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なぜ、殺処分するの?隔離して治してあげないの?

最近、多くの人が鶏の殺処分について疑問をもち質問をしてきます。
『鳥インフルエンザに感染したらなぜ殺処分しなきゃいけないの?治す薬はないの?隔離して治してあげないの?』

結論からいうと、
日本は法律で鳥インフルエンザに1羽でも感染するとその農場のすべての鶏をできるだけ素早く殺処分することに決まっています。近くの農場に拡げないためです。

そして、残念ながら薬はありません。また、隔離しても意味がありません。それは、非常に致死率が高く感染すると高病原性鳥インフルエンザの場合、10日間で75%以上の鳥が死んでしまいます。ですから国は速やかに殺処分をして他の農場に移さないことに集中するというわけです。

次に多い質問は、
『それでは、予防はできないの?ワクチンはないの?コロナのように?』

これはとても答えるのに難しい質問です。でも、できるかぎりわかりやすく説明したいと思います。

コロナワクチンのようにコロナウィルスをコントロールする手法はあります。世界にはいろんなタイプの鳥インフルエンザワクチンが存在し、それを使用している国もあります。そしてわが日本も実はワクチンを備蓄しています。しかし一度も使用されていません。それは日本の方針が『清浄化』を基本にしていて、常時ワクチンを使用する方針をとっていません。あくまでも発生農場の殺処分によりウィルスを無くして、封じ込めをする方針なのです。備蓄用ワクチンは緊急時の対応として持っているということなのです。

継続的にワクチンを打つという方法は、ワクチン摂取によりできた抗体にて症状を抑えることができますが、ウィルスを完全になくすことができず常在化する可能性があります。これは『清浄化』に対し、『常在化』を前提にウィルスと上手に付き合っていく道を選ぶということです。まさにコロナウィルスで人類がとった道です。

世界の殆どの国は、ワクチンを使用せず『清浄化』策をとっています。理由は大きく2つあります。1つ目は、ワクチンを摂取することによりウィルスが常在化した国と見なされ他の国が警戒し貿易上大きな問題を生じることです。2つ目は、ワクチンでコントロールするには、しっかりとした技術力、経済力、行政の執行力、そして養鶏家の高い衛生レベルとモラルがないと、逆にうまくいかないということです。世界で多くの国がワクチンを採用したくてもできない現状がここにあります。このことについてはまた後でしっかりまとめたいと思います。

ここからは、私見となります。

鳥インフルエンザにおける状況の急激な変化は、私達の事情を待ってくれません。世界中で鳥インフルエンザの発生は多くなり、多くの鶏が殺処分され、たまごの安定供給ができなくなっています。そして行政の殺処分にかかる労力、コスト、そして多くの関係者の精神的ダメージは、年々増加しています。
このような状況を受けて、いくつかの国がワクチンを使用した新しい手法などの検討に入っています。

大切なのは、現在の古い手法にしがみつかず、困難でも新しい方法を見つけていく必要があります。また、鳥インフルエンザは世界をまたにかけて暗躍をしますから、一つの国だけではどうにも成りません。コロナウィルスの場合、世界中で同時にワクチンを摂取しているから治まっているのですから、同じような枠組みをしていかなくてはなりません。まさに世界の国や業界がちからを合わせて行う必要があり、技術力と経済力がある日本はアジアのリーダーとして牽引をしていく必要があると考えています。

私個人には大きな力はありませんが、できることをしていくつもりです。4月にはヨーロッパで行われる国際会議に出て、西欧のワクチン事情を調べてきたいと考えています。

1羽でも鶏たちを殺さないために。1個でも大切な人にたまごを届けるために。頑張ります。

すこし、難しい話でしたが、すこしでも参考になれば幸いです。



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