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Who Let The One Out?

 ひょんなことから時間移動できるようになった俺は適当に10年くらい前にタイムスリップしてどこかの家から金をかっぱらおうとしていた。
 俺の住んでいたホワイトレスト駒川は10年前は一軒の平屋だったらしく、部屋で適当にタイムスリップすると俺はその知らん平屋の庭であぐらをかいていた。
 俺はあたりを見渡す。すると、その縁側のところに、肘掛け付きの籐椅子に座って日光浴をしているババアがいた。
「ババアだ。」
 俺は思わずそうつぶやいた。
 まさに絶好の標的だと思った。ババアなら若者より弱く、しかし金を持っているだろう。俺は立ち上がり、縁側へと近づいていった。おい、とババアに声をかける。ババアは眼を開けて大して驚いた様子もなくこう言った。

「あら。どちら様で?」
「俺は未来から来た未来強盗。さっさと金を出せ」
「そうかい」
 と、ババアは素朴にそう言った。
 そして、
「じゃあ駆除しなくちゃね」
 と言うと突如俺の首から血が噴き出す!
 ババアの手刀が俺の首をかすめたのだ。
 ババアの素朴さに気づいてとっさに急所を外したがあとコンマ1秒遅ければ死んでいただろう。
 今やババアの全身は長く湿った毛で覆われ、バキバキという音を立てて巨大な牙、そして緑色の鋭利な爪が伸び始めていた。
 ティンダロス症候群だ。俺にはすぐに分かった。
 俺は速攻でババアと距離を置くと精神を集中させて何のためらいもなく時間遡行し自分の時代に戻ってきた。ホワイトレスト駒川。
 そこはいつもの俺の部屋だ。空き瓶の山、勉強机、漫画だらけの本棚に万年敷かれている布団。いつも通り辺りは脱ぎ捨てた服で散乱している。

 俺は耳を澄ます。
 きぃ。きぃ。
 音が聞こえる。
 きぃ。きぃ。
 時空おじさんの話はやはり本当だったのだ。
 きぃ。きぃ。
 俺は机の引き出しから拳銃を取り出し、深く深呼吸する。そして、部屋の隅に狙いをつけて構えた。
 

 さあ、どこからでもかかってこい。






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