I am the One who Deduces!!!

 俺の名前は田中太郎。仮名でもペンネームでもない。これが本名なんだ。最近キラキラネームが社会問題となっているらしいが、俺の名前はこれ自体がアンチテーゼとなっているだろう。今時田中太郎なんて名前の奴がいるのか?映画でも小説でもとりあえず仮名として使う時の名前だ。一体俺の親は何を考えていたんだろう。いや、おそらく何も考えていなかったに違いない。そうじゃないとこんな名前を付ける訳がない。
 俺は高校でも大学でも自己紹介した時に笑われるのはもううんざりだった。テレビのバラエティーなんかでは皇帝と書いてカイザー、太陽と書いてアポロンという少年たちを見たがそれはまだかわいい方だ。
 俺のこの名前を聴け。
 田中太郎。
 これを聞いたお前は俺の顔、俺の性格、俺の好きな食べ物、俺の趣味、そのどれを想像することが出来る?間違っててもいい。想像出来るかどうかだけ聞いているんだ。出来ないだろう。カイザーならそれはもうそいつは皇帝のような雰囲気を漂わせていそうだし逆に皇帝と名がついているだけでそこまで本人は皇帝っぽくないそういうパーソナリティーだって考えられる。アポロンだってそうだ。ギリシア顔の天使を想像できるだろう。
 だが田中太郎はどうだ?
 現在では田中太郎という名前はエイリアスの意味を持つ。つまり俺は誰でもあり、また、誰でもないということだ。俺のアイデンティティなんてどこにも無い。
 まあ逆にそれは、俺は遍在するってことなんだが。
 俺はどこにでもいてどこにもいない。

 俺は神だ。

 実際の所、俺は神のような力を持っていた。
 それは、他人の中に入り込み、自分の身体のように操ることができるというものだった。もちろんその時に入り込んだ肉体の持ち主の精神は消滅する。まあ端的に死ぬということだ。俺はこの力を使ってもう5回は転生を繰り返していた。俺は無敵だった。これも全て田中太郎のおかげだった。

  ビバ、田中太郎!!



【続く】







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