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【フリーランス覚書】インボイス ぼちぼち真面目に 取り組もか

こんにちは!
子育てイラストレーター/アニメーターの中川 治之です。

さて今回は、『インボイス』について書こうと思います。

「…今ごろ?」という感じですよね。

正直、忙しさにかまけて目を逸らしていたのですが、ようやく観念して向き合うことにしたというわけです。

ちゃんとした大人の人達はとっくに動いているので役には立たないと思いますが、『インボイス』との出会いから振り返りつつ、自分なりに考えたり調べたりしたことを覚書として書いていきます。

注)この記事は、『インボイス』について僕が調べ、自分なりに理解した内容を書いています。
専門外の部分もあるため、内容に誤りがある可能性もあります。
その点、ご理解いただけますと幸いです。
誤りにつきましては、ご指摘いただけましたら訂正いたします。


Ⅰ インボイス やぶから棒に 何やねん

僕が『インボイス』という言葉を知ったのは1、2年前、SNSでたまたま見た誰かの投稿でした。

『インボイス』制度が始まると、多くの個人事業主が廃業に追い込まれることになる

なかなかショッキングな煽り文句です。
投稿は、みんなで声を上げて何とかこの制度を廃止しよう、と働きかけるものでした。

しかし、当時の僕は独立して間もないペーペーの中のぺーぺー、いわばキング・オブ・ペーペー。
いきなり『インボイス』と言われても何のこっちゃわかりません。

そこで、とりあえずこの事案を放置することにしました。
ややこしそうな事からいったん目を逸らすのは、僕の本当にダメなところです。


Ⅱ 忍びよる 不安と恐怖 目を逸らす

その後、SNSで同業者や税理士の方々が『インボイス』について言及する投稿が増えはじめます。

わかりやすく解説しようとしてくれる専門家の方も現れ、流石にどうやら僕自身にも降りかかる火の粉であることがわかってきました。

この辺から徐々に不安が募ってきます。

それでも詳しく知って絶望するのが怖いし、小難しい用語や難解な言い回しばかりの資料を読み解くのも大変なので、自分に七色の言い訳をし、できるだけ問題を直視しないようにしていました。

目にする投稿のほとんどが「この制度は悪」「反対」「やめさせよう」という趣旨のものだったので、「みんなが反対してこの制度が無くなってくれたらいいなぁ。」という他力本願な甘い考えもありました。

しかし、制度の開始日は着実に近づいており、不安は増すばかりです。


Ⅲ しっかりと やってる人に あせらされ…

さらにしばらく経つと、フォローしている同業のトップランナーの方々が、『インボイス』制度に対応するために法人成りしたり、『免税事業者』から『課税事業者』に移行するなど行動を起こし始めます。

本当に、ちゃんとした大人の方々は立派です。

そういう人の発信を見たりお話を聞いたりすると、やっぱり自分もあせってしまいます。

「何かしないと…」とあせって法人化の方法などを調べてみますが、経理事務の手間や税理士への報酬など、今の自分の稼ぎではとうてい現実的でないコストがかかるとわかり、絶望的な気持ちになるだけでした。

ただ、この段階ではほとんど制度の中身を理解していないため、無知ゆえのやみくもなあせりです。
まだ『インボイス』くんと正面から向き合っていない。

この頃から、制度に向き合わないばかりか、「何とか制度が無くなって欲しい」という思いが明確になってきます。


Ⅳ ささやかに 抵抗したけど ダメでした

『インボイス』制度が無くなる。
そうなってくれるのが自分にとってベストですが、そのために何ができるのかな。


パッと思いつく行動は、やはり選挙です。

ちょうど2022年は参院選があったので、この『インボイス』制度廃止を公約に入れているか否かを加味して投票先を選びました。
(もちろん判断材料はそれだけではないですが。)


結果は…


ご存じの通り、『インボイス』制度を推し進める側のボロ勝ち。
これで『インボイス』制度の開始はほぼ既定路線となってしまいました。

やだなぁ。


Ⅴ もう一度 目を逸らしたけど もう限界

世の流れはほぼ決しましたが、ここへ来て、この期に及んで、敢えてもう一回、頑張って目を逸らしてみます。

やっぱり嫌やし。

SNSでは依然として『インボイス』に反対する投稿が多く見られますし、まだ動かない方が良い、という投稿も目にします。

それに、選挙ではボロ勝ちしたものの、色々と深刻な理由でいま政権が揺れているので、その対策や人気取りのために、消費税や『インボイス』制度に関して緩和なり延期なりの動きがあるんじゃないかという線もワンチャン期待したりしていました。

しかし敵もさるもの、「今のうちに『インボイス』に対応すればちょっと得するよ」というような優遇措置を設けて揺さぶりを掛けてきます。

おまけに、いくつかの企業さんからもとうとう『インボイスに対応するかどうかのアンケート』なるものが届くようになり、今後の方針をある程度決めざるを得ない状況になってしまいました。


Ⅵ 調べ出す 最初はやっぱり やさぐれる

いよいよ僕も観念し、時間をとって『インボイス』について調べることにしました。

しかしこれがどうにも億劫で仕方がありません。

ややこしい制度の仕組みを調べたり、人に理解させる気がないとしか思えない難解な資料に目を通すのは本当に辛い。

ありがたいことにお仕事も忙しいので、こんな調べものに時間と労力を取られること自体が非常にストレスでした。

このためにモノづくりに費やすはずの大切な時間とエネルギーが減ってるんだから、ほんまにどないしてくれるねん、国。


とは言え本腰を入れて調べ始めたことで、敵の全容が少しずつ見えてきました。

『インボイス』制度に関する僕の理解は下のような感じです。(間違っていたらすみません。ご指摘いただければ訂正いたします)

  • インボイス:適格請求書』とは、複数の税率の内訳を記載することを目的とした請求書のこと。インボイスと認められるには、事業者の登録番号(後述)、本体価格、それにかかる税率ごとの消費税額、合計など、こまかく定められた記載事項がきちんと記載され、条件を満たしている必要がある 

  • 制度が始まると、『インボイス』を発行できるのは税務署に申請して登録番号を割り振られた『適格請求書発行事業者』だけになり、それ以外の事業者は消費税を記載した請求書を発行できなくなる

  • 請求書に「本体価格、それにかかる消費税額、合計」を書けないということは、消費税を含めない「本体価格」しか請求できないということ

  • いっぽうで発注する側の事業者(僕から見たクライアントにあたる方々)は、発注先から『インボイス』ではない請求書を出された場合、その仕入れに関しては消費税を支払っていないことになるので仕入税額控除できなくなり、納める消費税が増えて利益が減る

  • 「じゃあ誰に発注しようか?」と考えるとき、よほどの理由がない限り『インボイス』を発行できる事業者に頼もう、となる可能性が高い

  • 従って我々フリーランスがこれまで通り仕事をもらい続けるには、『適確請求書発行事業者』になり、『インボイス』を発行できるようにならなければならない

  • 『適確請求書発行事業者』になる条件として、『課税事業者』でなければならないというものがある。
    『課税事業者』とは、事業で得た収入のうちの消費税分を国に納税している事業者のこと

  • 本来はすべての事業者が消費税を納税する義務があるけど、個人事業主や小規模事業者で、所得が1,000万円以下の事業者は、消費税の納税を免除されている→いわゆる『免税事業者

  • 現在、『免税事業者』は、請求の際に消費税を上乗せして請求できるけど、それで得た消費税を国に納めなくて良い、ということになっている→これを『益税』という

  • 『適確請求書発行事業者』になるには『課税事業者』である必要があるので、所得が1,000万円以下の事業者も『益税』のメリットを諦めて消費税を納めなければならなくなる→収入が減って経理事務が増える

わかったことを書き出してみても、フリーランスとして生き残りたければ、収入が減ろうが経理事務が増えようが『インボイス』を発行できる『適確請求書発行事業者』になるしかなさそう。

もちろん強制ではなく、今の取引先との関係性によっては『インボイス』を発行できなくても仕事がなくならない可能性もあるとは思います。

しかし1つの取引先との関係がいつまでも続く保証なんてどこにもないので、結局は『適確請求書発行事業者』にならないと次の仕事を得るのが難しくなるのは明白です。

外堀を埋めて選択肢を奪った上で本人に選ばせて、自己責任を迫ってくるという悪辣(かつ効果的)な手口に思えます。

『インボイス』は我々個人事業主や小規模事業者だけでなく、発注する事業者側の手間も増えます。

仕入額控除を受けるには請求書が正しい『インボイス』である必要があるので、発注した相手が本当に『適確請求書発行事業者』か、また出された請求書が『インボイス』の要件を満たしているかチェックしなければなりません。

このチェックのために『適格請求書発行事業者』の登録名簿と照合することになりますが、これに実名やら住所やらが乗るとか乗らないとかで、いちど騒ぎになりましたね。

ともあれ、このチェックがすべての請求書に対して発生すると思うとなかなかの手間です。


こんな風に、『インボイス』制度は発注する側、される側を問わず、あらゆる事業者にとって手間が増えることになるようです。

やっぱりやだなぁ。


Ⅶ 調べると 案外なんとか なりそうだ

『インボイス』制度が始まると、具体的にどんな手間が増えるのかも調べてみます。
大きく分けて、最初にかかる手間(イニシャルコスト)と、事業者として活動する中で継続してある手間(ランニングコスト)の2種類があります。


イニシャルコスト系

まず、『インボイス』を発行するため、これまでの請求書を一部変更し、制度に対応した形に整える必要があります。

ただ、経理事務のサポートソフトやサービスでも『インボイス』に対応した請求書を簡単に作れるようになっているので、これはそんなに手間ではないと思います。

…だからと言って認めたわけじゃないけどな!


次に、『インボイス』を発行できる『適格請求書発行事業者』および『課税事業者』になるため、税務署に申請を行う必要があります。

これも然るべく申請書を作成して期限までに出せば良いので、大したことはありません。

なお、『課税事業者』になるには、本来なら前年までに税務署に申請を出す必要があります。

しかし今回、特例として2023年3月31日までに『適格請求書発行事業者』の申請を出せば『課税事業者』の登録申請は省略可能となります。

そして、2023年10月1日の制度開始と同時に『適格請求書発行事業者』および『課税事業者』として活動できるようになります。

ちょっとだけラク。

…だからと言って認めたわけじゃないけどな!!


これらの準備に伴う手間は、イニシャルコスト(初期費用)として最初に必要になるものですが、逆に言えば最初頑張れば済む話なので、ここは何とか我慢して乗り越えたいところです。


ランニングコスト系

しんどいのは、『課税事業者』として消費税を納税することに伴う事務作業や、『インボイス』や帳簿を適切に管理する手間だと思います。

納税する消費税額の計算は、押しなべて言うと、

支払い消費税 = ①売上税額(売上にかかる消費税) - ②仕入税額(仕入で支払った消費税)

というものですが、この計算が非常にめんどくさい。
※このあと計算方法を書きますが、あまりにもめんどくさ過ぎるので全ての語尾に「めんどくさい」がついてしまいます。ご了承ください…。

①の『売上税額』は、自分が売上として受け取った報酬にかかる消費税なので、自分が発行した『インボイス』をもとに計算します。(めんどくさい)

ここで、複数税率があるため、受け取った報酬が標準税率(10%)の対象となる売上なのか、軽減税率(8%)の対象となる売上なのかをきちんと分けて計算する必要があります。(めんどくさい)

売上税額 = 標準税率(10%)の対象となる税込売上額 × 7.8/110 + 軽減税率(8%)の対象となる税込売上額 × 6.24/108

現状は標準税率10%と軽減税率8%だけですが、今後もっと細かく税率が設定されることになれば、各税率ごとに計算することになります。(めんどくさい)

②の『仕入税額』は、自分が仕入の際に支払った消費税なので、請求を受ける際に相手から受け取った『インボイス』をもとに計算します。(めんどくさい)

これも当然、税率ごとの計算となります。(めんどくさい)

仕入税額標準税率(10%)の対象となる税込仕入額 × 7.8/110  + 軽減税率(8%)の対象となる税込仕入額 × 6.24/108

参考サイト:[国税庁] 納付税額の計算のしかたhttps://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6351.htm

こうして計算した『売上税額』から『仕入税額』を差し引き、残った金額を消費税として納税することになるので、取引や仕入が多い事業者は、『免税事業者』から『課税事業者』になると途端に計算がややこしくなること請け合いです。


請求書の変更や登録申請などはイニシャルコストとして最初だけで済みますが、『課税事業者』としての事務作業はランニングコストとしてずっと付きまとってくる手間です。

税理士に依頼するのも手かと思いますが、僕のような中途半端な年収では金銭的に難しいので、絶望的です。


希望の光

しかし!『課税事業者』には、『原則課税』と『簡易課税』の2種類があり、『簡易課税』は計算方法が簡素化されるため、かなり事務作業が楽になることがわかりました。
(教えてくれた同業の先輩に感謝です)

『簡易課税』は、納税する消費税の計算を簡素化するための制度で、『仕入税額』の計算を大幅に省略できます。

支払い消費税 = ①売上税額①売上税額 × みなし仕入れ率

『売上税額』の計算は『原則課税』と同じですが、『仕入税額』については計算せず、『売上税額』に『みなし仕入率』を掛けた金額を差し引くだけ。

極端な話、仕入については『インボイス』を確認する必要もなくなります。

これは何だかラクそうだ。

『みなし仕入率』は業種によって決められているので、国税庁のサイト等で確認する必要があります。

参考サイト:[国税庁] 簡易課税制度の事業区分
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shohi/6509.htm


『簡易課税』は細かい仕入れ額を考慮せず、大づかみに計算してしまう方法なので、場合によっては『原則課税』より損をする可能性はあります。

ただ、事務作業の大幅な軽減が見込まれるので、僕はいったんこの『簡易課税』を選択することにしようと思っています。

もっとも、『簡易課税』も『益税』と同様、税金の取りこぼしがあることには変わりなく、今後ここにも国のメスが入る可能性はあると思います。

…まあその時はその時で考えるしかないです。


そんなこんなで、『インボイス』とちゃんと向き合っていろいろと調べた結果、しんどいことには変わりないけど、どうにかこうにか対応できそう、という光明が見えてきました。

…だからと言って認めたわけじゃ(以下略)


Ⅷ 受け入れる それでもやっぱり やさぐれる

いろいろと調べたうえで僕が出した現状の結論は、『適格請求書発行事業者』および『簡易課税事業者』となり、消費税を納税しながら『インボイス』を発行できる事業者として今後もやっていく、というものです。

…ごくごく普通の結論ですけど。

具体的には、2023年1月1日~2023年3月31日までの間に、

  1. 適格請求書発行事業者の登録申請

  2. 簡易課税制度選択届出書の提出(※)

を行い、2023年10月1日の制度開始までは請求書のフォーマットを変更したり、帳簿の保存やその他、事務作業の準備を整えておくことになります。

※『適格請求書発行事業者』の登録申請をすることで、『課税事業者』になるための届け出は省略できますが、『簡易課税事業者』になるには別途届け出が必要です。(めんどくさい)

方針を決めてしまうことで、多少は気が楽になりました。

でも、しんどさしか待っていない未来を考えると、やっぱりやさぐれてしまいます。

…今からでも遅くないので、やっぱりこの制度やめてくれませんかね?


『インボイス』に反対する意見への反論として、

免税事業者は売上に含まれる消費税を本来、納付すべきなのに、それを免れている。(『益税』)
そんな甘い汁を吸うのは不公平だし、これで廃業するような事業者はそもそも存続していること自体が不当

というものを目にすることがあります。

一般的な企業に勤めるサラリーマンの方々は特にそのように思われる方も多いかも知れません。

しかし、個人事業主や小規模の事業者は、今でも重過ぎる税金や社会保険料、そして大変過ぎる経理事務で既にじゅうぶん疲弊しているんです。

それに、僕のような弱小個人事業主は料金だって強気に出られないのが実情です。
適切な金額にさらに消費税を上乗せして請求し、それをそっくり懐に入れているのであれば不当と言われても仕方ない気もしますが、少なくとも僕の場合はそうではありません。

形式上、消費税を記載してはいるものの、そもそもかなりディスカウントした金額(または先方の言い値)から逆算して本体価格と消費税に分けて請求しているだけ、というケースもしばしばあるので、『益税』という甘い汁を吸っている感覚なんて微塵もありません。

この上、『インボイス』による事実上の増税や経理事務の増加となると、本当に廃業を考える人が多数出てもおかしくないと思います。


多様な働き方を奨励しつつ、いっぽうで小規模事業者を苦しめる制度を推し進めてくる政府は、本当は税収を上げることしか関心がないのでは、と思ってしまいます。

百歩譲って税収だけが目当てであっても、多数いる小規模事業者が軒並み廃業してしまっては、もともとあった税収すらなくなってしまい本末転倒だとも思います。

それとも、現在いる『免税事業者』の中から『インボイス』制度に堪えられる事業者のみを振るいにかけ、残った事業者を『課税事業者』にして消費税を納税させる方が、消えていく弱者を切り捨てても全体として税収増が見込める、という算段なのでしょうか…。

いずれにしても、僕としてはこれからも大好きなこの仕事を続けて、自分と家族の生活を守っていくには、しんどい思いをしながらでも『インボイス』と付き合っていくしかない、というところです。

以上、『インボイス』から逃げに逃げていた僕が、ようやく向き合い、今後の方針を決めるに至る経緯でした。

もしこれからご自身の方針を決められるかたがおられましたら、少しでもご参考になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました!


Ⅸ 参考にしたサイト


注)この記事は、『インボイス』について僕が調べ、自分なりに理解した内容を書いています。
専門外の部分もあるため、内容に誤りがある可能性もあります。
その点、ご理解いただけますと幸いです。
誤りにつきましては、ご指摘いただけましたら訂正いたします。


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