見出し画像

日本のAI政策と『無知の知』のパラドックス

 以下の記事では、国立情報学研究所(NII)情報社会相関研究系・佐藤一郎教授が人間の強みとなる『AIが持たない『無知の知』』について詳しく説明しています。 

  佐藤教授やNIIなど日本の情報産業で重要な存在が、AIの『無知』について提言を行っていることは、我々AI無知倫理学会にとっても、賞賛すべき事態です。
 
 しかし、AI無知倫理学の観点から見ると、佐藤教授の解説には専門家特有の無知問題が存在します。『無知の知』が人間の強みとなるという視点は的確です。佐藤教授は賢明で『無知の知』の重要性に着目していますが、一般人が自身の無知について認識していない、つまり無知のパラドックスを見落としていることが指摘できます。
 
『無知の知』は重要な概念で、孔子やソクラテスの悟りに匹敵するとも言えます。しかし、この理解は賢者やその思想を理解する現代の賢者には可能ですが、世の中の大部分の人々は、自身の『無知』に気づくことができないのが現実です。
 
 そのため、AIの『無知の知』に対する優位性を活かすことができるのは、『無知の知』を認識している一部の人々だけです。
 
 専門家は自分が理解できることを易しく説明することで、一般の人々も理解できると誤認することがあります。しかし、『無知の知』の本質を一般の人々に理解させることは困難です。
 
 これは筆者自身の自戒の念を込めて言いますが、専門家は一般の人々が何を理解できないのかを認識することが難しいです。佐藤教授の記事には、『高精度』、『汎用性』、『パイソン』、『スクリプト』、『タスク』、『言語モデル』、『特化型』、『プロンプトエンジニアリング』、『OpenAI』、『テキスト』、『API』、『サービス・アプリケーション』、『中立性』、『法的・倫理的リスク』、『権利侵害』、『不適切な表現』、『フェイク情報』、『改ざんされた情報』、『情報の選別』、『故意に流通』、『チューニング』、『生産性』、『スキル』など、一般の人々には馴染みのない専門用語が多数含まれています。これらの用語を理解するためには専門的な知識が必要です。
 
 これらの言葉を使うことで、佐藤教授の意見はより具体的で説得力が増す一方で、一般の人々にとっては理解が困難になる可能性があります。このこと自体が、『無知の知』のパラドックスを示していると言えるでしょう。
 
 このような一般人の『無知』に関しては、筆者もAI無知倫理学領域で、世の中にはどのような『無知』が潜んでいるのかを研究するまでは、全く理解できていませんでした。
 
 また、別の視点からも『無知の知』の問題が明らかになります。例えば、ChatGPTに『平将明は誰か?』と質問したことに対して『平将門』についての情報を提供した文末の『バイアス』のエピソードです。 

 『バイアス』など常識の範疇だと思われるかも知れませんが、現役の自由民主党広報副本部長・ネットメディア局長・情報調査局長ですら、バイアスが何だかまるで理解できていないことがこの発言から解ります。ここで注意していただきたいのは、平将明衆院議員は、一般人ではなく、日本のIT政策、WEB3.0、AI社会実装の中核人物ですらこのレベルだということです。
 
 このエピソードが示しているのは、ChatGPTが間違えたことよりも、平将明議員がAIの『バイアス』について理解していないことです。平将明議員が日本のAI政策を担当しながら、この基本的な概念を理解していないという事実は、日本政府のAIに対する『無知』を象徴しています。
 
 このように、『無知』はAIだけでなく、人間社会全体に存在する問題です。私たち専門家が一般の人々に対して『無知の知』を理解させ、それを活用する方法を教えることが求められています。それがAI無知倫理学の重要な使命と言えるでしょう。
 
自民党 平将明 衆院議員:『チャットGPT、私も初めて触れたときに平将明ってどんな人って言ったら、日本の中世の有力な武将(平将門)と出てきました。ありがちなバイアスがかかっている
https://www.youtube.com/watch?v=sRAPY7kIZSQ
 
平 将明(1967年〈昭和42年〉2月21日 - )は、日本の政治家。自由民主党所属の衆議院議員(6期)、自由民主党広報副本部長・ネットメディア局長・情報調査局長。
 
内閣:元・内閣府副大臣(2019.9~2020.9 IT政策担当)
広報本部副本部長 兼 ネットメディア局長
デジタル社会推進本部 web3PT 座長
デジタル社会推進本部 AIの進化と実装に関するPT 座長
知的財産戦略調査会データ戦略小委員会 小委員長
科学技術・イノベーション戦略調査会 副会長
元・内閣第二部会 部会長(デジタル改革、科学技術・イノベーション、宇宙政策、経済再生、金融など担当)
元・IT戦略特別委員会 委員長代理
元・データヘルス推進特命委員会 副委員長
元・サイバーセキュリティ対策本部 副本部長
元・人工知能未来社会経済戦略本部 幹事

この記事が参加している募集

AIとやってみた

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?