見出し画像

日本国のサイバーセキュリティの危機的実体(14)

 上の記事で、日本の中央省庁の法令のうち、手続き書類の提出や保管方法などに使う電子記録媒体を指定する条文が1894条項あることや、現在#デジタル庁が対応中であることを説明したところ、『なぜ、いまだにフロッピー(FD)を使っているのか意味が分からない』とのご質問がありました。そこで、本稿では#フロッピーディスクの問題について、もう少し詳しく説明します。

 FDのサイズには様々なものがありますが、1970年代から1990年代初頭にかけて広く普及したものには、8インチ、5.25インチ、3.5インチの三種類があります。現在、問題になっているFDはこれらのサイズの中で、一番小さな3.5インチのものです。3.5インチのFDにはフォーマットの種類などによって収納できるデータ容量が1MBから1.44MBまでありますが、現在では特に指定せずにFDというと、1.44MBの3.5インチフロッピーを指すことが多いです。

 近年ではこのサイズの1,000倍以上の容量を持つ2GBのUSBメモリでさえ#秋葉原の『#あきばおー』で探すのは困難で、Windows 10の起動USBの最小単位は8GBになっています。いまどき32GB未満のUSBメモリを製造しているかどうかは謎です。(MBの1,000倍がGBでそのさらに1,000倍がTBです)

 3.5インチ1.44MB(TBの百万分の一)のFDが1枚では、最近のスマホの写真1枚も保存できないほどのサイズなので、使い道がないと思っている方も多いでしょう。ところで、1.44MBのFDに文字だけを保存すると何文字くらい入ると思いますか? 英語と日本語では保存できる文字数が異なりますが、アルファベットよりも複雑で文字数の多い日本語でも約75万文字が1枚のFDに収納できます。

 Windowsが普及する前のMS-DOS 3.1などでは、この1.44MBの中にOS全体を収容することができました。また、当時日本で主流だったワープロソフトや表計算ソフト、会計ソフトなども、FD1枚に収納できていたので、MS-DOSでパソコンを立ち上げ、必要なソフトを起動して作業し、作業終了後にワープロソフトなどでデータ保存用のFDに保存する作業をしていました。

 その後、PCの内蔵ハードディスク(HD)の普及により、PCの電源を入れると自動的にOSが起動するようになり、様々なソフトウェアで作成したデータをHDに保存し、同時にFDでバックアップしたり、そのFDを官公庁に提出したりすることができました。

 先に述べた1.44MBのFDで約75万文字も収納可能だった点を思い出してみてください。文庫本一冊の文字数が約10~12万文字であることを考えると、FD1枚には文庫本5冊以上の文字データが保存できます。

 現在では、MB単位のデータは非常に小さいと感じるかもしれませんが、当時はこれだけの大容量の記憶媒体があれば、税務申告だけでなく、さまざまな行政手続きなどが、数百枚もの紙を使わず、1枚のFDで電子申請ができていたのです。

 これは、銀行の給与振り込みなどでも同様で、数千人規模の工場の従業員の給与振り込みも、FD一枚で済んでいました。このような画期的な電子媒体としての利点を生かし、様々な官公庁が法律や条例を変更して、紙媒体ではなくFDでの申請を認めるように変更していった結果が、冒頭で触れた1894条項に及ぶ様々な行政書類の申請手続きとなっています。

 次に、1.44MBのFDたったの1枚で、MS-DOSが丸ごと収納できたことを思い出してください。

 現在、日本の主力戦闘機である#F_15Jシリーズは、約30年前に導入され、現在でも200機が運用されています。戦闘機と聞くと、高度なコンピュータが搭載されていると想像するかもしれませんが、F15-Jシリーズは30年前のモデルですから、その中には#8ビットCPUが搭載されていました。このCPUの処理能力は、1983年に任天堂から発売された家庭用ファミコンとほぼ同じです。

 40年以上コンピュータで遊んできた経験がある私から見ると、8ビットCPUはかなり強力で、画像処理のような大容量データを除けば、#ロボット制御#工場制御(FA)、#エンジン制御、古いレントゲン、MRI、CTスキャナなどの医療機器をはじめ、多くの機器制御は8ビットCPUで十分に対応できます。

 8ビットCPUは、現代の32ビットや64ビットのCPUと比べると能力は限定的です。しかし、#制御系アプリケーション#組み込みシステムにおいては、そのシンプルさや低消費電力、低コストから、今も広く利用されています。
 
8ビットCPUで実現できる制御や、特徴には以下のようなものがあります。

基本的な制御:温度調整、モーター速度制御、照明の調整などの基本的なタスクに適しています。

センサーの読み取り:8ビットCPUは、気温、湿度、光の強度などのセンサーデータを読み取り、それに基づいて制御することができます。

リアルタイム応答:組み込み制御ではリアルタイムの応答が求められます。シンプルなタスクにおいて、8ビットCPUは高速に動作します。

低消費電力:8ビットCPUは低電力で動作するため、バッテリー駆動のデバイスやエネルギー効率を求めるアプリケーションに適しています。

コスト効率:大量生産される製品やコストが重要なプロジェクトには、8ビットCPUが経済的な選択となることがあります。

省スペース化:物理的なスペースが限られている場合、8ビットCPUの小さなサイズは有利です。

 これらの制御に必要なソフトウェアの容量は、1.44MBのフロッピー1枚分で十分です。そのため、30年前に製造された #原子力発電所 #大陸弾道ミサイル #戦闘機 #戦車 、自動車、家電などのほとんどの #制御システム には、8ビットCPUや、プログラムの更新などではフロッピーディスクが使用されています。法律を変更して原子力発電所の耐用年数を30年から40年、さらには60年超と引き延ばすのは簡単ですが、フロッピーディスクを使っているような中央制御室を変更するのは非常に大変な作業です。

#エアフォースワン (米大統領が登場したときのコールサイン)として使われる #政府専用機 には高度な通信機器が搭載されていますが、そのベースとなっているのは #ボーイング 747-200B(VC-25)です。そして、747-200や747-400の制御システムには今でもフロッピーディスクが使われています。VC-25は2024年に退役予定でしたが、新機種の導入がコロナの影響で遅れており、2026年までエアフォースワンにはフロッピーディスクが搭載され続ける予定となっています。実はアメリカも日本のことは笑えないのです。

東京電力(株) 福島第二原子力発電所
平成27年度 不適合管理委員会報告情報(平成27年 4月14日(火)分)

3・4号廃棄物処理設備
中央制御室状態表示装置1の点検において、フロッピーディスクの読み込みエラー(試験用のプログラムが読み込みできない)が認められたため、フロッピーディスクドライブ機器を交換。

東京電力(株) 福島第二原子力発電所

高速増殖炉原型炉「もんじゅ+中央監視制御システム

高速増殖炉原型炉「もんじゅ+中央監視制御システム

 最近は円安で少々高くなっていますが、8ビットシングルチップCPUで出来ることを考えると、Raspberry Pi Pico Raspberry Pi RP2040デュアルコアが1,000円以下と言うのは驚きの低価格です。小学生の玩具として最適です。 #ITパスポート試験 は小学一年生でも合格できるので #自衛隊サイバー防衛隊 は、まずは #ラズパイ ピコで遊ぶことから始めると良いと思います。

サイバー人材の確保及び育成について 令和5年5月 防衛省 養成計画数約430人/年

つづく…


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?