時々の優しさはずるい
ちょっとした優しさに弱かったりする。
一緒に歩いているときにそっと手をつないでくれることとか、落ち込んでいるときに頭をなでてくれるとか、後ろからそっと抱きしめてくれることとか。いつもは干渉せず、興味がないようなそぶりを見せているのに、時々優しくされるとどうしようもなく胸が高鳴って、体の奥がじんわり熱くなる。
好きで好きでしょうがなくて、伝えても伝えきれないほどの思い。言葉にならない衝動はあなたに届いているのだろうか。感情を表に出さないあなたにわたしは確かめるように質問をしていく、
「すきでしょ」と。
「いいや」
とそっけない答えが必ずかえってくる。
確認してもはぐらかすそぶりに、もどかしい気持ちでまた加速させてしまう。好きだという確証が欲しいわたしはあらゆる方法で引き出そうとする。わざと恋愛話を持ち込んだり、ドラマのシチュエーションをみて同じことをしてみたり。だけどあなたの表情は変わらない。
そんなことして何になるって思われるかもしれない、でもこれがわたしだ。どんなに空振りでも振り続けるしかなかった。何もしなければ二人の感情が消えてしまうような気がして。言葉にはしないけどわたしと同じ思いって信じていいよね?心の中で祈るように繰り返している。
わたしは不安なんだろうか、一緒にいる時間が無くなってしまうことに。いつもいるはずのあなたが去ってしまうことに。そう思うと寂しくなってしまうからもうちょっと夢をみさせて。
そんなわたしでもちょっと頑張ることに疲れてへこんでしまう時もある。
あなたはそっと寄り添って、温かい言葉をくれた。いつも優しくするよりも何倍にもなってわたしにしみ込んでいく。今までのそっけない態度も冷たい言葉もどこかに飛んでいき、あなたをもっと好きになる。まるで心の内がわかっているかのように。
時々の優しさはずるい。
どんなに嫌なことがあっても、つらい事があっても一瞬でなくなってしまう。わたしを全部お見通しな感じがして正直悔しい、どんなに言葉を尽くしても気まぐれな優しさには勝てない気がする。
思ったことを全部言ってしまうわたしと、気持ちをおもてに出さないあなた
まるで正反対のわたしたち。
お互いを足して割ったらちょうどいいのにね。
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