬遠することを私は望みません。会員の皆様には、私のこの想いをご理解いただきたいと思っています。

なお、「合気道至心会」は、「稽古をする会員のため」に存在しています。会員の皆様にとって「より良い稽古環境」を築いていくためにも、ご意見・ご要望は、遠慮なく私(主宰者)へお伝えください。

【note記事のご紹介】
「合気道は、明るくのびのびと、愉快に稽古する武道である」ことをテーマに、こちらの記事を書きました。興味のある方は、こちらもお読みください。

(2)道場の「あり方」(私見)


(私見①)道場の「あり方」

合気道を始めてしばらく経った頃、あることに気がつきました。それは、稽古で頻繁に顔を合わせる道場の「仲間」であっても、その方が「何者」であるのか、ほとんど知らない、という事実でした。

私の出身道場では週3回の稽古機会が設けられています。多い場合は週3回、互いに顔を合わせて技を掛け合います。ですが、何年経っても、その相手の素性(居住エリア・職業・家族構成など)をほとんど知らない、ということが当たり前のように起こります。

道場に集う人の背景は多種多様です。千差万別の背景を持つ人たちが、稽古の間だけ「合気道」を通してつながり、稽古が終われば、それぞれの生活に戻っていく。稽古の場では、その人の背景は(ほとんど)関係ありません

私には、こうした道場の「あり方」が、とても心地よく感じられました。

SNSの普及によって簡単につながれてしまう現代だからこそ、「合気道」という共通の技芸を通してつながる場、という環境が新鮮に感じられるのかもしれません(程度の違いはあっても、「趣味の場」は、そうした性質を帯びるはずです)。

● 道場には「多種多様な人」が集まる。
● その人たちが、道場では「合気道」という技芸を通してつながっている。

これが、私が心地よいと思える、道場の「あり方」です(あくまでも「私見」です)。

道場のメンバーは多種多様です(前提として、道場には「多様性」が不可欠です)。メンバーの中には、つながりすぎる「日常」から逃れたいと思って道場に通う方もいるはずです。当会は、そうした方でも気持ちよく息ができる場にしたいと思っています。

(私見②)SNSにはご用心

先ほど、「SNSの普及によって簡単につながれてしまう」と書きました。SNS(LINE等のメッセージング・アプリを含む)は、次に挙げるような性質を有しています。

  1. 利用者の意識を「囚える」ことを目的として作られている(利用者の注目・時間を奪い、それを広告事業者に売ることで利益を生んでいる)

  2. 利用者間に摩擦を生みやすい(相手が望む・望まないとに関わらず、情報を発信・送信できる)

SNSのこうした性質を認識せず、「利便性だけ」を求めて利用することには危険性が伴います。特に、SNSのコミュニティや、メッセージング・アプリのグループ(2者間も含む)でのコメントのやり取りには注意が必要です。

短文での(頻繁な)メッセージのやり取りは、グループメンバーの意識と時間を奪う上に、誤解を生みやすくなります。また、グループに所属しないメンバーが疎外感を感じるといった弊害も起こり得ます。

「合気道を通してつながる場」において、「(SNS等の)合気道以外の要因」によって稽古を敬遠する人が出ることは、私(主宰者)の本意ではありません。会員間でSNSを利用される際には、こうした点にご注意ください。

【参考】私が経験した事例(note記事の紹介)


最後に、私が巻き込まれたハラスメント騒動の顛末をまとめた記事を紹介します。あくまでも個人的な経験ですが、そこで得られた教訓などを、他の方とも共有したいと思って作成した記事です(3部構成)。

この記事をお読みいただくと、私がなぜ「ハラスメント行為の禁止」にこだわるのかを、ご理解いただけるかもしれません。

少し長いですが、読みやすいように整理しています。読んでくださった方にとって、何らかの参考になれば幸いです。

(本文終わり)


【参考・引用文献】

(*1)出典:外務省HP, イタリア共和国(Italian Republic)基礎データ(最終閲覧:2023/09/28)



【合気道至心会のご案内】

岐阜市を中心に活動する、合気道の道場です。

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