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知っていますか?飼料原料はいままでも20年間上がり続けていたことを。私達養鶏家ができること、できないこと。

『ウクライナ戦争で飼料穀物が高騰し卵の値段が上がった。』連日のようにニュースで報道されています。でも知っていますか?飼料穀物はいままでも20年間上がり続けていたことを。

実は主要な穀物であるとうもろこしの価格は20年前の3.5倍となっています。なぜでしょうか?それは世界中でとうもろこし争奪戦が繰り広げられているからです。世界中で穀物の需要は明らかに増えています。中国やインドなどの新興国の需要が高まっていること、飼料原料のエネルギーへの転換が進んでいることが一番の理由です。穀物の生産量は単収の飛躍的な増加により増えていますが、需要に供給が追いつかない状態です。よってとうもろこしは世界中で取り合いになっているため、価格が上がっているのです。いままでも干ばつや災害による生産量減や戦争による混乱などで一時的に価格が上下動することがありますがそれは一時的なものに過ぎません。やはり一番の要因は需要が増えていることであり、生産量が追いつかないことが本質だと思います。

世界での穀物相場が上がることにより、日本の飼料価格は20年前の3倍以上となりました。これはたまごのコストを1.8倍に押し上げたことになります。それではたまごの値段はどうでしょうか?鶏卵相場は1.25倍にしかなっていません。残り55%のコストアップは、生産者が負担することとなり、養鶏業界は結果的に過酷な競争を強いられることになりました。55%のコストアップを自分たちで消化するためにはありとあらゆる努力を業界はしてきました。飼料効率を徹底的にあげること、規格外率を徹底的に下げること。鶏のライフサイクルを長くすること。などなど多岐にわたりました。まさに血の滲むような努力が必要であり、残念ながら結果として多くの養鶏家が業界を去ることになりました。21世紀のはじめに50千戸あった採卵鶏飼養戸数は20年間で2千戸を切ってしまいました。どれだけ厳しかったかみなさんにも少し想像ができるかと思います。

高栄養でバランスの取れた食材として、生でも安心してたべることのできる品質を維持しながら、どの食材よりも物価の優等生であることが、世界でも有数なたまご消費大国になることに寄与し、そして日本の国民の健康に大きく社会貢献をしているのだと私達は自負しています。しかし、その裏にはこのような努力があることもぜひ知ってもらいたいと思います。

私達はこれからも、『この栄養豊かなたまごを誰でも食べられる』食材であり続けるために、養鶏家ができることを頑張ります。

しかし、自分たちでもどうにもならない穀物相場の値上がりがこれからも続くことが予測されます。新興国の需要はさらに高まるでしょう。そして、穀物のエネルギー化も進められています。また、ウクライナ戦争が更に長引けばそれらに拍車をかけると思います。

日本のGDPはここ20年ほとんど伸びていません。ですから給与所得も伸びていません。鶏卵価格に正当なコストアップ分を上乗せできないのは、このような背景がベースにあるのだと思います。しかし、新興国が台頭するグローバルな社会において、畜産物の価格を適切に値上げできない国は、結果的に穀物争奪戦からさるしかありません。それは日本国の衰退へと繋がってしまいます。

30年前に父は私に言いました。
『家畜とは英語でLIVESTOCKというんだよ。文字通り生きた在庫と言う意味なんだ。日本は畜産業を発達させ、穀物を生きた在庫として確保していることになるんだ。工業製品を発達させ海外に売ることで外貨を稼ぎ、そのお金で穀物を買う。そして豊かな生活をするための適正在庫を畜産業で保っている。私達は社会に貢献をしているのだよ』
この言葉の本質は工業と農業(畜産業)は両輪で国を豊かにしてきたということだと思います。私達日本人は今が踏ん張りどころだと思います。力合わせ強い日本に戻りましょう。


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