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モハンマド・モフベル第一副大統領がイランの次期大統領になり得るか?

 日本のマスメディアでは、 #イラン の故・ #ライシ大統領 の次の大統領の有力候補として、イランの大統領代行に就任したモハンマド・ #モフベル を挙げているところが少なくありません。しかし、私は #モフベル大統領代行 が次期大統領になる可能性は極めて低いと考えています。

イランの副大統領制度について

#大統領制 を採用している国の多くでは、大統領の下に1名だけ副大統領を置いています。しかし、イランの副大統領制度は複雑で、他国の #副大統領 に相当する第一副大統領の他に、政務担当副大統領、原子力機関担当副大統領、女性・家族問題担当副大統領、法務担当副大統領、総務・雇用担当副大統領、殉教者および退役軍人の財団担当副大統領、環境担当副大統領、内政担当副大統領、国家エリート財団担当副大統領、計画・予算担当副大統領と様々な副大統領が任命されています。存在していない省庁の大臣に相当する副大統領もいますが、各省庁の最高責任者である大臣に相当する副大統領もいるのが、イランの副大統領制です。

 各省庁を所轄している大臣に相当する副大統領には、担当分野の専門知識と命令・指揮権があり、閣僚会議にも出席しています。しかし、第一副大統領は特定の省庁を管轄していないため、国政に対する影響力は限定的です。第一副大統領は大統領の代理としてイベントに参加したり、閣僚会議に出席したりすることが主な役割となります。

大統領制度国における副大統領の役割

 多くの大統領制度の国家において、副大統領の役割と権限は国によって異なりますが、一般的に次のような特徴があります。

つなぎ役としての役割
 多くの国では、副大統領は大統領が不在の場合や一時的に職務を遂行できない場合に、大統領の職務を代行することが主な役割とされています。これは、大統領の不在や健康問題、あるいは辞任や死亡などの緊急事態に対処するためのもので、権力の継続性を確保するためです。

限定的な権限
 副大統領の権限は通常、非常に限定的です。多くの場合、副大統領は象徴的な存在であり、特定の政策決定や実行に関与することは少ないです。例えば、副大統領は大統領の代理として公式行事に出席したり、特定の委員会や組織の名誉職を務めたりすることが多いです。

大統領の補佐
 副大統領は大統領を補佐する役割を持つことが一般的です。これは、大統領の政策を支持し、必要に応じて大統領の代理として活動することを意味します。一部の国では、副大統領が大統領から特定の任務やプロジェクトを任されることもあります。

安定性の維持
 比較的安定した大統領制の国では、副大統領が大統領に反旗を翻すようなことは少なく、副大統領が大統領の方針に合わない場合は、大統領が副大統領を罷免したり、副大統領が辞任することで対応します。そのため、大きな混乱は起きにくいです。

 しかし、政治が複雑な国では、副大統領が大統領に対して反旗を翻すと、国家の一大事となることがあります。例えば、イランでは、第一副大統領にはカリスマ性や過剰な権力欲がなく、従順な政治家が任命されることが基本です。これは、副大統領がそのまま大統領に昇格して実務を行うことが難しいことを意味しています。

緊急時の対応
 イランのような国では、大統領が執務できなくなった場合、50日以内に次期大統領を決める制度が整備されています。これにより、権力の空白期間を最小限に抑え、国家の安定を維持することが目的です。

結論
 副大統領の役割は国によって異なるものの、つなぎ役、限定的な権限、大統領の補佐、そして安定性の維持といった共通の特徴があります。特に政治が複雑な国では、副大統領の役割は慎重に定められ、権力の継承プロセスが整備されています。つまり、モハンマド・モフベル大統領代行が、次期イラン大統領になる可能性は極めて低いのです。

つづく…

#武智倫太郎

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